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16.水上演技

 光が、弾けた。


 次いで、息をつく間もなく、湖上に巨大な水の柱が何本も現れては消えていく。

 一体何が起こるのだろうかと、皆が期待に胸を膨らませた。



 ーーそして。

 次の瞬間。その光景に誰もが息を呑んだ。



 (これってもしかして……プロジェクションマッピング!?ど、どうやってるの!?)


 最後に残った水柱に、収穫祭の様子や訪れた人々の笑顔といった数々の映像が映し出されていくのを、皆が唖然とした表情で眺めた。

 そして、興奮した面持ちで喋り始める。


「あれ、うちの果樹園じゃないかい!?」

「見て、今映ってるの、私たちよ!」

「わあ、僕達も映ってる!」


 領民達は、領主の一族が自分達のことを気にかけてくれているのだと分かり、嬉しさに笑み溢れた。

 

 高度な魔法でありながら、民を愛するお祖父様らしく、温かみを感じる演出。

 見た人を、笑顔にさせる魔法だった。



「なんて、すごい……」

「流石は、カレンデュラの要……!ジークフリート様だ!」


 

 お祖父様のお辞儀から一拍遅れて、見入っていた人々から割れんばかりの拍手が起こる。


 (お祖父様の属性は光と水。2つの属性を持っているだけでもすごいことなのに、こんなに素敵な演出を思いつくなんて……!)

 

 

 私は改めて、お祖父様に尊敬の念を抱いたのだった。




 ◇◇◇



 ーー魔法使いは、魔法石を介して魔力を放出する。

 

 自身の魔力回路と魔法石を繋ぐ役割を持つのが、先ほどお祖父様が唱えたような呪文である。


 非属性型魔法であれば、定められた呪文を唱えることで、魔法石に魔力が蓄えられた後、その魔法固有の魔法式が円環状に描かれ、魔法として表れる。


 一方、属性型魔法の場合、非属性型魔法のように決まった呪文は存在せず、個人によって詠唱する呪文は異なる。そのため、描くことのできる魔法式も様々となり、表れてくる魔法も千差万別だ。


 呪文は、魔力が発現したその瞬間に心に浮かんだ言葉だと言われている。


 属性が同じ魔法使いでも、魔力量や描くことのできる魔法式によって、その強さは異なっていくのだ。

 

 因みに、お祖父様のように属性を2つ持つ場合、呪文自体はひとつであるため、戦う際にはどちらの属性の魔法か判断が難しく、有利となると聞いた。





「いやあ、すごかったっすね!魔法をあんな風に使うなんて思わなかったっす!流石はジークフリート様!」

「……素晴らしい魔法だった」


 魔法騎士団の2人は、お祖父様が去った後も、少年のようにキラキラとした瞳で感想を述べていた。

 ゲームでの2人からは想像できない姿だが、とても微笑ましい。


 

「わ、私、感動して涙が止まりません……!」

 一方ハンナは、そう言って滂沱の涙を流していた。横でジャンが少し引いている。

 

 そんな中、メイナードさんが、号泣しているハンナに無言で手巾を差し出した。


 (し、紳士だ……!)


 私達の中で1番イケメンなのは、もしかしたらメイナードさんなのかもしれない。




 ーーエキシビション後は、お祖父様の宣言通り、魔法騎士団の団員達がショーを盛り上げていく。

 浮遊魔法で水上を飛び交いながら、各々の属性型魔法や、迫力のある剣技が披露された。


 騎士に憧れる少年や、女性陣からの熱い歓声が鳴り止まない。私達も思わず前のめりになって観戦した。魔法騎士団の2人は、先輩達の勇姿を見て、自分達もいつかこのショーに出たいと宣言するようになっていた。


 


 ショーも後半戦に差し掛かったところで、ジャンがすっと立ち上がる。


「じゃあ、そろそろ出番なんで、行ってきます」


 緊張している素振りはないが、すたすたと去って行くジャンに思わず声をかけた。


「ーーがんばって!みんなで応援してるね!」


 ジャンの歩みが一度だけ止まる。


「ありがとうございます。先代様ほどすごいことはできませんが、まあ頑張りますよ」

 

 そう言ってひらひらと手を振りながら、また迷いなく歩き始めた。

 私達は、その背中に向かって応援の言葉をかけ続けたのだった。

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