30/54
第30話|正しさだけが残る
朝、前日の判断に対する通知は届かなかった。
差し戻しも、確認依頼もない。
業務一覧は静かに更新されている。
彼は昨日の案件を開いた。
処理状態は「完了」。
評価欄には、数値が一つだけ追加されている。
「適合率:100%」
理由の記載はない。
誰が確認したのかも示されない。
ただ、数値だけが整然と並んでいる。
午前中、いくつかの案件を処理する。
どれも同じ形式で終了し、
同じ数値が付与された。
昼前、新しい担当者が言った。
「最近、安心して押せますね」
何を、とは言わない。
彼も聞き返さなかった。
午後、基準文書を開くと、
判断基準の章が簡潔になっている。
例外の記述は削除され、
図表が増えていた。
夕方、ログを確認する。
全件が「適合」と記録されている。
不適合の履歴は、検索しても出てこない。
定時、端末を閉じる。
今日は間違いが一つもなかった。
正しかった、という結果だけが残る。
どう正しかったのかは、
どこにも保存されていない。




