1-3 念話と予知能力
――念話接続――フォレスティア
『フォレスティア、今の状況見える?』
フォレスティアは、未来予知の能力を持っている精霊だ。彼女と念話でつながることで、僕が危険な状況にあるとき、彼女に頼ることができる。
『シン、今の状況すっごくヤバいね。怪しげな人たちがたくさんいる。それに、あの女の子はボク達の目的のためにも、とても大事な人だよ。絶対に守らなきゃいけない!』
フォレスティアの声は幼く聞こえるが、その言葉には重みがある。未来の予知ができる彼女の言うことに間違いはないからだ。彼女はきっと僕たちの未来において、重要な役割を果たす存在なのだろう。
『分かった、彼女を必ず守るよ』
念話を通じて、フォレスティアの力を僕に分けてもらう。『数秒先の未来を予知する力』が僕に宿る。これでは今僕は、少し先の未来をシミュレーションする能力を得た。
僕は彼女を助けるために、まず状況を冷静に把握した。僕の念話の魔法だけでは、直接的な攻撃手段にも防御手段にもならない。だが、フォレスティアの予知能力を使えば、敵の動きを先読みし、対策を打つことができる。
走っている相手にものをぶつけるのは難しい。そこでまず僕は坂の上から丸太を転がして、できるだけ多くの敵を転倒させる試行を行う。フォレスティアの力を借りて、様々なタイミングで丸太を転がすシミュレーションをしてみる。そして、試行の結果、最も多く敵が転倒した転がし方で丸太を転がした。
実際の結果を確認する必要はない。続いて僕は大き目の石を何度も投げる試行を行う。薄暗くても、僕の念話で敵に接続していれば、その位置は正確に把握できる。うまく試行できた投石方法を正確に再現し、男たちの顔面にクリーンヒットさせていった。
ちなみに、この未来の試行の正確な再現というのもそう簡単にできることではない。これは念話という地味な魔法をどうにかして最大活用しようと僕なりに訓練を重ねてきた結果だ。
視界の悪い中、丸太で転倒した起き上がりざまに、意図せず飛んできた石に横顔を殴られ、シミュレーション通り、敵たちは昏倒していった。
だが、その中の一人――強靭そうな肉体を持つ男が素早く反応し、石が飛来してきた方向、つまり僕の方に向かってくる。彼の鋭い目は一切の怯みを見せていない。
この男に対しては、何度石を投げる試行を行っても無駄だった。鍛え抜かれた戦士を、さすがに石のみで倒すのは無理がある。焦るな、冷静になれ――自分に言い聞かせる。僕の視線が、少女へと向いた。
『君、何か魔法は使える?』
彼女に問いかけると、疲れ切った表情でかすかに頷き、念話で答えてくれた。
『……光の魔法なら。光の槍を飛ばせます。でも、彼らの防御魔法には通じませんでした……』
『光の槍』か。正直とても羨ましい派手な魔法だ。でも、薄明かりの中の石と違って、輝く光の槍は、どこから飛んでくるのか一目瞭然だろう。防御魔法で防がれてしまうというのも頷ける。しかし、今の僕の最強武器である石よりは威力が強いはずだ。
僕は彼女に向かって力強く頷いた。
『大丈夫、君が狙って打てば、僕が必ず当たるようにしてみせるから』
彼女は一瞬驚き、その言葉の意味を考えようとしたが、すぐに大きく頷いた。彼女が両手を前に出して構えると、淡い光が彼女の手元に集まり始めた。徐々に光が凝縮され、槍の形を成していく。
「そんな光の魔法、何度も防いできただろう」
近づいてくる男は嘲笑しながら防御魔法を張る準備を始めた。
『大丈夫、全力で放って!』
僕は伝えた。彼女は残った全ての魔力を集めるように集中し、真っ直ぐ前を見据えた。
だが、相手の防御魔法を張る準備はすでに整っている。これでは魔法は通じない――そこで、僕はその男に念話で接続し、相手の脳内に最悪な体験のイメージを送り込んだ。僕の念話は言葉だけでなく、イメージや感覚も伝えることができる。
「痛ッ!」
男は顔をしかめてつま先を抱えた。
――光の槍――
そのタイミングで彼女の手元から放たれた美しい光が、敵に向かって真っ直ぐ飛んでいき、男が防御魔法を発動する前に命中した。そのまま男は崩れ落ち、その場に静寂が訪れた。僕は大きく息を吐き、肩の力を抜いた。
「ふぅ……何とかやったな」
ここで僕が男に送り込んだのは、そう、前世で机の角に足の小指をぶつけた時のイメージだった。痛いよね。
シンの能力名を、念話にするか、テレパシーにするか、迷いました。で、念話にしました。こっちの方がより地味な響きだからです。
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