3-1 フォレスティアとの出会い
戦いを終えた僕たちは、しばしの休息を取る中でお互いのことについて語り合っていた。僕はフォレスティアのこと、そして、世界に迫る危機について話し始めた。
――それは、数年前のことだった。
その日も、ユニマグナス家の伝統に耐えられなくなった僕は、衝動的に家を飛び出し、当てもなく歩き続けていた。知らぬ間に足が向かったのは『神託の森』。そこは古代より神聖な場所とされ、近づく者はいない、不気味なまでに静寂が支配する森だ。
木々の間を進むにつれ、空気が変わっていくのを感じた。冷たい風が吹き抜け、どこか神秘的で、重苦しい。胸がざわつくような、何か大きな存在を感じずにはいられなかった。
ふと足を止めると、異様な気配が僕を包み込んだ。視界の先、薄暗い森の奥から、何かがこちらに近づいてくる――。その瞬間、目の前に現れたのは、光と闇が混ざり合うような、神秘的な姿をした聖獣だった。
『シン、待ってたよ!』
唐突に頭の中に響いたその幼い声に、僕は驚いて思わず後ずさりした。これは、僕の念話と同じような力だろうか。声の主は、体から淡い光を放ちながら空中を漂う、不思議な生物だった。まるで子供のような無邪気な笑顔を浮かべ、僕を見つめている。僕はその瞬間、恐怖ではなく、どこか懐かしさを覚えた。
『君は……誰なんだ?』
問いかけると、彼女はふわりと笑みを浮かべ、答えた。
『ボクは、フォレスティア。実は、シンのこと、ずっと見てたんだよ! やっと会えたね』
フォレスティア――その名を口にする彼女は、どこか神々しくも、親しみやすい存在だった。
『僕を待ってた?』
フォレスティアは嬉しそうに空中をくるりと回って、僕の周りを漂いながら言葉を続けた。
『うん! シンには、すごく大事な役割があるんだ。そのために、ボクが力を貸すよ! ボクが教えてあげなきゃいけないことがたくさんあるんだ!』
無邪気に語るフォレスティアを前に、僕はその不思議な存在に警戒しながらも、どこか自然に彼女の言葉を受け入れていた。彼女の目は純粋な子供のようにも見えるが、そこには確かな意思と、何か大きな使命が宿っているように感じられた。
『僕に……何を教えてくれるっていうんだ?』
そう尋ねると、フォレスティアは一瞬黙った後、真剣な表情で僕に言葉を送った。
『誰もまだ気づいてないかもしれないけど、ソルが死にかけてるんだよ。もし何もしなければ、この世界も、全部なくなっちゃう……』
『ソルが……死にかけてる?』
僕はその言葉に混乱し、思わず問い返した。ソルとは、太陽の女神の名であり、太陽そのもののことでもある。
『そう、ソルが、もうすぐ消えてしまうんだ。そうしたら、すべてが終わりになっちゃう……』
彼女の言葉が頭の中に響くと同時に、強烈なイメージが脳裏に流れ込んできた。大きく膨張する真っ赤な太陽――それによって世界中の気温が急上昇し、土地は焼け、植物が枯れ、人々が苦しんでいる光景が目に浮かぶ。
『赤色巨星……』
僕の前世の知識では、太陽がその寿命を終え、燃え尽きる前に膨張し、赤く巨大な姿となるらしい。その時、世界は焼き尽くされてしまう。
僕はそのイメージに圧倒されながらも、突きつけられた現実を信じられなかった。だが、フォレスティアの目には迷いはなく、その未来が確実に訪れることを示していた。
『僕には未来のことを知る力があるんだ。少し先の未来はいつでも、大分先の未来は時々分かるんだよ』
予知能力――それも信じられないほど強力な力だ。しかし、彼女の言葉と僕に見せられたイメージは、嘘ではないように感じられた。
『シンなら、何とかできるよ! だから、ボクの力を使って、この世界を救ってほしいんだ』
『……』
フォレスティアから軽い感じで依頼された、あまりにも高難易度のミッションに僕は困惑し、言葉を失った。
『え、世界を救う? 僕に!? 僕には大した力もないし、魔法も念話くらいしか使えないのに……』
そんな僕の様子を意にも解さないかのように、フォレスティアは首を横に振る。
『シンの念話の魔法は、特別なんだよ。だって、ボクとお話しができるし、僕と念話で繋がることで、ボクの予知能力を使えるようにもなる。数秒先の未来がいつでも分かるようになるの。これから、それがとっても大事になるんだよ!』
フォレスティアの言葉を頭の中で繰り返す。念話経由で相手の能力を使う? そんなこと、これまで試したこともなかった。しかし、確かに可能性はありそうだ。
そして、この彼女との出会いが僕の運命を大きく変えることになった。フォレスティアとの繋がりは、いつかこの世界を救うための鍵になる――それは確かだろう。
ようやく、この話のあらすじの内容に触れられました。
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