ちゃぷちゃぷ ~噴水あそび~
園児揃って
ちゃぷちゃぷ、きゃっきゃ
スズメにハトにトンボもいたりして
みんなで平和な公園の噴水広場で水遊び
ほっぺたふくよかお子が一人居りました
止んだ噴水の噴出口を不思議そうに覗き込むお子
しばらくすると水しぶきがひゅっと吹き出します
「あ、たろうくん危ない!」
警告の声もむなしく
ざばーっと勢い増す噴水
顔面に水柱を受けて
「あぶぶぶう!?」と白目をむいて唸るたろうくん
目は真っ赤です
おや、泣きそう
……いや、
「もういっかいやるー!」
……え?
ぷっくりほっぺを拭ったたろうくん
凝りもせず噴射口の水が落ち着くのを待ちます
ざばーっと勢い増す噴水
また、水流が彼の顔を直撃しています
今度は「べりゅらばらばだば」と意味不明な言葉つき
周囲の子は面白がって噴水を浴びながら駆け回っています
……先生言いましたよね
「レインコートは脱いじゃダメですよ」って
誰も守りやしないルール
叱るのはいつも先生
好かれるのはハトやスズメたち
先生はそれ以下ってことかな?
なんだかなぁ……。
「せんせい!」
「なぁに、たろうくん」
「綺麗な花摘んだ、あげる!」
また噴水あそびを始めるたろうくんたち
レインコートが散らかっている
片付ける方の身にもなって欲しいのだけど……。
貰った花を観てみる
「まぁ、きれいな紫陽花!」
これは園内で押し花にして飾ろうかしら
考えていると私は園児たちに引っ張られてた
「先生も、喰らえー!噴水爆弾!」
「⁉」
私の全身は噴水が噴出したことによってずぶ濡れになった
悪気はまったくなかったのだろう
子どもは好奇心でそういうことをするものだ
でも嫌だったとは言っておかないとね
「こんなことしたら先生、風邪ひいちゃうかもしれないです」
「引いたら治してあげる!」
「おお頼もしい」
そんな会話をしていたら服がカラカラと乾いた
くしゃみや咳をする園児たちに怯えながら乗る帰りのバス
園児たちが元気を見せつけた後に、病魔に襲われる姿を観るのは辛いから
出来ることを命いっぱいしてあげるのがこの仕事だと思っている
子どもが子どもらしくあるための通過儀礼的教育
大人に成ると決めた日から私の覚悟は生半可なモノではない
そりゃいろいろやってりゃご褒美もある
たろうくんから貰った紫陽花を押し花にして額縁に飾った
こういう記憶が積み重なる仕事に、私は誇りを抱いている
仕事終わり
酒のあてにピーナッツとかポテトとか頼むとき思うわ
「本格的な竜田揚げがお腹いっぱい食べたい」って
賃金が上がったら、私も子どものように自由奔放に遊べるかしら?
なんて思ってみたり。