CHAPTER 2: Limit 200
南部 サーキット場にて
キュイイイイイイイイイーーーーーー
(まだいけるか)
キィィィィィンーーーダンッ!
「ちっ!」
真っ白い煙を吹いたマシンは、耳をつんざく轟音とともに、徐々にそのスピードを落としながら、サーキットの脇に停車した。ミラはマシンを降り、息を整えながら、すぐに再起動しようとすると、イヤホン越しにエデーの叫び声が聞こえた。
「お前!あれだけ言っただろ!スピードは200キロまでにしろって!」
耳からイヤホンを外し、作業を続けると後方から別のマシンの音がする。そのマシンはミラの近くで止まり、操縦していたエデーがミラの元へ歩み寄る。
「おい!いい加減にしろ!」
「…」
「てめえ!」
エデーがミラのパイロットスーツの襟を掴むと、いとも簡単にミラの身体は宙に浮いた。
「やめてよ!離して!」
「お前が俺の言うことを聞かないからだろ!」
「わかったよ!次から気をつけるから!」
「何回目だ!?人を馬鹿にするのも大概にしろ!」
ミラはこのままでは治まらないと思い、エデーから離れるために暴れていた身体を落ち着かせた。
「とりあえず離してよ、その腕、気持ち悪い」
エデーははっとして我に返り、ゆっくりとミラを地面に降ろし、ため息をついた。そして今度は落ち着いた口調で話しかける。
「いいか、100%生身の人間が、クロムライダーに乗るっていうのは、それだけで危険なんだよ」
「だから?」
「だから、わざわざ上限を200キロに設定したんだ、それ以上スピードを出すなって何回説明した?」
「それは分かってるよ」
「じゃあなんでセーブしない?」
「裸眼で200キロ出したことある?」
「…ないけど」
「メーターなんて見てる暇ないんだよ。それこそ事故る」
エデーは言い返そうとしたが、言葉が見つからず口を閉ざした。
ミラはそれを確認したあと、再び再起動のための作業を始めた。
「本当に次も出るのか?」
「……」
「もう降りたっていいんじゃないか」
「いいの、私の心配してんでしょ?」
「当たり前だろ」
「ネオグリッドグランプリで優勝するまでは絶対やめない」
エデーが口を開こうとしたとき、すでにミラはマシンにまたがっていた。
「今日あと1周するから、よろしくね」
キュイイイイイイイイ!
再び起動したマシンは、甲高い雄叫びとともに、一瞬にして目の前から消え去った。
すぐにエデーが左目に入ったクロムテック製のスキャンアイでミラを捉えると、速度は197キロをマークしていた。




