CHAPTER 4:Keep Moving
スタンド上段は、ネオンライトの帯がぐるりとドームを取り囲んでいる。客席は熱気に包まれていた。
「おい見ろ、あいつまた出てるぞ」
「マジかよ、また生身でやるのか?」
「前回ので諦めたかと思ったが」
「ああ、去年は死にかけてたからな」
『さあ、NGG予選、今年も開戦しました!全24プレイヤーのうち、上位進出は8名!熱い戦いが期待されます!』
身体が押しつぶされる感覚、音はもはや聞こえない。ミラは前だけに集中し、全身にかかるGに耐えるようハンドルを強く握る。
メーターに映し出された、Aegis field の文字が青く光るのを確認した。
(よし、暖まったぞ)
スタート直後、イージスフィールドが作動するまであえて24位につけていたミラは、フルスロットルでさらにスピードを上げて行った。
「ミラ、前方2機、メルクラインとサハラだ」
「了解」
「サハラ社は物理あるぞ」
前を走る2機がミラの存在に気づくと、サハラ社のマシンから高周波エネルギーが発せられた。
観客席の一角で少年が叫んだ。
「うわ!当たるーー!」
轟音とともにミラのマシンは砕け散った
ーーかのように見えた。
黒い煙の中から、青い光に包まれたクロムテックのマシンが姿を現す。
「イージスフィールドだ!」
「クロムテックかぁ」
スタンドのあちらこちらで歓声があがった。
観客の多くはミラに追従するドローン映像にアクセスし、その様子を見た。
そこには表情一つ変えずに前へと進むミラが映った。
「ひー、正常に作動した?」
エデーの情けない声が届く。
「見てわかるだろ聞くな」
「次は大集団になってる、今のところドンパチはない」
「わかった、抜きに行っていい?」
「様子見た方がいい」
「了解、抜きに行く」
「……」
ミラはふっと笑ってさらにスピードを上げていく。
集団に追いつくと、思ったよりも状況が芳しくないことに気づいた。
(ハッキング合戦か)
ふとメーターを見ると、Aegis fieldの文字は赤く光り、すでにAIによるフィールドの自動展開がされていたことを知る。
(これがなかったら、厳しいな)
集団の半分はアジア製のマシンが占めていた。紅色の機体を揺らしながら、サイクロネックスグループのプレイヤーが、マシンではなくサイボーグ神経網を直接狙っているのがわかった。
依然、ミラのマシンはフィールド展開を継続している。
(エデーのやつ、仕事しろよ)
「エデー、ハックはどこから?」
「確認中」
「早くしろよ!」
「わかってるから、前みとけ!」
視線の意識を前方に移すと、精神を動力とするマシンを開発したカルマヴォルテックス社のプレイヤーが、ハッキングにやられてカーブを曲がりきれず大破した。
飛び散るサイボーグの残骸、おそらく体の半分以上を、サイボーグ化した彼は、痛がる様子もなく悔しそうな顔をしながら、コースのど真ん中に"落ちた"。
ミラは視線を逸らし、スロットルを全開にした。
(予備心臓入れてるのかな)
「だめ、集中」
ミラは息を吐き、次のカーブを見据えた。




