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何でもない1日だった。
友達と一緒に下校中の人でごった返した駅のホームを歩いていた。
「有働先輩、1組の美夏と別れたんだって。」
「まぁ、美夏は地味すぎるしね。喧しいくらい華美じゃないと!」
喧騒とした駅は他の女生徒たちの笑い声に呑まれていた。
「ねぇ、そういえば莉々は、結局告白したの?」
隣を歩いているみかるの質問に足が止まる。
突拍子もない質問に疑問が止まらなかった。
「えぇ、なんで?私好きな人違うって言ってるじゃん。」
もう!っと背中を強く叩く。
私の好きな先生が転校することを気遣ってそう言ったのだろう。
しかしだ。万が一、億が一だ。
先生が私に振り向いたとして、そんな先生は嫌いだ。
生徒になんか靡かない先生が大好きだ。
そこまで考えて私はやめたのだ。
しかし、そのことを説明できる自信なんかない。
だからこう誤魔化した。
「嘘つけ!あんた一昨日まで穂上先生だいしゅき〜って言ってたくせに。フラれた〜?」
「えぇ〜?覚えてないけど?てか、この全知全能美少女がフラれるわけ無いじゃん」
苦し紛れの嘘にみかるが訝しげな瞳をぶつけてくる。
「そもそも、あんた告られたことないでしょーが。」
「あるよ。中学生のときと習い事教室の子に。」
え?と目を白黒させて、そして一人で頷いた。
「その吹っ切れ方は〜…」
そこから何かブツブツと考え込んでるようだった。
探偵のように、あれじゃないこれじゃない、と思案している。
何か閃いたようでこちらを期待の眼差しで見て聞いてくる。
「ズバリ!まさか別の人を好きになったとか?」
「ん〜、そんな感じかな。」
適当にそれに乗っかると、やっぱりか!とみかるは頻りに頷いている。
「ゲーム?」
「そうそう、ジュエリープリンスの新キャラ!ルベライトだよ」
「あぁ、ルベくんね〜…意外〜、莉々はああいうキザなの嫌いなのかと思ってた」
「そう?みかるの影響かな?」
「あ〜わたし、ああいうキザなの無理!!」
そう叫びながら言うのは本当に無理なんだな、としみじみとする。
流石に無理やりだったかもと思ったが、勝手に悶えているみかるを見ると誤魔化しは成功したのだと分かる。
みかるが項垂れているせいで、肩甲骨まである髪は地面に落ちて広がっている。
青みの強いせいで色味のないグレーブラックに見えて、神秘的だ。
「あ!やばいよ、そろそろ急がなきゃ…電車が着くみたい。」
みかるがそう言いながら、慌てて立ち上がる。
「そうだね、行こうか。」
そうみかるの方を見ながら一歩踏み出す。
前を見ずに歩いたからだろう。
階段に気づかず右半身からぐるっと倒れた。
まぁまぁ高さはあったがこの高さじゃ死なない。
しかし、受け身を取れずに落ちたからだろう。
頭からコンクリートに直撃した。
「ねぇ!莉々!!いま救急車呼んだ!頼むから死なないで!」
痛みがガンガンと響き、視界が悪くなっていく。
頭からどろりと垂れた血が視界の中で赤く端に写った。
水と血が混ざってびちゃびちゃと少し重みを持って踏まれる音がする。
ハンカチが頭に当てられたのを感じる。
止血…徐々に頭も働かなくなっていく。
鈍い痛みと喧騒が聴覚を刺激する。
酸素が足りなくなってきた。
痛みも苦しみも減ってきた。
ダメかもしれない、本格的に。
地下とはいえ、都会だから救急車がそこまで…遅れることは…。
それとともに意識を手放した。




