表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/49

13.収穫祭初日

「はあ、ドキドキする……!」


「お嬢様ったら、初日から気に病んでも仕方ありませんよ〜。折角の収穫祭なんですから、楽しみましょう!」


 ーー収穫祭当日。私は自分の部屋……というより寝台の隅で、毛布を頭から被ってブルブルと震えていた。

 収穫祭が楽しみな気持ちは勿論あるのだが、どうしても緊張の方が勝ってしまう。

 見かねたハンナがよしよしと背中を撫でつつ慰めてくれているが、中々どうして気持ちは晴れてくれない。

 

 そんな私を見て、ジャンは呆れたように声をかけた。


「お嬢様。時間がないので、早く出てきてください。これから屋台を見に行く予定でしょう?」


 屋台、と聞いて思わず反応する。


 (行きたい、ものすごく行きたい……!)



 でもーーと悩む私を他所に、ジャンとハンナは何やら小言で話し合っている。




「……ではハンナさん、手筈の通りに」

「はいはい、了解しました〜っと!」



「えっ!?」


 いきなり、ハンナによって私がくるまっていた毛布が勢いよく引き剥がされた。

 その容赦のなさに驚いて固まっていると、ジャンに寝台からぺいっと投げ出され、ハンナの待つ鏡台の前に座らされる。


「へぶっ!ちょ、ちょっと待って⁉︎最近私の扱いが雑過ぎないかな!?」

「ハンナさん、後はよろしくお願いします」

 ジャンは私の苦言を無視し、スタスタと部屋から去っていった。

 


 ーーそして気づけば、私は鮮やかなミントグリーン色のドレスに着替えさせられていた。リボンや小物の紫色がアクセントになり、とても可愛らしい。

 ミルクティー色の髪は、リボンと一緒に一部が編み込まれ、ハーフアップになっている。


「わあ、かわいい……!」

 

 鏡の前でくるりと回る。その度にドレスの裾がふわりと舞った。


「ふっふっふ、今回は自信作です!敢えて最終日以外は紫色のドレスを着ない!これが私の考えた最強の収穫祭おしゃれというわけですよ……!」


 満足気に胸を張るハンナに、思わず「お〜」と拍手をした。


(ハンナのおかげで、少し緊張がほぐれてきたかも……!後でお礼を言わなきゃ。ジャンにも!)



 ーーめいいっぱい、収穫祭を楽しもう!



 因みにジャンからは、「白葡萄みたいですね」という言葉を貰った。ハンナがジャンに土属性魔法で泥をかけようとしたので、慌てて止めた。




◇◇◇




「わあ、すごい……!どこを見ても紫色だ!」


 3人で町に繰り出すと、既に大勢の人達で賑わっていた。

 町並みは勿論、葡萄色に飾り付けられている。


 家や屋台には、紫と黄緑色のガーランドや風船が飾られており、屋台の屋根は全て紫色だ。


 広場に向かうメインストリートは、色彩の魔法で淡い紫色に染められている。その道上では、動物の着ぐるみや音楽隊、ダンサーによるパレードが行進していた。


 まるでどこかのテーマパークに迷い込んだかのような光景に、何度訪れてもワクワクする。


 更に最終日の夜には、無数のランタンが空に浮かび上がり、幻想的な雰囲気になるのだ。


 



「まずはお昼ご飯にしましょうか〜。お嬢様、何か食べたい物はございます?」


 パレードがひと段落したところで、ハンナにそう尋ねられた。ハンナの手には、母様手作りのパンフレットが握られている。それをちらりと覗き見つつ、私は実際に見てから決めようかなと考える。


「うーん、取り敢えず色々見て回りたいかな!」


「分かりました。では行ってみましょう!」


 



 ーー私達は、屋台が並ぶサイドストリートへと向かった。

 早速、ワインや葡萄、その他美味しそうな軽食を取り扱っている屋台に近づこうとする。


 すると、少し歩いた所で声をかけられた。


「アデルお嬢様!今年の舞い手に選ばれたとお聞きしました!おめでとうございます!」


 そう言って、ハートの形をした薄紫色の風船を渡される。可愛らしいうさぎの着ぐるみに突然声をかけられ、少しだけ驚いたものの、何とか伯爵令嬢らしく微笑み、お礼を言った。



 (着ぐるみって、喋るんだ……)



 ……と思ったことは内緒である。



 ーーそして、その言葉を皮切りに、まさかの事態が起こる。



 あちこちから、「何だって!?」「アデルお嬢様が!?」「祝いじゃ、祝いじゃー!!」と声がしたかと思うと、気のいい領民達が、我先にと屋台の品々を差し出し始めたのだ。


「ふふふ、お嬢様ってば人気者ですね〜」

「お嬢様は、勉強の息抜きにと、屋敷を抜け出しては頻繁に領地で遊んでいますからね。みなさんから孫のように可愛がられているんでしょう」


 後ろでハンナ達が何故か満足げに頷いているが、助けて欲しい。


「あ、ありがとう、みんな!でも、こんなに食べきれないかな……!?」


 やんわりと断ってみたのだが、「とにかく持って行け」と押し切られ、私は大量の食品を手に抱えることになったのだった。

いつもお読み頂いている皆様、ありがとうございます!


評価やブックマーク、いいねなどもして頂き、とても嬉しく思っております!おかげで、更新頻度が当初の予定よりも格段にスピードアップしております!!皆様の応援がエネルギーです╰(*´︶`*)╯♡


これからもどうぞよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ