11-1 ルミナス城奪還作戦
僕はフォレスティアの警告を仲間たちに伝えた。太陽消滅の危機が目前であるという現実は、これまでの戦いとは全く異なる次元の脅威だ。その責任の重さは僕たち全員の覚悟を確固たるものにした。
早朝、まだ日が昇る前の薄暗い静けさの中、僕たちは急ぎルミナス城へと向かった。
ルミナス城は、かつての威厳をそのまま保ちながら、朝の闇にそびえ立っていた。一部の城壁が崩れてはいるものの、その壮麗な姿は失われていない。白い石造りの城壁が薄明の光を受けて淡く輝き、彩色ガラスの窓は微かな輝きで城全体を飾っている。
上空にはルミナス城の象徴ともいえる巨大な魔法陣が浮かび、金色の薄い光を放ちながら、城を幻想的に照らしていた。その光景は美しさと威圧感が入り混じり、どこか冷たく、侵入者を拒むかのようだった。
僕たちの目的地は城の最上階にある太陽の祭壇。この祭壇を奪還し、迫る太陽の消滅を食い止める手がかりを見つけることが、僕たちの使命だ。
城の敷地は広大で、念話を通じて確認したところ、約二千人の教団員が配置されていることが感じ取れた。ゼノルスが主力を率いてイグナリス王国に進軍しているため、この城の守りは薄くなっているが、それでもその数は膨大だ。外周には多くの見張りが立ち並び、守備は厳重だった。
「まずはできるだけ外に誘き出して、内部を手薄にしよう」
僕の指示にアリアが頷き、アリスの力を借りた電撃魔法を発動した。
ーー増幅の福音 & 拒絶放電ーー
空間を切り裂くような強力な電撃が放たれる。その衝撃により、すでに傷んでいた城門の一部が完全に崩壊した。
ーー魔気弾ーー
続いて、エネルが魔力の弾を次々と撃ち込み、城門の内側で轟音を響かせる。
爆発音と立ち上る煙に誘われたように、城内から大勢の教団員たちが飛び出してきた。その数は膨大だが、ゼノルスの指揮がないせいか、統率が取れているとは言い難い。
「みんな、しっかり何かに捕まれ! 一気に片付ける!」
グラヴィスが前に進み出ると、重力操作の魔法を展開する。
ーー重力屈折ーー
周囲の重力が歪み、まるで大地が傾いたように傾斜ができる。教団員たちは次々と城外へと転がり落ちていった。
「今だ、突入するぞ!」
グラヴィスが作り出した隙を逃さず、僕たちは一気にルミナス城内部へ踏み込んだ。僕たちに残された時間はほとんどなく、慎重に攻略している余裕はない。それに、ゼノルスの本隊が戻ってきた場合、状況は一気に悪化するだろう。
作戦自体はシンプルだ。最速で太陽の祭壇に到達し、これを奪還。その後、城内に残っているソルディアス教団の団員をグラヴィスとエネルの力で片っ端から場外に放り出す。大雑把な方法だが、今はスピードが命だ。
早朝の石造りの廊下は暗く、重苦しい空気が漂っている。
「太陽の祭壇はこっちです」
僕たちはエリナの先導に従い、広い城内を進んでいく。先ほど多くの敵を無力化したが、城内に残った教団員の数もまだ少なくない。城の奥からは、次々とソルディアス教団の団員たちが現れる。その目には異様な熱気が宿り、皆何かに取り憑かれたような表情をしている。
「侵入者だ、討て!」
団員たちが声を揃えて叫び、魔法を放つ者、剣を振るう者、全員が僕たちを敵視し、容赦なく攻撃してくる。
ーー念話接続ーーフォレスティア
『シン、決戦だね。一緒に頑張ろう!』
フォレスティアの幼い声が心に響く。彼女の予知能力を通じて、敵の動きを先読みし、仲間たちに念話で伝える。これで不意打ちは完全に防げるはずだ。
ーー念話接続ーークロノア
『久しぶりだな、シン。健勝か?』
クロノアの落ち着いた声が念話で響く。彼女の時間の流れを操る魔法を借りれば、飛び交う攻撃の隙間を的確にすり抜けることができる。僕はその力を借りつつ、エリナを守るように彼女の手を引きながら前進した。
「エネル! 後方からの攻撃に注意しながら付いてきて!」
「任せとけ!」
エネルの力強い返事が背後から響く。彼は最後尾で次々と飛んでくる敵の攻撃を受け止めながら、僕たちの後に続いてくる。頼りになる仲間だ。
一方、グラヴィスには全体のフォローをお願いしている。彼の広範囲の重力魔法が、敵の動きを封じ込め、仲間たちを支えてくれている。これまで数え切れない修羅場を潜り抜けてきた彼にとって、この程度の状況は問題にならないだろう。
英雄グラヴィスはもちろん、エネルもアリアも、今となっては一騎当千と言える実力者だ。僕もこの程度の攻撃なら当たる気がしない。途切れることなく湧き出してくる教徒たちを蹴散らしながら、僕たちは先に進み続ける。
その時、城の奥から圧倒的な気配が迫ってきた。床が震え、何か巨大なものが近づく音が響く。やがて、その正体が僕たちの前に現れた。
それは、ソルディバインの1人。その強烈な存在感が、戦場の空気を一変させる。
「おう、いつか来ると思ってたが、正直嬉しいぜ。俺の名はオクタヴィウス・グランマスタ。久々に体が動かせるってもんだ。俺を楽しませてくれよな!」
その声は広間中に響き渡り、これは比喩ではなく、城全体を震わせている。
そして背後からも強烈な気配が迫ってきた。振り返ると、そこにはまた別の強者たちの姿が見える。
「キース……それに、トレントか!」
エネルが声を上げる。
「奴らは俺と肩を並べてソルディバインに次ぐ地位にいた連中だ」
強力な敵に挟まれる形になった。本当の戦いはこれからだ。
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