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4-3 絶対的な力

 どうすれば、この圧倒的な力を持つクロノアに勝てる……?


 クロノアに圧倒されながらも、イグナリス軍の魔導士たちは次々と強力な魔法を放つ。炎が燃え上がり、氷が舞い、雷が轟く。しかし、クロノアはそれらをものともせず、稲妻のように高速な動きであらゆる攻撃を回避する。彼女が高速移動する度に、次々と仲間の兵士たちは倒れ、僕たちの戦力を確実に削ってくる。


「くそっ、どうする、シン!」


 エネルが焦燥感を露わにする。彼のいつもの自信に満ちた顔ではなく、必死さが滲んでいた。それは僕も同じだ。恐怖が押し寄せる中、何とか冷静さを保とうと自分に言い聞かせる。

 一瞬で多くの兵士を斬り捨てる攻撃力を持ち、物理的なあらゆる攻撃を容易く回避する相手。対抗手段がない。何か、方法を見つけなければ――。


『考えろ、考えるんだ……』


 僕は必死に頭を巡らせ、クロノアの力を観察する。彼女の動きは、物理法則を超えている。物理的な攻撃が当たらないなら、精神に揺さぶりをかける。


 ーー念話接続(マインドリンク)ーークロノア!


 僕は、念話でクロノアに接続し、自分の前世の最悪な記憶を彼女に送り込む。机の角に小指をぶつけた時の痛みや、初めてドリアンを食べた時の記憶。しかし――


「フ……これは幻術の類か? こんな子供騙し、私には通じない」


 冷たく一蹴されただけだった。僕のとっておきの奥の手は、彼女の足止めにすらならない。


 クロノアの剣は速く正確で、どんなに屈強な鎧も盾もその隙間を貫かれる。彼女にとってはどんな相手も隙だらけであり、不意打ちもフェイントも意味をなさない。そして、もう200人以上の兵士を切り捨てているというのに、彼女は少しの息も乱していない。

 改めて痛感する。無敗の騎士、と言う彼女の呼び名は誇張でも何でもない。負けるはずがないから無敗なのだ。そんな相手と僕たちは敵対している。


「くそ……!」


 僕は奥歯を噛み締め、観察を続ける。何か、突破口はないのか……。


 そこで再び、フォレスティアの予知能力により、クロノアの剣が迫りくる未来が頭をよぎる。何もしなければ確実な死。たが、今回は避ける術が見つからない。先のようにエネルと共に後方に跳躍しても追いつかれてしまう。


『エネル、上空に飛べる?』

『ああ、任せろ!』


 念話で咄嗟に思いついた機転をエネルに伝えると、彼はすぐに反応してくれた。


 ーー魔気波(マギハ)ーー


 彼が放出する強力なエネルギーの反動を利用して、エネルは僕を抱えたまま空中に跳び上がった。


『エネル、凄い、飛んでる!』


 高火力で空も飛べる魔法。僕は改めてエネルを尊敬した。


 クロノアには一つ弱点がある。彼女は地上でこそ無敵だが、飛行能力は持たない。僕たちが空中にいる限り、いくら時間を操作したところで彼女の攻撃は届かない。


「逃げるしかないなんて、情けねえな……」


 エネルが悔しそうに呟いたが、僕も同じ気持ちだった。今地上で彼女に対抗するのは不可能だ。それは絶対的な力の差。地上にいる限り彼女の攻撃は回避不能。わずか数秒で倒されてしまうだろう。

 だが、空中に逃れたことで、僕は冷静に戦場を見渡せるわずかな時間を得ることができた。


 クロノアは地上で忌々しそうに上空の僕達を見上げていたが、焦りは見えない。彼女の動きは相変わらず悠然であり、極めて正確な超高速動作で、残った兵士たちの数を減らしている。


「どうする、シン? このまま空中にいても何も変わらねえぞ。分かってるとは思うが、俺の魔気波(マギハ)も、そう長くは持たねぇ」


 余裕のないエネルの言葉。空中に滞在し続けるため、エネルは魔力の波動を放出し続けている。これには相当な魔力を消費するはずだ。彼の魔力が尽きれば、僕たちは地上に戻らざるを得ない。そして、その時が僕らの最期となるだろう。

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― 新着の感想 ―
時間を稼げたことで、何かしらか好転するかもしれませんね。時間というのは本当に大切なものですからね。クロノアからどう逃れるのか。打ち破るのか。この先もとても楽しみです。
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