表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリーフ・オブ・ザ・ライフ  作者: タカハシあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/52

第11話 間違えた!

「ぼくはハルガ・ラーグー。灰竜族の長、マルーガーの六児です」


 誰? と一瞬思ってしまうくらいのラウルの弟さんだった。


「変われば変わるもんだね。瞼を瞑って両手を挙げてくれる?」


「え、あ、はい」


 素直に瞼を閉じてバンザイをした。


「ありがとう。もういいよ」


 十秒くらいやってもらって止めさせた。


「今のはなんだったんだ?」


「前はやれと言ったってやってくれなかったでしょう? ぼくの言葉に疑問を覚えながらも従ったのなら思考は普通に働いてくれ、人の言葉を理解しているってこと。壊れていたところが治ったってことだよ」


 脳が正常に働いてないか遺伝から来るものかはわからないが、異次元を簡単に越えられるクソ女の力。遺伝子から回復させたって不思議ではないさ。創造魔法はオレのイメージ。大きければ魔力を大量に食うし、そうでなければ少なくて済む。あの世界の魔法はそんなもんなんだよ。深く考えんな、だ。


「病気、だったのか?」


「うーん。先天的、生まれつきのものだから病気と言っていいのかはわからないね。灰竜族でハルガさんみたいなのがよく産まれるなら一族にその病気を持ったものがいるってことだと思う。そうじゃないのなら母方のほうに病気を持った者がいるのかもね。はっきりとは言えないけど」


 オレはそこまで勉強してこなかった。普通の家に生まれて高校を卒業したら小さな運送会社に就職して、何度かの転職後、フリーターに。なんやかんやで最終職業はゴブリン駆除業だったよ。クソが!


「まあ、回復薬を飲めば健康になるよ。定期的に創るから買ってもらえると助かるかな。娼館を始める前にいろいろ学んでもらいたいからさ」


「なにをだ?」


「読み書きから計算、体を鍛えてもらったり踊りや歌を覚えてもらいたいんだよ」


「必要なのか?」


「いつまでも体が売れるわけじゃない。知識の一つ、芸の一つを身につけてたら辞めても食うに困ることもないでしょう。それにぼくがやる娼館は安くしない。ある程度お金を持った人を相手にする」


 娼館はオレの家でもある。快適に過ごすために臭いヤツやら柄の悪いヤツはノーサンキュー。オレは快適な家で暮らしたいんだよ。


 きっと前世の反動だろう。ゴブリンを求めて旅から旅の過酷なものだった。もう川で水浴びとかしたくない。暑い日ならいいけどよ。


「……神の御子は、そんな考えをするものなのか……?」


「どうだろう? でも、ぼくと同じ国の人だったらぼくの言いたいことは納得してくれると思うよ」


 過酷な生活をしていたらより強く思うだろうよ。クソ女も普通の者を送り込んでいるみたいだったからな。長くやっているほど普通の生活を渇望していたことだろうよ。


「でも、かなり昔に選ばれた者は問題があるヤツらばっかりだったみたい。碌でもないことやってたからぼくみたいなのを選び始めたみたいだね」


 失敗失敗★ とか笑ってた顔、今でも忘れられないでいるよ……。


「そう言えば、何百年前に英雄が湧いたときがあったな。ジ帝国もその一つだったはずだ」


 やっぱりやらかしてるヤツがいたか。人間、変な力を持つと碌なことしないからな。オレも力に溺れず、壮大な夢は見ないでおこうっと。


「ぼくは平々凡々な人生でいい。でも、生活はよくしたい。朝昼晩と食べられて毎日風呂に入れる。雨風の心配することもなく柔らかいベッドで眠りたい。生きるための仕事はいくらでもするけど、心身が擦り切れるほど仕事はしたくない。新たに得た命をまっとうする。それがぼくの目標だよ」


 きっと仲間たちも一生懸命生きている。それがわかるくらいオレたちは苦楽をともにした。なら、オレも一生懸命生きなければならない。それがあの世界でオレを信じている者への報いとなるはずだ。


「……そ、そうか……」


「そーゆーこと。前も言ったけど、灰竜族がぼくの後ろ盾となってくれるならぼくは灰竜族の味方となる。もし、敵となる者がいたらぼくが排除してあげる。必要なら人も殺す」


 生きるために、仲間を守るために、襲い来る人間は殺してきた。転生したからと言ってその覚悟が消えたわけじゃない。オレは必要なら鬼にも悪魔にもなるさ。そうしないと守るないものがあると学んだからな。


「……神の御子は怖いな……」


「そうしないと生きて行けなかったからだよ。理不尽なことばかりだったからね」


 そして、最終的には理不尽に殺される。頭のネジが一本や二本、緩んでも仕方がないことさ。


「……そうか。灰竜族としても神の御子が味方となってくれるのなら歓迎すべきことだ。お前の目標に協力しよう」


「ありがとう。じゃあ、ハルガさんの教育も兼ねて半年ほど面倒みてね。その分の回復薬は提供するからさ」


「その薬なんだが、他の薬は作れたりできるか?」


「創れるよ。どんな薬が欲しいの?」


 回復薬は万能薬。かなり魔力を使っている。限定するなら魔力を節約できる。


「毒消し薬を作って欲しい」


「毒消し? 暗殺でもされるの?」


 なにそれ? 恐ろしいんですけど!


「まーな。よく毒を仕込まれたりする」


 マジか。刃傷沙汰より怖いな。どんな社会だよ?


「ハーマラン教国で刃傷沙汰は厳しく取り締まられているが、それ以外は病死とされることが多い」


「なるほど。抜け道があるってことね」


 ヤダ、この国。来るところ間違えた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
遺伝病じゃなく毒物の影響で白痴だった可能性……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ