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4-2 時間を支配する者

 私の名は、クロノア・レヴァンティス。かつてはルミナス王国の忠実な騎士だったが、ルミナス王国が異変の元凶であると知り、王国崩壊にも加担した。今やソルディアス教団の高位司祭ソルディバインとして、新たな秩序を築くために戦っている。

 私の魔法は時間の流れを操ることができる。誰かの時間の流れを遅くしたり、早くしたり。だが最も効果が高いのは、私の周囲の時間の流れだけを早くすることだ。これは、私以外の全ての時間の流れを遅くすることと等価だ。これにより、私は他の者たちよりも圧倒的に速く動くことができる。どんなに優れた剣士も、この速さにはついて来られない。

 目の前には、ご苦労なことに500人の兵団が私を討とうとして並んでいる。だが、彼らの攻撃が私に届くことはないだろう。


 エリナを匿っている者、帰還した教団員が言うにはシンと言ったか。可哀想に、彼の表情には、明らかに恐怖の色が浮かんでいる。予知能力を持っていると聞くが、私の前では無意味だ。いくら未来を予知したところで、回避できない攻撃はどうしようもない。既に勝負はついていると言っていい。


「ここで私とやり合おうというのか……いいだろう。安心しろ、恐怖はすぐに終わる」


 そう言いながら、私はゆっくりと腰の剣を抜いた。5秒もあればシンを仕留められるだろう。


 ーー私だけの時間(クロノ・エクリプス)ーー


 魔法を発動し、私の時間の流れだけを10倍にする。逆に周囲の世界はゆっくりと動き出し、人々はまるで人形のようだ。私はその中をただ悠然と歩きながら、一人一人順に斬っていった。

 斬ったところで悲鳴が聞こえるのはもうしばらく後。血もゆっくりと噴き出てくるので、返り血を浴びることもない。私がやるのは人形のような相手に坦々と剣を刺していくだけ。実に単純な作業だ。

 ゆっくりと倒れていく兵士たち。出来損ないの人形劇を見ているような、滑稽な光景だ。もう100体くらいは刺しただろうか。

 さて、相手の数を減らしながら前進して、そろそろシンとエネルが立っている辺りだと思うが、どうも2人の姿が見えないようだ。不思議に思い見渡すと、彼はエネルと共に後方へと跳躍していた。なるほど、瞬時にエネルの力を借りて回避したのか。所詮無駄なあがきにすぎないが、良い反応だ。

 ここで、私の魔法の効果が一旦切れる。周りの時間が元に戻り、世界が再び動き出す。


「なるほど、勘はいいようだな」


 私は冷静に言いながら、シンを見据える。先ほど切り捨てた者たちが地に倒れる音が一斉に聞こえた。

 多くの場合、ここで相手は戦意を喪失する。何が起きたのかわからない、と言った顔で絶望する。ところが、イグナリスの兵はなかなか肝が据わっていた。指揮官の号令下、この状況でもまだ私に攻撃を仕掛けてくる。

 そう、こうでなければ楽しめない。私は、それなりに剣の腕にも自信がある。魔法を使わなくとも、5、6人を同時に相手にすることくらい造作もない。彼らと少し切り結んで楽しんでいたが、魔道士たちが私の動きを止めるために集団詠唱を始めたのは少々厄介だ。


 ーー私だけの時間(クロノ・エクリプス)ーー


 私は再び魔法を発動させた。こちらに向かってくる斬撃、弓矢、魔法の攻撃は、ゆっくりとなり、私にとってはまた退屈な戦闘となる。全ての攻撃を容易く回避しながら、剣士たち、詠唱中の魔道士たちを斬り伏せた。

 ここで、あのエネルも必死になって無数の魔力の弾をこちらに打ち込んでくるが、彼の動きもまた亀のように遅い。あの弾の威力は確かに厄介だが、ゆっくり飛んでくるそれらをかわすことはあまりに容易い。

 魔力の弾が地面や木々に次々と着弾し、破壊音を立てる中、私はそれらの間を舞うように避け、同時に相手を切り伏せていく。ここは、私だけが自由に動ける世界。彼らの攻撃が私に届くことは決してない。


『もうすぐに終わる。今回も、私の勝ちだ』


 もはや私の勝利は確定しているだろう。時間を操る私の魔法。それは絶対的な力であり、誰も抗うことはできない。これまでも、これからも。

自分の時間の流れを早くすることは、宇宙全体の時間の流れを遅くすることと等価です。凄いですね!


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― 新着の感想 ―
クロノアさんの慢心が如実に見て取れる場面で先が楽しみになりますね。どんなに堅固な城も内側は脆いなどと言われますが。強力な能力も内側が慢心や未熟では、もったいないというところでしょうか。今回もとても面白…
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