第51話 欲望を抱く人間
レーメンが選んだのはミミレーカだった。
お嬢の中ではそこまでプロポーションがいいわけではない。が、お嬢の中では一番の人気がある。ミミレーカを贔屓にする旦那さんも何人かいるほどだ。
技術もあるそうだが、それはやってみないとわからないこと。ファーストインプレッションでミミレーカを選んだ。なんかミミレーカから出てんのか?
次の日、満足顔で起きてきたレーメン。ミミレーカにデレデレである。
「来月、またお邪魔させていただく」
「はい。お待ちしております」
ほんと、なにしたのよ、ミミレーカは?
朝食を終えたら帰る支度に取りかかり、九時くらいには帰って行った。
「忙しいんだね、レーメンって」
どんな仕事をしているか興味もないが、女を抱く時間はあるみたいで、奉仕する者がいるそうだ。生々しいこった。
……なんで知っているかは内緒です……。
「では、我らも帰る。また打ち合わせに来させてもらう」
ちゃっかり楽しんだジンたちもにこやかな顔で帰って行った。またお出で~。
「皆、お疲れ様。今日は休みにするからゆっくり体を休ませて。お酒も好きなだけ飲んでもいいし、寝てもいいよ」
娯楽や趣味があるわけでもなし。酒か寝るかしかない。これも考えなくちゃいけないよな。
「ハルガ。ラウルさんのところに行こうか。久しぶりにばーちゃんにも会いたいしさ」
今回のことでばーちゃんと十日くらい会ってない。魔力補充もあるから灰竜族の館に行ってみよう。
アカリに乗せてもらい館に向かうと、旦那さん連中も集まっていた。どうしたん?
「お前からの連絡を待っていたんだ。レーメンはどうだった?」
「満足して帰って行ったよ。また来月来るってさ」
「そうか」
「なにか不満なの? 要望があるなら聞くよ」
壮大な要望でなければ叶えられるよ。
「お前は、ルガルの町をどうしたいんだ? レーメンを巻き込むほどの理由があるんだろう?」
「快適な町にしたいだけさ。異世界の記憶があるぼくとしてはここは超ど田舎にいるようなもの。不満しかないんだよ」
穏やかに暮らすのもいいが、それでは修行僧みたいな暮らしをしているのと同じだ。つまらなすぎる。日々を楽しむ娯楽は欲しいところだ。
「せっかくだから言っておくよ。異世界の知識で言えば、ここで商売していたら先はないよ。もっと豊かな地でもっと優秀な商人が稼いで世界を牛耳るだろう。だって、それだけ豊かなんだからね」
石油でも出るなら一発逆転もあるだろうが、使い切ればそれで終わり。消えて行くだけだ。
「教国も今はまだ小さな勢力。商売の前ではいずれ淘汰される。今の五倍は信者を増やさないとね」
「異世界で起きたことがここでも起こるとは限らんだろう」
「そうだね。神の御子がいなかったらね」
知識の出所は同じだ。ただ、量が違うだけ。知識量が多いヤツは元の世界の知識と常識を持ち込み、それが正しいとばかりに広めるだろうよ。オレだってそうなんだからな。
「たぶん、これからも神の御子は生まれて来る。問題は、実力も知識もあるヤツが生まれたときだよ。前の世界で生きるのは本当に大変なんだ。実力も知識も運もなければならないんだよ。そんな世界で数年も経験されたらぼくでは勝ち目がない。ぼくは一年で死んだ程度の人間だからね」
そいつが人格者ならいい。でも、そうでなかったら。そいつはどう動く? なにをする? 力をつけたとき、対抗できるのか? 今の段階ではわからない、だ。
でも、今から動けばどんなヤツが生まれて来ようが対抗はできる。先に生まれているヤツにだって負けやしないさ。
「皆で創らない? 商人の結社を。世界を支配するほど影響力のある組織を。今ならぼくがいるよ。レーメンを従わせる魔法を持つぼくがね」
オレは正義の味方ではないが、悪の味方でもない。ただ、野望を持つ人間なだけさ……。




