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陸軍と海軍のよもやま話  作者: earl gray
4/6

谷崎上等兵

 佐倉連隊の大きな門をくぐると、これから暮らすことになる部屋へと案内された。

 粗末なパイプベッドの上に軍服2着とシャツが2枚、きれいにたたんであった。

「官給品なので粗末にはしないように。洗った後はきちんとたたんでタンスにしまっておくことだな」

 教育係の丹羽が淡々と教えてくれた。

「愼治さん、来たんですね」

 安達少年、今は一等兵に昇格したらしいが、別れを惜しんだ時よりも凛々しくなっていた。

「安達君か、見違えたよ」

「愼治さん、古株の兵隊がいるんですよ。そいつから目を付けられないようにしなくてはいけません」

 安達の心配はよそに、兵舎の生活は合宿のようなもので、イジメにさえあわなければ過ごしやすいものだった。

 服はきちんと畳まなければならないまでも、シワをつくりさえしなければ怒られなかった。

 風呂は先輩から順に入る。

 炊事は当番で、アルミ製の器に入れて食べる。

 愼治はこうして、半年ほど何事もなく過ごすことができた。

 

 ある夜、ふと目を覚ました。

 夜中だというのに怒号が聞こえてきたからだ。

「もういっぺんいってみろ、名前なんだっけなあ」

「はっ、鈴木であります」

「鈴木かあ、このやろう。俺はここに6年はいるんだよお、大先輩だ。その先輩に向かって」

 つかみかかって殴ろうとしたとき、背後から腕をつかんだものがあった。

「やめないか、島村一等兵。この兵舎でのもめごとは一切禁止にされてるんだぞ」

 腕をつかんだのは上等兵の谷崎だった。

「は、あの、もうしわけございません、へっへっへ……」

 島村一等兵は引き下がり、頭をかいた。

 騒ぎが落ち着いたころ、愼治は不思議に思ったことを谷崎上等兵に尋ねた。

「あの人、6年も一等兵でいるということですか」

「うんまあ、そういうことになるんだが。あいつは訓練にもまともに出て来やしない。いつも仮病を使ってるらしいんだ」

「えっ、そのようなことがまかり通るんですか」

「本来はないよ」 

 谷崎上等兵は苦笑しながら言った。

「でもまあ、気持ちはわかるんだ。島村の家族は満州にいてね。開拓団をやってるらしい。生死がわからないこともあって、不安なんだろう、その苛立ちがあれさ」

 愼治は、はあ、そうですか、とつぶやくようにして言った。

「お前も気をつけろ。あいつは一度目をつけると、蛇よりきついぜ」

 愼治は谷崎上等兵の言葉にうっ、と息をつまらせた。

 安達にも言われた、そんなにあの一等兵はやばいのか。

 愼治は、嫌な予感がぬぐえなかった。

 

 そして、朝日が昇り、朝食の準備を始める。




兵隊さんの生活です。

最初は二等兵で入営して、お部屋にはこわい番人がいるんです。

それが島村一等兵のようなオジサンだったりします。

みんなを統括してるのが、上等兵。でもめったに現れません。

教育係の将校が見張るんですが、それはまたのちほど。

じつは戦争とかでなく、各地に設置されてた兵舎の生活を描写してみたかった。

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