序章
目が覚めると、俺は大勢の男女とともに真っ白で何もない部屋に居た。部屋に居る多くの人間は、俺と同じ年齢と見える。
『この会場へお集まりの皆様、担当の者の指示に従って、私の居るホールにお越しください。』
突如、部屋にアナウンスが鳴り響く。確かに、スタッフらしき人物が見受けられる。そのスタッフを観察すると、軍人の様に見えた。
―この人数を誘拐したとなると、いくらファシズムの国だからと言って、福祉厚生の進んだこの国の反社会的勢力が行った事ではない。あのスタッフが軍人だと仮定すると、国の行った事だと考えるしか…
一体、何の為に?
俺は、移動しながらそんな事を考えた。
―――――――
「お集まりの皆様、ようこそいらっしゃいました。私の名前は綾野賢志と申します。」
―誘拐してきたと言うのに、よく言えたもんだ。
綾野賢志は、この国の有力な政治家である。やはり、政府主導のものだったか。
「お察しの通り、私達政府の者が皆様をお集めしました。皆様に集まって頂いたのは、この国の英雄となる人間を決める為です。我が国は宿敵国であるインド帝国に戦争を仕掛ける事を決定致しました。その兵士となれる有力な人物を決める為にお集まり頂きました。そして、様々なゲームをして競って頂きます。」
―インドと戦争する為の兵士の選抜の為に集めただと?そんなにこの国は戦力不足なのか。税のほとんどが軍事費に充てられていると言うのに。
何はともあれ、兵士にならば当然死ぬ可能性がある。愛国心の強い者以外は当然わざと負けるだろう。
「尚、選抜された兵士には、この国の最先端の戦闘技術が与えられ、特別兵士となります。しかし、それ以外は、簡易的な装備で戦場に動員され、平均以下だった場合、命の保証は有りません。」
平均以上でも簡易的装備で動員?死ぬに決まっている。
現代の戦争に用いられる兵器は、核兵器は勿論、それ以上の破壊力のあるものが使われると聞いている。日本の進んだ防具の完全装備ならともかく、簡易的な防護服では9割9分死ぬ。
「おい、ふざけんじゃねえぞ。何でてめえら政府の為に死ななければならねえんだよ。」
不良少年らしき人物が言った。
「何も必ず死ぬ訳では有りません。勝てば良いのです。」賢志は嘲笑の笑みを浮かべていた。
「…ふざけてんじゃねえぞ!」
不良少年は賢志に襲い掛かろうとした。しかし、その少年はすぐに倒れた。少年の頭には、綺麗な弾丸の通った穴が穴が空いていた。
「…実の所、我が国は君達に失望しているのだよ。全国的に学力、運動能力の低下が著しく、とても物質的裕福な我が国民とは思えん。そんな不良品どもに、税金をかける余地はないのだ。死んだ方が国の為だ。」
―…こいつ!命を何だと思っている!
命の保証はないと言ったが、この男達、完全に敗北者を殺すつもりだ。
「横槍が入ったが、本題に戻ろう。この兵士選抜試験におけるゲームと言うのは、スポーツ、学力テストなど様々だ。ただ、いずれも勝利条件を満たせば、ポイントを得られる。この合計ポイントが全てのゲームが終了した時点で上位3%以内であれば、選ばれし特別兵士となる。」
ここに居るのはざっと1000人弱、特別兵士となるのは多くても30人だ。
―それ以外の970人はほとんど死に至るだろう。
「早速だが、第一ゲームは明日の13時からこの場で行う!内容は学力テストだ。軍学、数学、国語、科学、歴史だ。合計点が上位10%となれば、勝利となる!」
―こうして、俺の平和な学園生活に終止符が打たれたのである。




