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7-3 異端者と新しい絆

「ノエル家はそれなりに古い家系で、代々、他者の力を高める魔法を受け継いできたんや。便利な魔法やけど、まぁ地味なもんやな」


 他者を支援する魔法――確かに目立ちはしないが、サポート力としては非常に強力だ。


「これでも、あたしは優秀な方なんやよ。うちの家系は普通、他人の力を2、3倍にするくらいが限界やけど、私は10倍くらいまで増幅できる」


 10倍……正直それは驚愕に値する力だ。さすがは元ソルディバインの一人、といったところか。


「せやけど、アリスは……異端やった」


 そこでアリアは重い言葉を呟いた。エネルが首をかしげて問いかけた。


「異端って、どういう意味なんだ?」


 アリアはわずかに苦笑いを浮かべ、説明を続けた。


「アリスは、他者の力を高める魔法を受け継ぐノエル家で、なぜか電磁気を操る力を持って生まれてきたんや。家の魔法とは全然違う力やから、周りからは特別な目で見られる。彼女はずっと家族から冷たい目で見られてきたんや」


 アリスの冷たい表情の裏にある深い孤独と傷を察することができる。

 魔法という力が世に現れたのは、千年ほど前とされている。最初は、手が少し温かくなるとか、話を聞いた相手に眠気を誘うとか、取るに足らない程度のものだったが、似た系統の魔法を持つ者が家族を成し、代々その力を引き継ぐことで、徐々に強力な魔法へと変化していった。特に古い家系は自らの血統と魔法を守り、純粋な形で後世に伝えることに重きを置いている。僕の家、ユニマグナス家も例外ではなく、念話に関する魔法を持たない者との婚姻は許されていない。これは、僕が父と対立する一番の原因でもある。


 そんな中、ごく稀に、家系の魔法とは全く異なる力を持って生まれる者がいる。それが『異端』、つまり『突然変異』だ。こうした存在は恐れられ、特に伝統を重んじるこの国では忌み嫌われる対象となる。


 異端はただその存在だけで奇異な目で見られ、受け入れられないことが多い。しかも、異端の魔法は多くの場合、家系の魔法よりも弱く、価値が低いと見なされることもある。幼少期に、似た魔法を持つ家に引き取られるならまだ幸運だが、場合によっては人目を忍んで捨てられてしまうことさえある。


 アリスの場合、彼女の力は一見華やかで、強力だったが、それが故により恐れられ、或いは、嫉妬の対象にもなってきたのだろう。


「だから、アリスはずっと寂しかったんだね……」


 エリナが優しいまなざしでアリスを見つめると、アリスはその視線に少し戸惑い、視線を逸らしながら小さな声で呟いた。


「……姉ちゃんがいたから平気や。でも……家は嫌いや……」


 その言葉に、アリアがそっとアリスの肩に手を置き、柔らかく続けた。


「そうやな。せやから、あたしはずっと妹を守ろうって決めたんや。アリスはあたしの大事な妹やからな」


 アリアは少しだけ表情を和らげ、遠い目をして続けた。


「それで、このままではあかんと思って、アリスを連れて家を出て、ルミナス王国まで行ったんや。そこで教団に出会って、ここならアリスにも居場所ができるって思って……でも、それは壮絶な間違いやったわ」


 アリアの声には、過去を悔いる気持ちが込められていた。場が重くなったのを感じ、僕はアリスに向かって柔らかな声で言った。


「アリス、君はもう僕たちの仲間だ。これからはみんなずっと一緒だから、安心していい」


「そっかぁー、お前も大変だったんだなぁー。何か困ったことがあれば、俺にも言ってくれよな!」


 エネルも少し目を潤わせてアリスを励ます。アリスは少し照れくさそうにしながらも、小さく頷いた。

魔法の始まりのような能力を持つ人たち、周りにもいると思いませんか?


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― 新着の感想 ―
この子たちの実家には何か報いがあったのか。この2人の破壊力ならご実家を殲滅させられそうですね。家族ゆえの怖いもの知らずだったのでしょうか(笑)怖かったのかもしれませんね。ご実家は妹ちゃんたちのことが。…
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