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リリーフ・オブ・ザ・ライフ  作者: タカハシあん


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第32話 射手座の戦士

 月影館が完成した。


 元々あった屋敷だけ改築したので完全に完成とはいかないが、住めるようになったのだから完成と言っていいだろうよ。


「親方、引き続きよろしくね」


 まだ風呂と宿舎、別館と造らなくちゃならないものがある。職人たちには引き続きがんばってもらわないといけないのだ。


「はい、お任せください」


 親方も職人たちもニッコニコだ。


 そりゃ、毎日仕事があることで自分たちの懐は潤い、仕事終わりにエキゾチックダンスや酒を飲めているのだ。楽しくないわけがない。家庭持ちも家に金を入れられているから旦那を叱ることもない。皆ハッピーってことだ。


 ……こっちはその金を稼ぐので一日の半分は眠っているがな……。


 生まれて来た意味は? なんて考えてはならない。いいもの食って、柔らかいベッドで眠れてんだから不満はない。ゴブリンを探してあっちにこっちにを考えたら天国みたいなものさ。


「エクラカ。サジタリウスに入りたいヤツらを集めたよ」


 傭兵団サジタリウスの構想をアカリに語ってから一月半。全力でマルステク王国に走り、十二人の男女を連れて来た。


「随分と急いだね」


 約千キロ。飲まず食わず走れるわけないのに一月半で帰って来たものだ。どんな脚をしてんだか。


「武勇は千里を駆ける、だろう?」


 いや、悪事は千里を走るを捩った、適当な言葉なんだけどね。


「次はサジタリウスの矢は千里を射貫くだね」


 適当に追加しておく。


「まあ、なにはともあれ射手座の戦士たちよ。ぼくの道楽に付き合ってくれてありがとう。歓迎する」


「あなたは本当に神の御子なので?」


「じゃあ、ちょっとぼくと勝負してみようか。皆も力ない者に従うのも嫌でしょ? アカリさん。槍貸して」


 黒目に戻したところで神の御子じゃないと否定されたらそれまで。アカリで学んだよ。脳筋には力で教えてやらないと納得しないってね。


「魔力や魔法は使わない。純粋な技量での勝負だ。ぼくを殺す勢いでかかって来て」


 アカリから借りた槍を振ってみせた。


 子供のオレが振れる重量ではない。てか、長さでもないな。


「マツオ。やってみるかい? 遠慮は無用だよ。エクラカは強いから」


「まだ本調子じゃないけどね」


 七歳(ばーちゃんに聞いたらそう言われました)の体になって少しは動けるようになった。レベル10くらいまでなら体は持つはずだ。


「では、お相手願います」


 マツオとよばれた男はまだ若い。アカリより五歳くらい上な感じだ。


「できる構えだね」


 これでも一年は修羅場を生き抜いてきた。強いゴブリンや魔物なんかとも戦った。センスはなくとも相手の強さくらいはわかる。こいつ、強いわ。


「そういうエクラカ殿は雑だな」


「ただ、雑魚を駆除してきただけの生涯だったからね。構えとかよく知らないんだよ」


 こちらが弱いとわかればゴブリンは襲って来て、強いとわかれば逃げ出す。隠れて出て来ない。そんな相手に構えとかやっても意味はない。見つけたら殺す。それだけだったよ。


「失礼に聞こえたら謝ります。実戦をしてきた戦士なのは目をみればわかりたす。おれも殺し合いは何度か経験がありたすから」


「そんな人生にしたくないと思いつつも前世の経験が危機感を覚えてしまう。平和は脆いものだと。強くなければ大切な人は守れないと。己の未熟さに死んだ男からのお節介だ。強くあれ。常に備えろ。理不尽に負けぬためにな──」


 槍を振り、マツオに突進した。


 アカリが推薦しただけはある。レベル10の一閃を受け止めたよ。


「お見事」


 すぐに槍を捨てて腰に差したナイフを抜いて上半身の背後に回って首筋に突きつけた。


「……ま、参りました……」


「ふー。やっぱり子供の体だと負担が凄いや」


 レベル11の動きをしたら体が悲鳴を上げている。こりゃ、筋肉痛になるわ。


「お前、そこまで動けたのかよ!」


「動けただけだよ。これじゃ長い時間戦えないし、これだけ動いても勝てない魔物はたくさんいたものさ」


 仲間たちと協力したから生き残れた。一人だったら三分もしないで殺されていただろうよ。


「……神の御子の物語はよく聞いてましたが、想像以上に過酷だったのですな……」


「そうだね。それでも死にたくはなかった。生きたかった。大切なものがたくさんあったからね」


 もう戻れないからと割り切れるものじゃない。割り切れないからこそ強い思いとなってしまう。二度と失いたくないと思ってしまうのだ。


「──なんにせよだ。これでぼくを認めてくれた?」


 十二人が前脚を折って頭を下げた。


「はい。あなたに従います」


 別に従わなくてもいいんだけど、水を差すのもなんだ。流れに乗っておくとしよう。


「ありがとう。射手座の戦士よ。十二人のサジタリウスに栄光あれ」


 どんな意味? とかは訊かないように。ノリと勢いなんだからさ。


「じゃあ、十二人にこれを渡しておくね」


 何人来るかわからなかったから十五個は用意したブレスレットを右手首に嵌めてあげた。


「サジタリウスの証であり、魔力を成長させるためのもの。毎日それに魔力を籠めて行けば一年後くらいに戦闘に使えるだけの魔力を得られるようになると思うよ。がんばって」


 魔力を伸ばしながらその魔力をいただく。一石二鳥だ。

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