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陸軍と海軍のよもやま話  作者: earl gray
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事変の夜

 昭和12年、㋆のことだ。

 ある男が新聞の記事のガリ版を刷っていた。

 その記事は号外だった。


 満州に盧溝橋があって、そこが爆破されたらしいのだ。

 田舎では高校まで進めば、誰でもエリートと呼ばれるようになる。

 高校生たちは、士官学校から派遣される将校から、ベビーナンブ(学生たちに使いやすく改良された)と呼ばれる拳銃を渡された。


 今年の2月に将校たちが反乱を起こした。いわゆる二・二六事件のことだ。

 そのきっかけというのが、なにより切なく、なにより儚い。

「姉さんが身を売らねばならない。ぼくのうちは貧しくて、次は妹が売られてしまう」

 若い将校は、沈黙を守りながら、少年兵の言葉に耳を傾けた。

 

 今夜、決起する。


 ひそやかに伝令が回った。

 だが、詳細は、安藤大尉、栗原中尉など、上のものしか知りえぬ情報で農民出身の少年たちは、ただの「出征せよ」の一言しか聞かなかった。

「何の命令だろう」

 不可思議な命令だった。

 しかも、陸軍閣下だけでなく、海軍の兵士もかなりいた。

「はて、なんで海軍だろう」

 その場にいた者たちは、互いに顔を見合わせた。

 そして、官邸に押し入った将校は、岡田啓介首相をはじめとする内閣の要人たちを次々襲撃した。

 

 かつて、海軍の将校が犬養邸に押し入った際、話せばわかると諭されたが、結果として暗殺されてしまった。

 五一五事件と比較すると、今回のほうがはるかに人数が多かった。

 栗原中尉の電話での会話も録音されていた。


「今からですね、突撃します」


 といったような話だったが、話を整理すると、犬養は満州に不満を抱いていたため殺され、二・二六では農民から後継者を奪うような卑劣な行為をやめさせるために行ったとされている。

 

 

 男は、ガリ版を擦りながら、爆撃機の音に神経をすり減らしていた。


 いずれにしても五一五以降は軍人の世となり、二・二六のころになると、軍国主義が拡張された。

 もしも、この陸軍の反乱が成功していたとしたら、戦争はなくなり、陸軍たちはヒトラーの言うなりにならなかっただろうか。

 否、なくならないまでも、第二次大戦までは事が進まなかったかもしれない。


 つづく。

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