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入学手続きが完了するまで数日あるようで、勉強と読書をしていた。
たまに気分転換でイラストで描くこともある。
昔からアクセサリー作りが好きでその一環でデザインを描くのだ。
そうして、ミカルアさんが居ない時間の平日を過ごした。
一週間が一緒なのは文明が発達すると行き着くところは一緒なのだろうか。
今は人気な官能小説『口吻に溺死する』を読んでいた。
最初、本棚で官能小説を見つけたとき驚きで固まったが、好奇心につられて思わず手にとっていたのだ。
どうやら暦は日本と同様の周期のよう。
「そういえば、この国?って宗教あるのかな…」
そう呟くと、横から声が届く。
ミカルアさんが帰ってきていたようで、思わず驚きで肩を揺らす。
「二大宗教があって、国教はドゥミント教ですね。」
ミカルアさんはそのまま本棚に向かった。
暫く手を彷徨わせて1冊の本を手に取ると、私に手渡した。
「この本の73ページにそれぞれの宗教の教えが載っています。」
受け取った本をパラパラとめくって目当てのページを開く。
どうやらこの世界の北部ではヘイズール教が、他の場所ではドゥミント教が信仰されているようだ。
ここタムテイロンでもドゥミント教徒が殆どなようで、7神が居るとされていた。
闘争のストラフ、悲哀のサヒュース、不帰のタンウォス_の制裁の厄神。
豊穣のグリフ、天空のイーフル、原則のラホリヴィ_の恩寵の善神。
そして、天啓の創造神と言われる、要素のシナヴリゼ。
今の世ではもう神話としてしか機能しておらず、存在を疑う者も居るとある。
しかし、ドゥミントについての方が細かく書かれており、作者はそちらを贔屓していたと分かる。
やはり、宗教の影響は根深いのだ。
日本生まれ日本育ちとしてはあまり馴染みが無いが。
「そういえば、リリさんの以前住んでいた地域では何が信仰されてたんですか?」
ミカルアさんはタイムリーに質問をしてくる。
「無宗教なんです。…あ、でも、万物に神は宿るみたいな考え方があって物を大切に扱う風潮があります。」
「へぇ、興味深いですね。神といえば選ばれた者が絶対的な力を持っているものかと。」
そのような神はヨーロッパや古代まで遡る神話でしか聞かれない。
日本では、御霊や動物も神と祀っていて強さはピンキリだと伝える。
ミカルアさんは「文献がないのが惜しいですね。」とため息をついていた。
そうして手帳を手に取ってパラパラと捲った。
どうにか情報が欲しいのだろう、と眺める。
「あぁ、そうでした!」
ふと、ミカルアさんが立ち上がった。
怪訝に思って聞いてみる。
「買い物ですよ、リリさんの物を買い揃えないと。」
そう言って、ミカルアさんは出かける準備を始める。
慌てて、私も立ち上がった。
私の買い物なので当然付いていく。
しかし立ったは良いが、準備する物が浮かばず手持ち無沙汰になる。
「私も…、なにか持っていくものありますか?」
「貴方は身一つで良いに決まっているでしょう。何も物を持っていないんだから。」
ミカルアさんにそう言われてハッとなる。
そうなのだ、私はまだ何も持っていない。
ここに来たばかりで、まだ何も板に付いていない。
「準備ができました、行きますよ。」
ミカルアさんにそう呼びかけられて、私も向かった。
玄関を出て見渡すと、乗り物がある。
出入りしていて初めて気づいた。
それは自動車のようにも見えるが、タイヤが見当たらない。
「ミカルアさん?これってどういう原理で…」
「ん?エネルギーで動いて…って、あぁ。」
私の聞きたいことを分かったのか細かく説明される。
魔法によって空気を動かし、車のモータに最初の力を加えることで永久機関を発生させる。
そしてモータで発生したエネルギーで車の回転構造を動かし車が進むのだという。
身近でも魔法を使うのだと実感して嬉しくなる。
やっぱり魔法って凄い!と感嘆しているうちにショッピングモールに着いた。
「ここで買い物をします。着いたので降りなさい。」
ミカルアさんがそう言ってドアを開けてくれて降りる。
今のところ、私はこのドアの開け方がわかっていない。
高校の1個半ほどの大きさをしているこの複合商業施設は、都会から少し離れた建物の少ないところに建っている。
しかし、それにも関わらず駐車場は混んでいて、ほとんどのスペースが埋まっていた。
現代と娯楽も同レベルのようで、いわゆる家庭用ゲーム機を歩きながらしている子も見受けられる。
「あの、そこで突っ立ちっぱなしなのはなんですか。なんでついてこないんですか…。」
「あぁ、すみません。」
慌てて小走りで追いかけて、ショッピングモールの入口をくぐる。
最初はスマホの契約をするようで2階までエレベーターで進む。
仕組みは一緒なのか分からないが見た目は完璧にあのエレベーターだった。
と言っても、自分でも信じられていないが。
看板にヘロルと書かれている店にミカルアさんが入る。
ブランド名だろうか、そう思いながらミカルアさんの隣の席に座った。




