0.プロローグ
初投稿です!よろしくお願いします!!
※流血描写が僅かながらありますのでご注意ください。
ぽつぽつと雨粒が頬を濡らす。
降り出した雨はやがて勢いを増し、『私』の頬にこびりついた血を洗い流していった。
その感覚をきっかけに、朧げだった意識がはっきりしていく。
「雨が降るのは初めてかな……」
崩れた柱にもたれていた『私』は、体を起こそうとして激痛に顔を顰める。ズキズキと痛む腹部に視線を向けると、聖女が纏う純白の布地の大部分に、赤いシミが滲んでいた。
『私』の命は、もう長くないのだろう。
辺りを見渡せば、草木は枯れ、人間の骸が積み重なっている。『私』が何度も見た戦場の記憶と相違ない。
何でだろう。
どうして、『彼』を、この世界を救えないのだろう。
幾度考えても答えは出ない。何度も何度も、その時最善だと思う選択をし続けるしかない。そう信じて頑張ってきた。
(……悔やんでも仕方ない。頭を切り替えないと)
「またやり直して……、いや、駄目だ。きっとまた、同じことの繰り返しになる」
では、どうすれば良いのだろう。
分からなくて、迷子の幼子のように泣きたくなった。
ーーその時だった。
「っ!!」
思案する『私』を嘲笑うように、遠方から強い魔力の塊が向かってくる。
『彼』だ。
いつものように『私』を殺しに来たのだろう。
……今回は、あまり時間がない。
『彼』に殺される前に、やるべきことをしなければと、痛みを我慢し、震える足で立ち上がる。
何度繰り返しても、『彼』に『私』の言葉は届かない。『私』では、『彼』を救えないのかもしれない。
……でも。それでも。
「……絶対に、諦めない」
『私』は、胸元のペンダントを強く掴んだ。虹色の魔法石が、『私』の魔力で淡い輝きを放つ。
「次は、もっと前に『戻ろう』かな。その分魔力は消費するけど、しょうがない。うん。もういっそ、入学前の幼い頃に戻って……」
今までの人生が、走馬灯のように蘇る。振り返ってみれば、様々な職業に就いたものだ。
聖女、騎士、商人、薬師、そして……。
いつものように『戻ろう』として、ふと、奇妙な感覚を覚えた。『私』が戻ろうとした幼少期の更に前に、不思議な『道』が続いている。
「……!」
(これ、は……!)
そして『私』は、天啓を得たように閃いた。
◇◇◇
やがて、『彼』が『私』の元に辿り着く。
その頃には、魔法石から溢れ出た魔力によって、『私』を守護する光の柱が天高くそびえ立っていた。
『彼』は、『私』がこれからしようとしていることを察したのだろう。思わずといったように手を伸ばしたが、『彼』の指先が光の柱に触れた瞬間、その部分は火傷のように爛れてしまった。
『彼』が叫ぶ。どういうつもりだと。
今更足掻いても無駄なのにと。
『私』はそれを笑顔で振り切って、こう返した。
「大好き。愛してる」
目を見開いた『彼』に、あれ、もしかして言ったことがなかったかな、なんて思った後。
『私』の意識は、深い闇の中へと落ちていった。
初めての投稿でドキドキしています…!!
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