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8.プレゼント

 翌日以降。ジャンもお祖父様に師事することになり、2人で勉強を開始した。

 町にも学校は存在するのだが、私達はお祖父様から勉強を教わることにした。


 ーー世界条約において、魔法を教えることが認められている学校は、『魔法学園』のみと定められている。

 つまり、魔法学園に入学するまでは、公的機関で魔法について学ぶことができないのだ。魔法使いの数が少ないことや、魔法の危険性からそのように定められているのだろう。


 従って、各国の学校では一般教養などを主に学ぶことになる。勿論それらも重要な学問であることには違いないが、将来魔法使いとして国に貢献したいと考える者達は、家庭教師を雇い、幼少期から魔法に関する分野を独自に学ぶことが多かった。特に、建国に携わったとされており、魔力を多く有する王侯貴族ではその傾向が強い。


 平民には不利だと思われてしまうだろうが、貴重な魔法使いとして町が多大なバックアップを行うため、町の学校に通いながら、家庭教師を雇い勉強することは可能である。

 魔法学園は魔力があれば必ず入学することになっており、平民であっても、努力と才能次第で大成する人物は多い。


 ただし、実践魔法については、民間で教えて良いのは初級魔法のみとされている。

 過去にこっそり中級魔法を学ぼうとした者も居たが、魔法学園の教師に見咎められ、入学することができなかったらしい。何故発覚したのかは明かされておらず、魔法学園の闇を感じる部分である。


 (た、多分、国際問題に発展しないように、とかだよね、うん!)



 ーー『魔法学園』は、どの国にも属さず、大陸の遥か上空を浮遊する孤島に佇む、独立した教育機関。

 魔力を有する者だけが、その門戸を叩くことが許される。


 (ああ、早く魔法学園に通いたいな)


 私はその日を今か今かと待ち侘びながら、今日も机に向かうのだった。

 



◇◇◇



 勉強を初めて1ヶ月。

 お祖父様は、今は引退の身ではあるが、国の結界の補強や、魔法騎士団の非常勤顧問として王都に行くことが多く、忙しい合間を縫って、転移魔法で領地まで来てくれている。

 そのため、お祖父様が不在の日は、与えられた課題や前回の授業の復習をして勉学に励んだ。

 


 ーー今日は、私の部屋でお祖父様と勉強する日だ。



「アデル、前回の復習じゃ。魔法は何と何に分けられる?」


「はい! 魔法は、自分の属性による属性型魔法と、それ以外の非属性型魔法に分けられます。属性型魔法は、火、水、土、風、氷、雷、光、闇の内、自分に適性のある属性の魔法を使うことができます。非属性型魔法は、決められた呪文を唱えて使う魔法で、個人の属性は関係ありませんが、魔力の量によって使える魔法が限られます」


「うむ。その通りじゃ」

 

 お祖父様はにっこりと微笑んだ。お祖父様の満足する回答ができたようでホッとする。ジャンは隣で「5歳なのによく噛めずに言えますね」という、褒め言葉なのか何なのか分からない発言をしていたが無視をした。


 お祖父様は光属性がメインだが、水属性の適性もある。因みに2属性持ちはかなり稀少なため、それだけでエリート職が約束されたようなものだ。お祖父様凄すぎる。

 

 属性は遺伝しないので、魔力が発現するまで自分の属性は分からない。


 (確か、母様は火属性で、父様は風属性だったよね)


 父方の親戚については詳しく知らないが、母が若い頃に亡くなった、私にとってのお祖母様は土属性だったらしい。子爵令嬢で、花を育てるのが趣味だったと聞いている。


 (……もしかしたら、うちの庭は、お祖母様がつくったのかもしれないな)


 お祖父様は幾度も再婚を勧められたが、頑なに断り、男手一つで母を育てたのだとか。

 いつか、お祖母様の話を詳しく聞いてみたいな、と思った。


 お祖父様は次にジャンに向けて問いを投げかける。


「では、ジャン。魔法石とは何じゃったか?」


「はい。魔法使いが魔法を使用する際に必要な媒介です。魔法使いは魔法石を介して魔力を放出します」


 ジャンは簡潔に要点をまとめて回答した。


 ーー魔法石をはめ込んだアクセサリーやブローチなどは、魔法媒体と呼ばれる。前世のゲームやアニメで魔法使いが持っていた杖のような役割を持つ、魔法使いにとっての最重要アイテムだ。因みに、お祖父様の魔法媒体は左手に輝く指輪である。


「うむ。よく復習できておるようじゃな。感心感心。ーーと、ほれ、ジャン。これは王都で買った土産じゃ」

「?……ありがとうございます」

 

 お祖父様は、ジャンに高級そうなラッピングがされた小包みを2つ手渡した。ジャンは突然渡された手土産に戸惑っている。

 良いなあと眺めていると、お祖父様はもう一つの包みを取り出し、私にウインクをした。


「勿論アデルにも買ってきたぞ。王都で流行っておったお菓子じゃ」

「わあ!ありがとうございます、お祖父様!」

 後で母とお茶をしよう。ワクワクしながらお菓子を受け取ると、横でジャンが声を上げた。


「せ、先代様。このような高価な物、受け取れません!」


「どうしたの?ジャン。……わあ、それって魔法媒体!?」


 ジャンに渡された包みの中身は、魔法石が埋め込まれたイヤリングとピアスだった。



 

 ーー実は、1週間前、ジャンに火属性の適性があることが判明したのだ。

 前世のゲームで属性については知っていたものの、初めてジャンの右手から炎が現れる瞬間を目撃した際には、感動で涙ぐんだ。私は今、歴史的瞬間に立ち会ったと思い、心の中で前世のジャン推しに謝り倒した。ジャンは突然泣き出した私を見て若干引いていた。




「そろそろ初期魔法の練習も始めようかと思っての。ピアスの方が外れにくいじゃろうが、小さい子にピアスはちょっとの……と思ってイヤリングも買ってみたのじゃ」


 お祖父様はそう言ってお茶目に笑ったが、反してジャンは焦ったように声を荒げた。


「先代様、そういう問題では……!俺は、ただの従者です!お気持ちは嬉しいですが、受け取ることはできまーー」


 ジャンは慌ててお祖父様に魔法媒体を返そうとする。

 しかし、お祖父様はそれを手で制して、ジャンに語りかけるように言葉を紡いだ。




「うむ。じゃから、儂の大切な可愛いアデルを守っておくれ」




「!」


 ジャンはハッとして押し黙った。魔法媒体をじっと見つめる。

 ーーそして、覚悟を決めたように、きゅっと包みを胸に抱いた。


「……ご期待に添えるよう、謹んで頂戴致します」


 ジャンがゆっくりと頭を下げる。声は微かに震えていた。


 ……ジャンこそ、10歳の言葉遣いじゃないと思う、とは言える雰囲気ではなかったので、私は心の中に押し留めた。

ジャンの属性が判明しました!


いつもお読みくださっている皆様、ありがとうございます!

ブックマークも頂き、とても嬉しく思っております!


毎日投稿を頑張りたいので、よろしければ評価・ブックマークを頂けるとさらに励みになります……!よろしくお願い致します!

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