7話 導く者
その少女の葬儀が済むと、街は少女の死を忘れたかのようだった。
ノーマンは、誰もいなくなり閉まったままの本屋に行ってみた。店の戸は鍵がかかっていなかった。戸をそっと開けて店に入ると、整然と並べられた本にはうっすらと埃が被り、主人を無くした暗く狭い空間だった。だがそこに並べられた本は、その店主の性格、生き様を表している気もした。こんなに本を愛した人が、あんな噂を立てるだろうか。一方、今の学院は大人の都合の差別が罷り通っている場所になっている。そして自分もその加担者の一人だと言うことが悲しかった。花瓶に、もうすぐ咲きそうな膨らんだ蕾のついた1枝が飾られていた。彼は、その花瓶の水を変えた。それが彼にできる精一杯だった。
彼は、預言書の導く者として選ばれたのに、怖かったのだ。職を失うかもしれない。王立高等学院の教師である名誉も失うかもしれない。彼は預言書を開いた。
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導く者は この預言書を手に取り 一人の青年を探す
導く者は 地の人の嘆きを聞く
導く者は 信念を貫かん
清らかな子の想いを拒む 学舎にもたらされる災い
腕の「刻印」が証
天の神は 災いを鎮めることを 一人の青年に託す
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そう、信念を貫くよう預言は彼の背中を押しているのだ。少女は希望を失い、命を失い、未来を失ったのだ。そして本屋の店主は自らが罪人になっても訴えたのだ。自分のするべきこと…真相を明らかにし、学院の理念を取り戻すことだった。
ノーマンは領主の所に向かい、少女が不当に受験で落とされたこと、そして本屋の主人に在らぬ疑いをかけ、両親は追放されたことを告げた。領主はにわかには信じられなかったが、彼が持ってきた少女の優れた答案を見て、彼の主張を信じるしかなかった。領主は学院を訪れ、学院長に事の真相を問いただしたが学院長はしらを切るばかりだった。学院長の態度、言葉から差別的決定を行なった事は明らかだったが、学院長の「私の一存で不合格にしたわけではありません。」と言うと領主もそれ以上は問いただせなかった。学院長は領主に訴えた彼を睨んだ。今の彼は学院長に睨まれても構わなかった。ただ学院長を断罪するのが遅かったことを悔いるだけだった。
ノーマンが次にやるべき事ははっきりしていた。預言のもう一つ、青年を探すことをやり遂げていなかった。彼は青年が誰かと言う事を確証はなかったが知っていた。そしてまだ見つけられていなかった。




