憧れの学園生活
―憧れの学園生活は、期待外れだった。
いや、高校がつまらないという訳ではない。
が、少し希少性の高い事象に欠けると言うべきか。
表現し難いが、そんな所だ。
恋愛とか、部活動でライバルと競い合ったりとか、そう言うのがありふれているんじゃないのかよ、高校は。
―俺は帰宅部だった。何がライバルだ。
て言うより、達也が近くに居るから錯覚していたが、俺はそもそも圧倒的陰属性。
―恋愛だと。そんな事出来る訳ない。第一、俺は超が付く程の二次元女好きじゃないか。
―ライバル?部活動も入って無い上に運動能力は極端に欠乏していて、唯一出来る勉強も、この進学校では平均以下だ。そんな俺にライバルなんて大層なモノ、出来る訳ない。
そんな事を思いながら過ごす、憂鬱な日々を送っている。
…いっその事、勉強を頑張るしかないか。
――――
「よっ、桐谷。元気ねえな。推しのアイドルが結婚でもしちまったのか?」
神崎が話しかけて来た。
「俺にアイドル趣味なんてない」
「まっ、何でも良いが」
―本当に分かってるだろうな。
「お前、入学してから2週間経っているというのに、俺以外と喋ってないだろ」
「…そんな事はないが」
―当然ながら、図星である。
「お前が良いなら良いんだけどよ。もう少し青春ってものを謳歌したらどうだ?恋愛したり、ライバルと競い合ったり、そう言う事は若い内にしておかないと」
―お前は俺の親か。と言うか、お前は俺の心の中を読んでいるのではあるまいな?
そう言えば、まだ一度も学校に来ていない生徒がいる。そいつの名前は黒木渚。女だ。俺の前の席なんだが、今まであまり気にする事もなかったが、流石に2週間も来ないとなると話は変わって来る。
この高校は、入学試験において、高得点を獲れれば、中学で不登校でも入れる。
もし、渚が1組なら、不登校であった可能性は除外されていたが、ギリギリ入り込めた様な生徒の集まりの5組にいるんだから、その可能性は無きにしも非ずだ。だが、不登校だったのなら、相当に頭が良いのだろう。
―まあ、可愛かったとしても、俺は二次元にしか興味はないから関係ないが。
――5日後
俺は、いつも通りこの亜英高校へと向かった。
「おいおい、あんな綺麗な人なんて居たか?」
「可愛すぎるだろ…」
俺のクラス付近に人が集まってるな。
―可愛い?このクラスで該当しそうなのは、巨乳で、かつ、顔も可愛い上に優しい、委員長の佐藤萌くらいであろう。
だが、今更何故あいつの事を。彼女が可愛いと言う事は元から知られていたのに。
俺は、そんな事を考えながら、教室へ入った。
―俺の前の席には、「本当に三次元なのか」と思う程、よく作り込まれた容姿の女が居た。
(よく作り込まれたで誤解されそうだが、決して整形では無い。)
儚げで、まるで人間ではないみたいだ。
俺は思わず、見惚れてしまった。二次元ガチ恋勢の俺が、だ。
「あの…」
儚げな少女、渚が俺に話しかけて来た。
「私、黒木渚と言います。宜しくお願いします。」
何故欠席していた?と聞きたいが我慢するしかなかろう。
「…ああ、宜しく」
…暫く、彼女の様子を伺うとしよう。
―――数日後
俺は、自分の答案用紙と校内順位を見ながら、憂鬱な気分となる。
それも無理は無い。殆どの教科が80点台なのだ。得意教科で有る数学ですら、96点だ。そして、校内順位は25位。腐っても、俺は中学の時は偏差値75くらいだったんだぞ、畜生。
―いや、偏差値70の高校でこの順位は、偏差値75相当なのか?と言うか、俺は入学試験ではかなり下の方だったではないか。勉強だけに専念できる陰キャで良かった!
1人で一喜一憂している気持ちの悪い人間が居た。俺だ。
だが、俺は凡人の域を出ていないと、ある事をキッカケに気付かされる。
―彼女は真の天才である。
運動神経抜群な上に、集団の指揮も執れる。
そして、今回のテストでは、凡ミス1問しか間違っていなかったと言う噂がある。本当にこの進学校の高難易度なテストでその様な得点が採れたのなら、全国でも有数の頭脳を有しているに違いない。
当然、その様な彼女の様子によって、自ずと生じ得る疑問が有る。
―そう。何故彼女は不登校だったのか、だ。
友人も多そうなのに、何故?まあ、単に身体が弱く、たまたま入学試験当日や入学時に体調を崩していたとも考えられるが。
―そんな事は別に良いか。どうせ、別世界の人間なのだ。俺が関わって良い相手ではない。
「あの…」噂をすれば渚だ。
―何だ。俺の事を馬鹿にしにでも来たのか。
そう卑屈に思い、クラスメイトでありながら、他人行儀に言った。
「僕に何の用件が御ありで?」
渚は少し口籠った。だが、すぐに言葉を発した。
「私と…私と、友達になって欲しいの!」




