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フレッシュハンマー

作者: せおぽん

これは孤高の戦士アーロンの物語。


街からゴブリン討伐の依頼を受けた俺は、街から少し離れた場所に出来たゴブリンの集落に向かっている。


ゴブリンと一概に言っても全てが同じではない。種の違いではなく、環境によってゴブリンの性質が異なると言うことだ。田舎のゴブリンより都会の近くに住むゴブリンの方が手強い。人に接する機会が多い方が狡猾なゴブリンとなる。


俺はゴブリンの討伐には武器は持たない。ゴブリンに手頃な獲物と思わせる為だ。武器を持たない人間は狩りやすい獲物という認識を変えない為だ。


ゴブリンの集落についた俺は、早々にゴブリンに囲まれた。十数体というところだ。ゴブリンは愚かな獲物の登場に興奮している。自分達より弱いものをいたぶり殺すのを娯楽とするのは都会近くに住むゴブリンの特徴の1つだ。血気盛んなリーダーと思われる1体が雄叫びを上げ剣を上げて俺に飛びかかった。


囲まれていたとしても、ゴブリンの対応は難しいものではない。このようにリーダーが最初の攻撃をする。誰が攻撃してくるかわかっているのだし、あからさまに剣を振りかざすのだから避けるのは容易い。

俺は、半歩程下がり僅かに身を捻りゴブリンの剣をかわす。よろめき躓いたリーダーの剣は、俺の後ろで身構えていたゴブリンの肩口の辺りに命中した。予想に反した攻撃を受けたゴブリンはパニックになり大仰な悲鳴を上げる。その悲鳴を聞いた他のゴブリン達にパニックは伝播する。


大体、これでゴブリンの対応は完了だ。同士討ちを恐れて無闇に攻撃ができなくなる。 こちらが攻撃を仕掛ける番だ。


俺は躓いて転んでいるゴブリンリーダーの足首を右手で掴み持ち上げる。多少軽いがまあ良いだろう。俺はゴブリンリーダーをハンマーのように振り払う。近くにいたゴブリン3体が吹き飛んだ。リーダーの頭蓋が潰れた感触が腕に伝わる。


少し離れたところから、ゴブリンが矢を放つのを目端に捉えた。左手で矢を打ち払う。熟練の戦士でも点でこちらに向かう矢が見えるわけではない。弓のサイズと矢を放つ瞬間がわかるなら、こちらに当たる頃合も予想が出来る。矢は隠れて撃つべきなのだ。姿が見える狩人に捕らえられる獣はいない。


半分程のゴブリンを打ち払った頃、一体のゴブリンが、俺に対して両手を合わせ懇願するような様を見せた。このゴブリンは、窮地の人間がこのような姿をとるのを見たことがあり、それを模倣しているのだろう。ゴブリンが助けを懇願する人間を助けた話など聞いたこともない。


俺は即席のハンマーを振り上げ、打ち下ろした。

かつて彼らのリーダーだった死骸が両手を合わせるゴブリンの鼻先を掠める。ゴブリンは眼を大きく見開き、失禁し、口から泡を吹き、正気を失った。


もはや、ゴブリン達の戦意は失われている。座り込みひれ伏し怯え震えている。頃合いだ。


ゴブリンの討伐は全滅させてはいけない。徹底的に人間の恐ろしさを見せつけなければいけない。他のゴブリンに人間の恐ろしさを伝えさせる為に。



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