-2-
レヴェは顔を更に埋め、溢れる感情を必死に堪えた。
モンドの言葉の通り、永遠とも呼べる過去の世界しか見ることの出来ない世界は精神をすり減らしていた。
モンドを助けるために死の刻印が刻まれる直前に世界を止め、この唯一違った未来を微かに視せてくれる僅かな時間の中でのみ幸せを感じていた。しかし、世界が巻き戻る影響でモンドの記憶は出会う前に戻され、忘れられた愛が満たされることはない。そして、定められた世界へと針が戻れば定められた世界が待っている。
抗おうとも語り部の意思によって強制的に道は閉ざされ、微かな違いが出るものの未来が変わることもなく、愛が進むこともない。
「君と閉ざされた世界を抜け出して共に愛し合いたい……なのに、それが許されない……共にいることも許諾されない……」
「レヴェ……」
「俺も一緒に死にたい……」
「………………」
「モンドと共にいられないなら意味の無い命なんていらな、」
レヴェの言葉は深い口づけによって塞き止められてしまう。
触れ合う温もりが雪解けのように染み渡り、絡まる愛は何処までも深く繋がっていた。
徐に離れると透き通る冷たい頬へと両手を添える。
「レヴェ……俺を殺してくれ」
「…………え? 」
突然の祈願に言葉を失ってしまう。
何故そのような言葉が紡がれたのか理解が追い付かず、絶望の眼差しを群青色の眼へと映し出す。
そんなレヴェとは裏腹に、モンドは力強く抱擁すると瑠璃色の柔らかな髪を指に絡めながら優しく愛撫する。
「レヴェ、この世界は君自身でもある筈だ。だからこそ、その針を止めるためには俺はここで死ななければならない」
「…………っ」
「俺の最後の幕は君の手で引いてほしい」
この世界を終わらせることが出来る可能性は語り部が関与しないと言っていたこの世界で歯車であるモンドが死すこと以外に対抗の意思を示す方法がなかった。もし歯車であるモンドが死ねば、この世界は形を成す術を失い自然と終わりを向かえるだろう。そして、レヴェとモンドという愛の幕引きが行われ、二人は愛という永遠の世界で共にいることが出来る。
しかし、モンドを殺すことが出来るのは主役であるレヴェのみ。