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6.預言の一族

 ーージークフリート・シュタイナー。

 シュタイナー家先代当主であり、アデルの祖父。

 伯爵家を継ぐ前は、カレンデュラ王国の筆頭王宮魔法使いとして国防を担っていたという経歴を持ち、彼が倒れるのは国が終わる時、とまで言われていた。

 更には、稀少な光属性の魔法使いであり、国を守護する大結界を張り続けている、生きる伝説。


 プレイアブルキャラではなかったものの、その生き様にユーザーは涙したものだ。


 あの威厳に溢れたお祖父様が庭師の格好をしているのは、何というか正直驚いた。



 ーー私がどこから話を切り出そうか迷っていると。



「アデルよ。しばらく見ない間に、随分と変わったのう」



「っ!」


 お祖父様は麦わら帽子を取り、私に向き直る。歳を重ね白の混じった髪と、翡翠の瞳が露わになった。

 そして、母様と同じ、全てを見透かすような瞳が私を捉える。


 (……お祖父様は、どこまで知っているんだろう?)


 私は思わずごくりと喉を鳴らす。


 ーーシュタイナー家には、『預言の一族』と呼ばれる二つ名があった。所謂、未来視の力を持っているのだ。

 力の弱い者であれは第六感に優れているというくらいだが、お祖父様の場合、メインストーリー第一部終盤でこれから始まる戦争を預言し、どの国よりも迅速に国防に力を入れたという描写がある。


「そんなに警戒せんでよい。アデルの顔つきが、以前よりも大人びたと思っただけじゃ」


 お祖父様はそう言って穏やかに微笑むが、私のシュタイナーの血が、それだけではないと告げている。

 お祖父様は恐らく、私の身に起こった変化に気づいているのだ。


 (それなら、一か八か……!)


「……お祖父様。私の封印を解いてください」


 私は思い切ってそう告げた。


 本来、アデルは自身にかけられた封印を知らないまま、魔法学園に入学する。今の私がこんな事を言い出すのは確実に不自然だ。

 それなのに、お祖父様は驚かなかった。ゆっくりと、私を試すように言葉を紡ぐ。


「解いてどうするんじゃ?今のお主に、その力を扱えると?」


「っ、それは……!」


 ーーもし今、全属性の魔力が戻ったら。それも、国をひとつ壊せるほどの。

 想像して、お祖父様が言いたいことを理解した。


(私は……きっとその力に呑まれてしまう)


 魔法というものは、便利だが同時に危険でもある。大量の魔力を操るには、それ相応のレベルが必要であり、そのレベルは一朝一夕で上げれるものではないと、ゲームを通じて学んでいた。


 ゲームのアデルは、少ない魔力量ながらも努力していた。

 高レベルに達していたからこそ、魔力量が急に増えても直ぐに順応することができたのだろう。


 ……お祖父様の正論に、何も言い返せない。


「過ぎた力は身を滅ぼす。お主に、あの力はまだ早いじゃろう」


「……はい」


 お祖父様に諭されて、私は項垂れたまま頷いた。

 ドレスの裾をぎゅっと掴む。そうしないと泣いてしまいそうだった。


(お祖父様を失望させちゃったかな。……ううん、例えそうだとしても、聞いたこと自体は後悔してない。封印を解けば直ぐに強くなれると思ってたけど、その考えは間違いだった。それに気づけて良かったんだ)


 そう自分に言い聞かせるも、涙が溢れそうになる。今の自分の顔をお祖父様に見せるのは憚られ、どうしようかと下を向き続けていた、その時。


「まあ、そうは言っても、そもそもあの封印は誰にも解けないんじゃがの。儂も解けないし」


「……はい!?」


 何だかとんでもない発言が聞こえて、伏せていた顔をガバッと上げる。滲んでいた筈の涙も引っ込んだ。


「誰かが解けるものなんぞ、そんなもの封印とは言わん。かけた儂ですら解けない封印こそ完璧じゃろう!」


「な、な、な……!」


 ーーなんて事だ。


 (そうまでして私の力を封印する必要ある!?)


 お祖父様はドヤ顔で胸を張っているが、私にとっては紛れもなく悲報だった。


 (もしかしたらメインストーリーが始まる前に封印が解けるかも……って思ったけど、そう上手くはいかないかあ)


 何だか腑に落ちない部分もあるが、取り敢えず、チート能力に頼れるのはもう少し先になりそうだ。それまでは、コツコツ今出来ることを頑張るしかないのだろう。


「さて、話もまとまったことじゃし、そろそろ始めようかのう」

「?何をですか?」


 お祖父様が突然話を切り替えた。何のことだか分からなくて首を傾げる。



「おや、ウィリアムは伝えてなかったか?アデルの家庭教師は、この儂じゃよ」




「え」



その後、私の悲鳴が響いたのは語るまでもない。

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