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弱まった痛覚からして確定で死んだと思ったのだが、何故か生きている。

しかし、その直後からしてまた死の危機に瀕していた。

もうすぐ地面だ。


え、誰か誰か誰か…__


そう思うと同時に魔法のように重力が消えた。

ふわっと身体が漂うのを感じた。

そこを誰かが掴む。


「大丈夫ですか?空から落ちてくるなんて飛び降りでもしようと?」


バリトンの落ち着きの中に色気のある声が聞こえてる。

少し馬鹿にした笑いが癪にさわるが、それ以上に安心した。


「いえ、私も気付いたら落ちてきていただけです。」

「夢遊病ですね。」

「いや、階段から落ちて死んだはずなのに生きてて今、私もびっくりしてるんです」

「…精神病棟に行きましょう。」

「待って待って!ほんとだから!もうちょっと説明させて!」


しばらくの押し問答の末、病院に連れられそうになって慌てて止める。

私の必死な形相に何を思ったのか受け入れてくれたようだ。


「半信半疑ですが…、良いでしょう。ひとまず座れるところまで運びます。」

「え、自分で歩けます。」


とんでもない発言に食い気味に否定する。

しかし、彼はガン無視で歩いていくので、周りの視線が刺さる。

観衆の視線が好奇の目から呆れの目に変わっていく。

その温度がこちらにも伝わってきて座りが悪い。


広場みたいなところから通路を通って、今度は個室の集まったところに連れてこられる。


移動中に見られる建物や家具、時計の見た目から現代に沿っていることが分かる。

現代と全く同じ物と利便性だった。

チラッと目に入った作物や動物は、既知のものと見覚えのないものが入り混じっていた。

周りの生徒の服も至ってよくある学生服だし、教師は私服と思われるスーツを着ていた。

だから、服も元の世界と同じだ。


なぜこれほど同じなのか、思考にうつつを抜かしていると声がかけられた 。


「ここです。」


そう言って部屋をパスキーを打ち込んで開けると、彼は私を置いた。


「たしかに制服は違います。しかしどの学校でもそのような制服は見たことがありません。」


不思議と言うが、口調からは疑われてるということが手にとるように分かった。


「でしょう!だから私は死んだはずなのになぜか空から落ちてたと言ったでしょう。」

「…その死ぬ直前から説明を頂いても?」


私が興奮気味に伝えると、冷静に聞き返される。

思わず興奮でうっかりしていた。

私は死ぬ直前を以前の生活と交えて話していく。

先程の物理法則を見る限り、ここは別世界のように感じる。


「なるほど、つまり貴方は不慮の事故でここ、タムテイロンに着たということで?」

「はい、いわゆる私の世界で言われる転生というやつかと…。」


彼にそう返事して初めて気づく。


「あれ、なんで私って会話できてるの?」

「ほんとに知らないようですね…。この世界には共通言語モジュールがあって、ここに居ればどんな言語でも会話が通じます。」


なんてチート級なアイテムなんだと驚嘆する。

地球にもあったら便利だったのに、と少し恨めしかった。


「未だどういう原理かは解明されてないですが。」


悔しいそうに言う彼からは研究者気質が感じられた。

ふと、するとこの学校内でも話している言語は違うのかと気付く。

私の通っていた学校では、外国人でも日本語を喋るため物珍しさを感じる。


「ひとまず、それなら帰れないでしょうし、住民登録をするしかないですね。」

「え?あぁ、そっか私ここで生活なんだこれから…。」

「また死にます?」

「縁起でもない!!」


彼のブラックジョークに思わず叫ぶ。

そんな、あんな思いは二度とゴメンだ。

でも、みかるは大丈夫かな。

向こうの私はどうなってるんだろう。


「ホームシック……」

「寮とかもないですし帰る場所がないですね…。うちに住みます?」

「この世界に入れたなら何かしらの祝福は受けているはずです。魔力調査も入学手続きも要ります。やはり俺の戸籍に入れるしかないんでしょうか…」


最後は少し独り言のように零された。

この世界の住民は魔法が使えるという。

転生の影響で魔力も持ってしまったのだろうか。

これでみかるに会ったら驚くだろうなぁ…。

ホームシックだ。


「拾った子犬みたいな表情しないでください…。」

「この世界でも子犬いるの!?」

「貴方の世界の子犬とは限りませんよ。あと、研究に出されたくなかったら決して他所の世界から来たと公言せず、俺の義娘とでも言いなさい。」


あ、この人の戸籍に入るんだ…。てか義娘なんだ。

色々と実感が沸かず、言葉を反芻する。

義娘にするにしてはこの人は若く見えると思った。

妙齢の女性が一人暮らしの男の家に転がり込むことに、この人は抵抗がないのだろうか。

もしかして、同性愛者なのか。


「いくつなんですか?」

「26ですが。」

「私16だから流石に変かと。」

「この世界では16から結婚できますし、生物学上12から生殖器官が発達済みでもおかしくないです。」

「それに、義娘ですので何も問題はないかと。」


変だと伝えるが、この世界ではそこまででもないらしく、食い気味に説明される。


正直に言って、ここまで流れで進んできたが、半ばとはいえ20代の一人の男性の家で過ごすのは不安だ。

取って食われる可能性だってあるし、異世界らしく危険なことをやらせられる可能性だってある。

不安要素しかない。


色々思案していると、ミカルアさんは「それに…」と言いづらくしているので聞き返す。


「貴方はかなり若くみえるので13,4歳という体にしておけば俺の庇護下でもおかしくないですよ。」

「なんか今、ちびって言われた気がする。」

「言ってません。」


少しの言い合いが続いたが、私が言葉を飲み込む形で収集がつく。

守ってもらえるのがそれが一番いいのは確かだった。

この人は悪い人ではなさそうな上に、わざわざ匿ってくれるなど義理人情が固いにもほどがある。

それに、ここまで知られたらもう後の祭りだ。


「あ、家族なんだし名前教えて下さいよ。」

「ミカルア・ヴァーグ。」

「ミカルアさんですね。うっ…みかる…」

「人の名前でホームシックにならないで下さい。」


頷きながら謝る。

ミカルア、ミカルア…覚えるために脳で反復する。


「じゃあ、住民登録するんで、情報教えて下さいね。」


ミカルアさんの質問に一つ一つ答えていく。

名前、性別、生年月日、電話番号…

電話番号は答えれなかった。

スマホなるものはあるそうだが、ここでは元のスマホは使えないから買い換える必要がある。


「ミカルアさん、身分事項って項目どうするんですか?」

「今から作り上げます。」


ミカルアさんの意見に頷いて作っていくことにした。

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