1-4 エリナ・シア・ルミナス
戦いが終わり、ようやく僕たちは一息つくことができた。少女は息を整えながら、優しい目で僕を見つめていた。彼女の長い金色の髪は、太陽の光のように美しい。
戦いの中で少し汚れてしまっているが、彼女は白と青を基調とした軽やかなチュニックドレスで、腰に細かい金属装飾のある細いベルトを巻いてシルエットを引き締めている。身に着けている軽量な銀の肩当てと腕あてにも、細かい彫刻が施され、洗練されたデザインと実用性を両立した装いだ。
彼女は僕に一歩近づいて、とても優雅にお辞儀をした。
「先ほどは、助けていただいて、本当にありがとうございます。心より感謝申し上げます。でも、あなたは一体……?」
彼女の声は丁寧で、どこか高貴な響きを持っていた。
「僕は、シン・ユニマグナス。ただの地味な念話使いさ」
僕は軽く微笑んで答える。ちょっと気取りすぎたかも。
「念話使い……。では、先ほどの声は――」
「そう。僕が念話で君に話しかけたんだよ。遠くからでも直接頭の中にメッセージを送れるのが、僕の、ユニマグナス家の魔法なんだ」
「それはとても便利で素晴らしい魔法ですね!」
彼女は目を輝かせてそう言ってくれた。この地味な魔法を褒められたのは初めてかもしれない。何だか照れ臭い。
「いやいや。君のさっきの光の魔法の方が綺麗で羨ましいよ。ところで、君の名前は?」
僕が尋ねると、彼女は少しの間、躊躇ったようだったが、覚悟を決めたように名乗った。
「私の名前は、エリナ・シア・ルミナスです」
「え!? ルミナス王国の……」
その言葉に、僕は驚きを隠せなかった。エリナと言えば、『ルミナスの聖女』とも呼ばれていたルミナス王国の王女の名前だ。では、先ほど彼女を追っていた男たちは、ソルディアス教団の団員なのだろう。
「なるほど、そういうことか。追われていた理由がこれでわかった」
エリナの表情が少し曇る。隣国のルミナス王国がソルディアス教団に滅ぼされたことを知ったのはつい先週のことだ。太陽の女神、ソルを信仰するソルディアス教団という団体が、近頃急速に力を拡大しており、同じく、古くからソルを崇拝するルミナス王国に侵略し、滅ぼしてしまったのだ。彼女が生き延びた王女であるなら、彼女の抱える重荷は計り知れない。
「しばらくは一緒に動こう。今、君を一人にはできないからね」
今やソルディアス教団はここイグナリス王国にとっても脅威だ。対岸の火事ではない。彼女は驚いたように僕を見たが、すぐに感謝の色を浮かべて静かに頷いた。
「……ありがとう、シン」
僕たちが一息ついていた時、少し離れた場所から鋭い視線が僕たちを見つめていた。暗い森の中に立つその男は、こちらの様子をじっと観察している。
「……」
その存在が、次の戦いを予感させた。
1章終わりです。最初から盛り上がれるとよいのですが、なかなか難しく、じっくりと進めさせてください。
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