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第19話|前提の揺らぎ
朝、処理一覧を開いた瞬間、
一つだけ表示が遅れた。
ほんの一拍。
すぐに揃う。
遅れた項目には、
特別な印は付いていない。
状態も「通常」のままだ。
彼は項目を開いた。
内容は問題ない。
入力欄も、参照先も、
すべて基準通りに見える。
ただ、下部に
「前提確認:不要」
という行が追加されていた。
不要である理由は書かれていない。
午前中、
同じ種類の処理を続けて行う。
その行は、
出たり出なかったりする。
条件は分からない。
昼過ぎ、
基準文書に軽微な更新が入った通知が届く。
変更点は
「表現の調整」
とだけ記されている。
彼は文書を開いた。
内容は読める。
だが、以前の表現が思い出せない。
午後、
処理一覧の並びが、
わずかに変わった。
意味のある順序に見えるが、
規則は見えない。
定時前、
ダッシュボードに一行の表示が出た。
「前提は維持されています」
何と比べて、
維持されているのかは分からない。
彼は端末を閉じた。
基準は守られている。
前提も、維持されている。
それでも、
一拍の遅れだけが、
まだ残っていた。




