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第34話|境界の消失

朝、画面の配色がわずかに変わっていた。

気づかなければ通り過ぎる程度の違いだ。


処理一覧の区切り線が、一本減っている。

案件の並びは変わらない。

ただ、境目が曖昧になっていた。


彼は昨日まであった区分を思い出そうとする。

通常、要確認、例外。

だが今は、すべて同じ枠に収まっている。


午前中、複数の案件を処理する。

分類を選ぶ欄は表示されない。

入力すれば、そのまま完了画面に進む。


昼前、新しい担当者が言った。

「迷うところが、さらに減りましたね」


彼は頷いた。

減ったのが何だったのかは言わない。


午後、基準文書を確認する。

章立てが整理され、

以前の区分名は脚注にも残っていない。


ログには

「一括基準適用」と表示される。

個別の判断履歴は記録されない。


夕方、例外件数の欄を見る。

数字は消えていた。

項目自体が存在しない。


定時、端末を閉じる。


境界は消え、

区分は統合され、

処理は安定している。


何が内側で、

何が外側だったのか。


確認する方法は、

もう用意されていない。

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