【第4話】虐めの主犯格
僕は、ある友達の言っていることで矛盾している部分を見つけてしまった。
悠から聞いたことで、辻褄が合わない部分があることに気がついたのだ。
悠から聞いたことの一部を説明すると、まずその虐めっ子たちには ”命令指示役“ という人が虐めっ子の中に一人いたらしく、その人が他の二人の虐めっ子に、
「麗菜にこういう命令をしろ」と命令されて二人は虐めをしていたということを聞いた。
だが悠は、「まだ主犯格はよくわからない」と言っていたのだ。この悠の言っていたことから推測すると、これはこの
”命令指示役“ のある一人がほぼ確実に主犯格だろうと思ったのだが、もし僕のこの推測が当たっているならば、なぜ悠はこんな嘘をついたのだろうか?
あともう一つ、矛盾している部分を見つけた。
これは一翔から聞いたことだ。
一翔は、「虐めていた人たちは主犯格含め四人だと聞いた」と言っていた。だが、悠から聞いたこと矛盾している。
悠は、「虐めっ子は主犯格含め三人」だと言い切っていた。
「…ま、まさか…ね」
僕は、まさかのことを考えてしまった。
まだ、そうだと決まったわけじゃないし、何もそうだと証明する証拠はないのだけれど。
こんなこと予想もしていなかったけれど、今はそうとしか考えられないのだ。
もしかして、虐めの主犯格は悠なのではないかということだ。
でも、そうとしか考えられないのだ。
僕もこんなこと考えたくないのだけれど。
だけどもし仮に、本当に主犯格が悠なのだとしたらなぜ悠はこんなことをしたのだろうか?なぜ何も関係のない麗菜を虐めようとしたのだろう?どんな意図があって麗菜を虐めたのだろう?
僕がそんなことを考えながら自分の席に座っていた時だった。
「どうした?なんか伶斗、顔色悪いよ。なんかあった?」
「…え?あぁ…ちょっとね…。」
「俺でよかったら、話聞くけど…」
なぜこんな時に限って悠が話しかけてくるのか。
僕は驚きながら彼に応答した。
これは、悠に問い詰めた方がいいのだろうか?だけど、問い詰めるならば勇気が必要だ。
でも、しっかり問い詰めないと真実はいつまでも経ってもわからないということに気がついた。
だから僕は勇気を出して彼に問い詰めた。
「…うん、あのさ、この前悠に訊いた虐めのことなんだけどさ…」
悠の顔色が曇っていくことに気がついた。
「…うん」
「なんか他の友達から聞いたことと悠の言っていたこととの辻褄が合わなくてさ」
「…ほう」
「僕、他のクラスの友達にも同じこと訊いたんだけど、その友達は主犯格含め虐めっ子は四人だって聞いたって言ってたんだ。でも悠は虐めっ子は主犯格含め三人って言ってたからさ。あと、その虐めっ子の中に一人 “命令指示役” がいたんだろう?そしたらその役の人が主犯格だっていうことはほぼ確定だと思ったんだけど、悠は主犯格はまだわからないって言ってたから、なんだかちょっとおかしいなって思ってさ……。」
「……」
「…悠?」
「…伶斗ごめん!!…本当にごめん!!俺が河田さんの虐めの加害者で、主犯格だ!本当にごめんなさい!!」
「……そうだったんだ。…でも、なぜそんなことを?」
「…実は…俺は、河田さんのことが好きだったんだ…。だけど前、伶斗と河田さんが体育館裏でキスしてるのこっそり見ちゃって……それで、一緒に帰ってるのも見かけた時があって、付き合ってるんだって悟ったんだ。だから俺は、伶斗に嫉妬してたんだ。」
「…へぇ……でも、普通好きならそんなことしないよな。なんで麗菜のことを虐めたりなんてしたの?」
「…独り占めしたかったんだ。伶斗が河田さんの彼氏だと思いたくなかった。本当にごめんなさい、今本当に後悔してるんだ。」
「…なるほど……言っておくが、正直僕は悠のしたことを謝ったところで許すつもりはない。あとこのことは親と先生に報告させてもらう。」
「…わかった。」