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いつの間にやら夜の支配者による星々に彩られ、二人は互いに身を寄せ合うように門の上で肩を並べながら天空を見上げていた。
あまねく光は二人を優しく見下ろしながら淡く照らし出し、祝福を授けるように降り注いでいる。静寂な湖と森に囲まれたこの地には遮るものは何もなく、一心に頭上に頂く。
しかし、静寂な憩いはレヴェの声によって身を潜める。
「本当に綺麗だね」
「そうだな」
「今までで一番長い一時だった」
「…………そうだな」
この優しい一時も夜が明ければ刃を向けることになるが、今の二人にはこの上ない幸福でもあった。
「モンド」
「ん、何?」
「愛してるよ」
「俺も愛してる」
互いにどちらともなく軽く口づけを交わすと門へと身を任せるように寝転んだ。
交わる眼差しは一心に愛を注ぎ続け、離れることの無い繋がりを感じていられる。これはきっと絶望の中に見つけた光を手に入れられたからだろう。
レヴェは身を起こすとモンドへと更に口づけを落とす。そして離れた唇は名残惜しそうに艶めき、瞳には愛する人を映し出す。
モンドの優しい手が頬へと触れると重ね合わせるように手を添えた。
「レヴェ……」
「…………うん」
頷くと天へと左手を伸ばし、輝く光と共に鋭利に煌めく短刀が形作り現れる。
「いつまでも一緒だよね」
「いつまでも一緒だ」
レヴェは煌めく星々のように小さく星の雫を流し、言葉を紡いだ。
「愛してるよ、いつまでも」
「俺も愛してる」
二人の口づけと共に輝く光が空を流れた。そして、鮮やかな光と共に世界に優しく亀裂が入ると崩壊していき光と共に闇へと身を任せた。
深い愛が生み出した幕引きの最後には二人の笑みが優しく添えられる。
その時、一つの詩が微かに流れたような気がするのは一つの奇跡と呼んでもいいだろうか。
二人の想いは一つとなり星々により祝福を受けるだろう。それはきっと二人が望んだ結末であり、運命の幕引きであり、愛の証しでもある。
こうして、結末は幕を引いた。
筆は下ろされ書物は静かに閉じられると題名が綴られる。
『 |Un Livre du Destin《運命の一冊》 』
~Fin~
お読みくださりありがとうございました。
これからも二人を末長く宜しくお願いします。