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「拾い子ということでいいんじゃないですか?俺は数日前に遠出から戻ってきたばかりなので、そこで買ったということで…。」
「人身売買?」
人を買うというの言葉に思わず聞き返す。
私の常識の中では行われている地域もあるが違法である。
この人はそんなことをしているのだろうか。
「はぁ、研究目当ての旅行だったんですが、ちょうど見てしまったんですよ子供を売買してるのを。まったく気分が悪いですよね。」
「意外…」
「心外ですね。色々あるんですよ…」
2人の会議を進めていた中で興味深い話が出てきた。
「それで、その子が俺に助けを求めたので思わず助けたら、男がお金を請求したので買ったということで。」
その言葉が私のさっきまでの呆けていた空気をひっくり返した。
思ったより盛大な設定が生まれている。
「ちょ、ちょっと待って下さい…。そこまで凝った設定にしなくても…!」
「別に俺だって善意だけで住まわせるわけじゃないんで良いんです。むしろそうさせてもらいますんで。」
断る隙すら与えられずそう一刀両断されてしまった。
というわけで、それ以前の経歴は学校も行かず色々なところに売られていて、妓楼に売られるところを助けられたという設定になってしまった。
「貴方は姉に似ています。真っ黒の髪に檸檬色の瞳。」
「だから姉の代わりに優しくするって感じですか?」
先程の、"色々"に邪推する。
姉が幼い頃に売られてしまった、とか…。
脳からその考えを無粋だと振り払う。
強く当たってしまった、と遅れて理解する。
しかし、誰かを自分に重ねられて嫌じゃない人なんていないのではないか。
言ってしまった言葉は消えないが申し訳なかった。
てか檸檬色って何、と言う疑問は次の質問でかき消された。
「姉も優しくします。そして天外から来たと聞いたら研究したいでしょう。」
心のなかで懺悔していると、さらに考えうる限りの最悪な一言が飛んできた。
研究、何をされるのか。
道徳的であれと願うしかない。
せめて、ミカルアさんを利用したくて、みかるの代用にすることにした。
「私もホームシックになったらみかるとして扱いますね。」
「性別が違うのでは?」
「良いの、みかるだと思えばみかるなの。」
そういうと、ミカルアさんは黙ってしまった。
そこまで気を使わせる気はなかったのだが。
「親は、いないんですか。」
「親?一応いるけど…。実家は小さい頃に出たからあんま覚えてない、かも〜…?」
記憶を辿って探してみるけど思い出せはしなかった。
そもそも実家を出た先の人たちも、育ての親、という感じでもないから。
「なるほど…、やはり一度カウンセリングを受けませんか…?」
「私は心身共に健康だから大丈夫だよ。」
濁した事で何があったのかと邪推されてしまった。
逃げるように言って去ろうとすると止められる。
「この自著のところにこの字で名前を書いてください。」
どうやら、リリはこの国ではこのような字で書くようだ。
目が釘付けになる。好奇心が勝った。
そのまま、ペンを貰って書いていく。
ペンの形は日本と一緒だ。
やはり、たどり着くところは一緒なのだろうか。
「終わりました。ひとまず、俺と同じ言語が使えるように筆記の勉強をしましょうか。」
そう言われて頷く。
部屋を出て時計を見た。
3時間程度経過しているようだった。
時間も一緒なんて変な感じだと思う。
ミカルアさんの呼び止められる。
午後休の申請をしてくるそうで、ベンチで待つように言われた。
ミカルアさんは小走りでどこかに行った。
職員室のようなところなのだろうか。
なんとなく座らず立って待つことにした。
10分くらいだろうか、しばらく待っていると誰かが来た。
明るめのピンクラベンダーの髪を揺らしながら来る様子は如何にも陽キャだ。
「ねぇ、君何?ここの子じゃないよね?不法侵入は通報するけど。」
ハキハキとした高めの声で忠告をされる。
ローズピンクの瞳からは『出て行け』という圧を感じる。
「はい、転入手続きを終えて、今ここで待っているだけです。」
「嘘」
ずんと刺さるような低い声で否定される。
嘘は言ってないはずだ。
思わず眉をしかめていた。
「何その態度?此処らの人だったらウチの事知ってるはずだけど。あんたミカルア先生に付いて回って何?」
どうやら、この少女は偉い人なのだろうか。
そしてミカルアさんはこのような言い方をされるとは何者なのか。
いくつか疑問が浮かぶ。
しかし、聞いては余計に怪しまれるだろう。
「ミカルアさんが何ですか?案内してもらってます。」
屈してなるものか、とムキになり聞き返す。
「はぁ?ウチらのミカルア先生がそんなことするわけ無いじゃん!」
「いや、実際してもらってるのでなんとも。」
「君生意気だね。まぁ、良いや。覚えておいて、ウチはアリアーコル家のリアリィス。」
後で後悔するから、と楽しそうに言い残し、彼女は去っていった。
ミカルアさんはまだ来ないのか、そう思い周囲を見渡す。
と、彼は1つ奥の廊下で人の囲まれていた。
ふと、目が合う。
こちらに来るなよ、とアイコンタクトをされた。
そんなことを言われても怪しまれた手前、一人でいると分が悪い。
そう思い寄っていく。
それと同時にチラッと目が合ったミカルアさんは心底嫌そうな表情をしていた。
「先生、あの、まだですか?」
そう寄っていくと、他の人の反応が変わる。
「ミカルアさん!生徒と予約があるなんて珍しいですね!」
「で、次の研究発表はどうなんですか?」
「期待してますよ!ほんとどんどん遠く行っちゃうんだからー。」
話を聞く限りすごく期待されてる。
というか、仲がいい。
またホームシックが襲ってくる。
急激な状態の変化に体も脳も追いついていないのだ。
もはや、世界が憎しい。
と、同時に強風が吹いたのか、壁に貼ってあった掲示物が落ちる。
「またホームシックですか…。」
ミカルアさんのその一言にハッとなる。
この現象はどうやら私のせいだと今気づいた。
落ちたものを一通り拾って貼り直していこうとする。
電話の詐欺防止ポスター、魔法の悪用厳禁勧告冊子。
色々なものが落ちていて種類ごとに置き直す。
その中に1つ、思わず己の目を疑うものがあった。
「ん?」
「…あっ!ちょっと!」
ミカルアさんがバッと私の手から奪い取った。
「教育に悪いです。で、これ持ってきてるのだれですか」
「あっ!それ僕のですよ!天外の子と恋愛なんて夢ありません?」
誰かが声高らかに宣言する。
天外から来た私が聞いていいことなのだろうか。
「無知なのってエロくないすか。ミカルアさんも思いますよね?」
周りの教師も黙って目を見合わせる。
流石にそこら辺の倫理観は持っているようだと安心した。
ミカルアさんは俯いていた。
僅かな表情の変化から怒っていることが辛うじて分かる。
「おいおい、流石に16にも満たない子の前でそういう話は止めたほうが…ミカルアさん怒ってるって…!」
この人の16にも満たない子という言葉が耳に届く。
怒り散らかしたい、という衝動を堪える。
私の不満を感じ取ったのか、その男の人が聞き返す。
「もしかして、16超えてた?ごめん、若く見えっちゃってさ〜、可愛いと思うよ?」
「彼女は14歳です。」
何歳と答えるのが適切か、焦っていると横からミカルアさんがフォローした。
安心していると、ミカルアさんが私の手を掴んだ。
「へスタさん…。俺は用事に戻りますんで。」
そう言って引っ張っていかれた。




