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地味な魔法で救世主 〜燃え尽きそうな太陽から世界を救えって?使える魔法は念話だけなんだが〜  作者: マシナマナブ
第11章

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11-2 オクタヴィウス・グランマスタ

 オクタヴィウスの姿は、圧倒的な存在感そのものだった。全身を覆う黒光りする鎧は荘厳な装飾に彩られ、その肩と胸には岩石を象徴するような巨大な紋様が刻まれている。鎧の隙間から見える分厚い皮膚と隆起した筋肉は、鋼鉄のように頑丈そうで、彼の体が自然そのものと一体化しているかのようにも見えた。頭部には荒々しい角がついた兜をかぶり、その野性味溢れる姿は、見る者の心に恐怖を刻み込む。


「分かってると思うが、ここで俺を倒さねぇ限り、先には進めねぇぞ! そして、それは無理な話だ」


 オクタヴィウスは豪快な笑みを浮かべながら、拳を床に叩きつけた。その瞬間、彼の足元から石畳が浮き上がり、まるで意思を持つかのように集まって巨大な岩塊を形成し、僕たちを包囲する。その圧倒的な力の前に、場の空気が一気に張り詰めた。


「お前ら、何人束になろうが俺には敵わねぇ。蟻を踏み潰すのと同じだ。圧倒的な重さの前には潰れるしかねえ。ああ、潰すのは楽しいなあ」


 オクタヴィウスの不気味な声が響き渡る。その背後では教団員たちが密集し、後方にはキースとトレント――ソルディバインに次ぐ実力を持つという強敵たちが立ちはだかっている。逃げ場のない状況だか、怯むわけにはいかない。


「シン、どうする!?」


 エネルが問いかけてきた。僕は深呼吸をして状況を冷静に見極める。焦りは禁物だ。


「教団員たちは僕たちで抑える! オクタヴィウスはーー」


 言いかけたその時、グラヴィスが静かに一歩前へ出た。その表情には一切の迷いがなく、その目は鋭くオクタヴィウスを見据えている。


「オクタヴィウスは俺に任せろ」


 その言葉には揺るぎない自信と覚悟が込められていた。僕たちは一瞬顔を見合わせるが、グラヴィスの決意を感じ取ると、すぐに彼を信じることを決めた。


「分かった、頼むよ!」


 グラヴィスの背中が頼もしく見える。僕たちはグラヴィスを信じ、残りの教団員たちとの戦闘に全力を注ぐため、それぞれのポジションについた。


 オクタヴィウスが両腕を力強く振り上げると、巨大な石塊が宙に浮き、そのまま猛スピードでグラヴィスに向かって飛んできた。


「どうだ、これを防げるか!?」


 その石塊は、まるで大砲の弾丸のような破壊力を伴って迫り来る。普通の人間であれば、その迫力だけで圧倒されるだろう。しかし、グラヴィスの表情は微動だにしなかった。

 彼は静かに片手を差し出す。石塊に指先が触れた瞬間、猛威を振るっていたその石塊が、ふわりと空中で質量を失い、羽のように軽くなった。


 ーー重量消去(アンティマス)ーー


「圧倒的な重さか……軽いな」


 グラヴィスは片手でその巨大な石塊を軽々と受け止め、余裕の笑みを浮かべた。


「返してやる」


 ーー重量増幅プロマスーー


 グラヴィスがその石塊を投げ返したその瞬間、石塊は空中で元の質量を取り戻し、さらにその重量は十倍にも増幅されてオクタヴィウスに向かって飛んでいった。


「な、何だと!?」


 オクタヴィウスは慌てて両手を前に突き出し、大急ぎで岩の盾を生成する。だが、重さを増幅された石塊の衝撃は凄まじく、その盾は硝子のように砕け散った。そして、そのまま石塊の直撃を受けたオクタヴィウスは、城の壁を突き破り、外へと吹き飛ばされる。


 地面が激しく揺れ、砂塵が舞い上がる。戦場に静寂が訪れたかと思ったその時、砂埃の中からオクタヴィウスの荒い呼吸とともに低い声が響いた。


「……やるじゃねぇか。だが、これで終わりだと思うなよ!」


 さすがはソルディバインの一人。この程度では終わらない。砂埃の中から現れたオクタヴィウスは、その巨体を荒々しく持ち上げた。血を流しつつも、その目はまだ鋭く光り、闘志を失っていない。

 グラヴィスはそんな彼を静かに見据えると、軽やかな跳躍で彼の吹き飛ばされた穴から城の外へと降り立った。


「わざわざ来てくれてありがとな。俺の魔法は大地を操る力だ。大地の上に立つ限り、俺は無敵だ!」


 オクタヴィウスは地を踏みしめ、その言葉を証明するかのように大地を揺るがせた。その直後、地面が轟音を立てながら隆起し、まるで津波のようにグラヴィスに向かって押し寄せる。

 だが、グラヴィスは無駄がない軽やかな身のこなしで大地の波を飛び越える。その姿は、まるで風に乗った羽根のようだ。


「鬱陶しい羽虫が! 潰れろ!」


 オクタヴィウスは大地から次々と巨大な岩石を生成し、それらを砲撃のようにグラヴィスに連射する。しかし、グラヴィスがその岩に触れるたびに、質量は瞬時に消え去り、オクタヴィウスの攻撃は、ことごとく無力化されていった。


「ならばこれならどうだ!」


 オクタヴィウスの声が響き渡ると、大地がさらに激しく揺れ動き、遥か高くまで隆起する。その隆起はさらに続き、ついには灼熱の溶岩が噴き出した。その溶岩は勢いよく流れ出し、やがて巨大な龍の形に姿を変えた。その赤々と光る灼熱の体は、近づくだけで焼かれてしまいそうだ。


「どうだ、これなら触ることはできんだろう!」


 オクタヴィウスが勝ち誇った声を上げる中、溶岩の龍は赤く灼けた口を大きく開け、グラヴィスに向かって猛然と襲いかかった。

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― 新着の感想 ―
オクタヴィウスさんは、とても重たそうな攻撃をしているのに、頭の中身と心の中身がとても軽そうで、見事な好対照でした。ラスボス前の敵としてはちょうど良いのかもしれませんね。今回もとても面白かったです。
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