44.入学式
お待たせしました!
2章開始です!
「ーー見て、ジャン!もう伯爵家があんなに小さく見えるよ!あ、母様!父様!ハンナー!」
「はいはい、そうですね。……っと、あんまり身を乗り出すと危ないですよ」
ーー私とジャンは、伯爵家に現れた迎えの馬車に乗って、魔法学園を目指していた。
馬車の先頭で優雅に空を駆けているのは、淡い輝きを放つ二頭のペガサス。
彼らは私たちを、魔法学園のある空の孤島へと導いてくれている。
「ごめんごめん。でも、空飛ぶ馬車だよ!?ワクワクしない!?」
「いや、別に」
相変わらずクールな従者……いや、元従者である。
ジャンも私と揃いの制服に身を包んでおり、長い脚を組んで涼しげに腰掛ける姿は異様に様になっていた。ファンが見たら謎の神々しさに卒倒しそう。
「ど、どうしよう、急にドキドキしてきた……! クラスのみんなと仲良くなれるかな!?」
「……例えなれなくても問題ないのでは」
「あるよ!?」
(……ジャンってば、さては『俺が居るから良いじゃないですか』なんて考えてーー)
「まあそうですね」
「わ、私の心の声と会話しないで!!」
それから暫くは、これから始まる学園生活について語り合った。
そして。
「ーーあ、見えてきましたね」
「!」
ジャンに促され、馬車の窓枠に手をかける。
「わあ……!」
雲の切れ間から覗いたのは、空を浮遊する巨大な孤島。
その中心部には、かつて見た王宮を思わせる古城ーー魔法学園の校舎が見えた。
周りには、校舎を取り囲むようにして民家や店が立ち並んでいて……。
(……いよいよ、メインストーリーが始まるんだ)
私は逸る鼓動を落ち着かせるかのように、胸元のペンダントを強く掴んだ。
◇◇◇
入学式も無事終わったところで、私は大きなあくびをした。
「お嬢様……」
「はっ! ち、違うよ! いや何も違わないんだけど、ほら、ああいうありがたいお言葉って眠くなるじゃない……!?」
「まだ何も言ってませんけど。ほら、もう直ぐお嬢様の番ですよ。……おそらく、俺たちで最後ですね」
「あ、本当だ! 次が私だね!」
言いながら、慌てて『ゲート』に駆け寄る。
「じゃあ、お先に!」
特殊な魔法陣が描かれたゲートを潜れば、決められたクラスに自動的に向かうことができるのだ。魔法ってすごい。
(私は、ゲームの通りならきっとあのクラス……!)
ーーあっ、でも。
ジャンとはクラスが離れちゃうんだった……!!
振り返りざま、ジャンに向かって叫ぶ。
「ジャン! クリスやリステアード殿下と仲良くね! そのうち、第二の方にも行くからーー!!」
「お嬢様は俺の親か何かですか。……これ言うの何回目だと思っーーって、何で俺のクラスを知って……」
ジャンの言葉が途切れて、私の意識はふっと途絶えた。
「わっ!」
独特の浮遊感が続いた後、ぱちりと目を開ければ目の前にはゲームで何度も見た背景……もとい講義室があって。
(わ、わあああああ!! すごいすごい! 本物だ!!)
私が内心興奮の声をあげていると、前方から声がかかった。
「ーーああ、君で最後かな? 席は自由だから、好きなところに座ってね」
「!」
ーーこの、声は。顔は。
「私の隣空いてるわよ。座る?」
「あっ、うん! ありがとう」
私が、前世から大好きな人。
「初めまして、第一学年第四学級……通称、第四のみんな。僕の名前はオルフェウス・レンブラント。君達の担任だ。ーー3年間、どうぞよろしく」
ーーそして、世界を滅ぼさんとする、私の敵だ。
いつもお読みくださっているみなさま、本当にありがとうございます!
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ヒーローは割とクズですが、主人公がこれからどうにかするので温かい目で見守ってくださると嬉しいです!




