1、「出来損ないの私」
私はただ、お父様とお母様に愛されたかった___認めてほしかったの。
私の名前はフォント・エルーシャ。大公家に生まれた「出来損ない」。私は勉強も魔法もできなく、なによりフォント大公家特有の黄金の目ではなく深海のような青黒い目で生まれてきたのだ。いつもお父様とお母様はゴミを見るかのような目で私を見て無視し、都合のいい時だけは優しくなる。きっといい子でいれば愛してくれるはず。
でも……
「お前も少しは弟を見習ったらどうなんだ!?」
「その不気味な目で見ないでくれる?」
「この出来損ないめ!!」
こんな言葉はもう飽きるほど聞いてきた。
もう、苦しいよ____
私は17歳の誕生日にアスラン帝国の皇太子殿下との婚約が決まった。
なぜ私があのようなお方と婚約が出来たのか疑問でしかない。アスラン帝国第一皇子アスラン・ディ・レオ。あらゆることにおいてその才能を発揮し、誰にでも親切にする姿勢から、彼はとても高い支持率を持っていた。婚外子の第三皇子とは違って___。
私のような出来損ないが婚約できる理由は何?
私はそんな疑問を持ちつつも殿下との婚約をとても嬉しく思っていた。もしかしたら殿下なら愛してくれるかもしれない。そう思うと家族に愛されない日々でも乗り越えることができた。
時は過ぎ、殿下と面会の日
「お初にお目にかかります。フォント大公家が長女、フォント・エルーシャと申します。」
私は身に纏っている地味めなドレスをつまみ、頭を下げた。
「頭を上げてくれ。」
私はその言葉に従って視線を上げると殿下と目が合った。きらきらと光る蜂蜜色の髪に美しく鋭いグレーの瞳、とても綺麗な方だ。私はその容姿に釘付けでしばらく言葉が出なかった。
「この後予定が詰まっているから失礼する。」
「…え?」
殿下はそれだけ言ってすぐに去ってしまった。そのときふと思い浮かんだ。「第一皇子殿下は誰にでも親切なのでは…?」。普通、自分の名を名乗るのが貴族の礼儀なのに。私が見つめていた時も明らかに殿下は面倒くさそうな顔をしていた。胸がチクリとする。私はまた愛されないのか。
私が18歳の誕生日を迎えてすぐ、レオ第一皇子殿下が暗殺未遂にあったという事件が報じられた。殿下が寝ている時に腹部を刺されたとのことだ。
私はどうすることもできなかった。ただ、怖かった。私の両親がしたことなのだから。
なのに私の両親は私を犯人だと突き出してきた。
「私どもの娘が殿下の暗殺未遂をしたと白状致しました。」
なんで_____
これはお父様とお母様が権力に目が眩んでやったことでしょう?私を皇子殿下の婚約者にまでして。
「私はそのようなことをやっておりません!」
苦しみの雫が頬を伝っていくのを感じる。
「聞いてください、、!」
虚しくも私の声は届かなかった。
死刑執行の日、もう私は自分が生きてるのか分からなかった。涙が一滴も出てこない目、枯れた声、乾燥して割れた唇。見た目だけが良かった私の取り柄はすべてない。
断頭台に首をかけられる。
絶対に私は許さない、もしやり直す機会が与えられたのならばもう同じ過ちは犯さない___!!!
______
私は首を貫くような痛みと共に目が覚めた。
この作品を読んでくださりありがとうございます!
学生ということもあり、更新は不定期になりますがぜひ読んでいただけると嬉しいです!
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