7-4 運命への決起
仲間たちとの絆も深まったところで、そろそろ僕の果たさなければならない本当の目的を、新しい仲間たちにも話すべきだと感じた。
「みんな、ちょっと聞いてほしい。実は、僕たちの本当の目的はソル、つまり太陽の危機を回避することなんだ。教団も同じようなことを説いているけど、彼らが言ってるような祈りや儀式で解決できる話じゃない」
僕は真剣な表情で話を始めると、アリアとアリスも神妙な面持ちで耳を傾けてくれた。
「予知能力をもつ精霊フォレスティアが教えてくれたんだ。ソルが死にかけてる。つまり、近い将来、太陽がその寿命を迎え、消えてしまう」
その言葉を聞いたアリアは事態のあまりの大きさに、目を見開いた。
「なんやて……ゼノルスさんは、そんなん一言も言うてへんかったけど?」
「たぶん、ゼノルスたちは本当の危機を知らないだろうし、ただ異変を利用して自分たちの支配を強めようとしているんだと思う」
アリアはしばし考え込んだが、やがて小さく息をつきながら言った。
「それがホンマやとしたら、放っとけへんな……」
前世の記憶がふと頭をよぎる。前世で学んだ天文学や宇宙学によれば、太陽の寿命はおよそ100億年。前世では、太陽が誕生してから既に46億年程度が経過していた。この世界と前世の関係ははっきりしないけれど、この世界が54億年後の未来という可能性もなくはないだろう。
太陽がその寿命を迎えるとき、核融合の燃料が尽き、重力とエネルギー放出のバランスが崩れて、通常の100倍もの大きさに膨れ上がり、赤くなる。これは赤色巨星と呼ばれる状態だ。そのとき、地球は太陽に飲み込まれるか、そうでなくても灼熱の光に焼き尽くされてしまう。海は蒸発し、生き物は全て死滅するだろう。その後、燃え尽きた太陽は白色矮星という小さな星に変わり、世界は完全な闇に包まれる。さて、この世界の人々に、こんな未来をどう説明したらいいのか――。
僕はみんなに、できるだけ簡潔に説明した。
「僕の知識では、これから太陽はさらに膨張していく。そして、いつか世界を焼き尽くし、その後、完全に消えてしまうんだ……」
皆の顔が緊張に包まれる。重すぎる現実をどう捉えて良いのか分からない、という感じた。アリアが不安げに呟いた。
「確かに、太陽が前より大きく、熱くなってるのは確かや。それが、これからもっとひどくなるってことなんやね?」
僕は頷いた。
「そうなんだ。だから、僕たちはこの危機を乗り越えるために、二つの方法を見つける必要がある」
僕が二本の指を出すと、皆の注目が集まる。
「一つ目は、太陽の膨張からこの世界を守ること。二つ目は、太陽が消えた後でも生き延びるための、新しい光を見つけること」
それを聞いて、エリナが絶望的な表情で問いかけた。
「それは……可能なのでしょうか?」
あまりに壮大な未来の話に、誰もが息をのんでいる。
「とても難しそうだけど、僕はその答えを見つけてみせる」
そこでアリスがぽつりと口を開いた。
「ホンマに答えなんてあるんやろか?」
彼女の疑念は皆も感じているものだろう。僕は力強く答えた。
「あるさ。フォレスティアはヒントをくれているんだ。まだすべてのピースは揃っていないけど、未来が見える彼女が諦めていないなら、僕たちに可能性が残されていると信じる。そして、それが僕の使命なんだ。だから、みんなの力を貸して欲しい!」
僕の言葉は食堂の静かな空気に重みをもって響いた。皆、互いの顔を見つめながら、心の中で覚悟を確かめているのが分かった。
まずエリナが決心したように微笑み、力強く頷いた。
「私も……皆さんと一緒に、この運命に立ち向かう覚悟ができました」
アリアも頷き、やれやれといった口調で笑った。
「しゃあないなぁ、とんでもない話聞いてもうたけど……まあ、なんとかしたるわ、しらんけど」
エネルは拳をぐっと握りしめ、いつものように力強く笑みを浮かべた。
「よし、決まりだ! 俺たちのチームは、控えめに言っても最強だぜ。教団なんてさっさと片付けて、ヤバい方の問題に力を注ごうぜ!」
こうして僕たちは、運命を共にする仲間として心を一つにし、太陽の危機に立ち向かうことを誓い合った。
だが、エネルが言うほど教団の力は生易しいものではなかった。間もなく、ソルディアス教団がその全勢力を挙げてイグナリス王国に攻め込もうとしているという情報が入る。イグナリス王国の全土を巻き込み、大きな犠牲を伴うことになる壮絶な戦いが、ついに始まろうとしていた。
7章は説明の多い回でした。次はいよいよかつてない規模の戦いが始まります。
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