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2-3 攻撃手段のない戦闘

 エネルは次々と攻撃を繰り出しながら、僕たちとの距離を縮めてくる。その一撃一撃はどれも重く、一度でも避けることに失敗すれば、即敗北が決定するだろう。


『エリナ、距離を取って! 近づかれるのはまずい』


 僕は念話でエリナに指示を送り、彼女も素早く後方に下がる。近距離の攻撃ほど回避は難しくなるし、もしエネルに近づかれ、腕でも掴まれてしまえば、未来を読んだところでもうどうにもできないだろう。


『シン、攻撃を当てる隙がありません……!』


 エリナが焦りの声を上げる。彼女の光の槍は、先ほどからエネルに対して全く効果がない。彼女は辛うじて目眩ましの魔法を使って相手の視界を惑わせているが、それすらも通じなくなってきていている。


 こちらがわずかな怯みを見せると、エネルは一気に間合いを詰めてきた。このままではまずい。仕方なく、僕はエネルに奥の手である最悪の記憶のイメージを送り込む。


「うえぇ、なんだこれ!?」


 たまらずエネルは足を止めた。


「クソみてえな味が口の中に充満する。おええ、こりゃあ、まさに、クソじゃねえか……」


 そう、僕が送り込んだそのイメージは、前世で初めてドリアンを食べた時の記憶だ。


「チクショウ、これもお前の能力なのか!?」


 エネルはいきり立って、さらに激しい攻撃を打ち出し、周囲の建物や木々を次々と破壊した。彼の力は無尽蔵なのだろうか。

 僕たちは、予知能力でエネルの攻撃を回避し続け、近づかれそうになったらドリアンの記憶を注入、を何度か繰り返し、凌いでいた。

 問題は、攻撃をいくら回避できても、僕たちにはエネルに対する決定的な攻撃手段が何もないことだ。この状態を続けても、いずれは追い付かれてしまうだろう。しかも、


「あれ、なんだかこれ、旨えような気もしてきたな」


 ドリアンの記憶を送りすぎたせいで、味に慣れてだんだん美味しくなってきちゃってる!?

 ……もうあまり時間は残されていなさそうだ。


 けれど、その時、僕は気づいた。

 エネルの動きが微妙に鈍くなっている。考えてみれば、最小限の動きで回避を続けている僕たちと違い、エネルは攻撃のために莫大なエネルギーを放出し続けているのだから、どちらがより消耗しているかは明らかだろう。

 こうなったら、とことん根比べだ。僕たちは悪あがきを続けた。

 そして、ある未来が見えた時に、僕は追い込まれたふりをしながら、エネルを特定のポイントに誘導した。


「手こずらせやがって、いい加減仕舞いに……」


 エネルの目に勝利と疲労の光が両方見えた時、先ほどエネルが攻撃した巨大な木が、倒れてきた。彼はそれに気づき、嘲笑うように言った。


「なるほど、考えたな。だが、そんな木ごとき、俺の力で吹き飛ばせる!」


 彼は両手を構え、またしても魔気波(マギハ)を放とうとする。だが、今回は何も出なかった。


「うがー!」


 巨大な木が、メキメキと音を立てながら彼の上に倒れ込んだ。

エネルに対する悪質な嫌がらせにも思えます。


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― 新着の感想 ―
可哀想なエネルさんでしたが、ドリアンは食べることが出来るようになったのかもしれませんね。彼からすれば、得るものがあった戦いだったかもしれませんね。緊迫感の中にコミカルなところもあり、とても面白かったで…
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