【第3話】虐めの真相に迫る
「……ってことがあってさ、この教室でいろんなクラスの名簿漁ってたんだけど、“さいとう”が二人いて厄介なんだよな…」
「なるほど…そういうことだったのか。でも俺、その斉藤明凛と斎藤真梨って人知ってるよ、二人とも去年同じクラスだったからさ。」
「マジか!!何かそいつらのことについて知ってる?何かあったら教えてほしいんだけど…」
「んー…そうだな…俺が覚えてるのは、その二人はめっちゃ頭がいいってことだな。いつも定期テストの順位は二人とも学生で十位以内だったよ。」
「マジか、そうなんだ…そんなに頭がいい奴が虐めとかするんだな。」
「頭がいいやつほど陰湿な虐めするっていうしな。でもまだ、そいつらが麗菜ちゃんを虐めてたって決まったわけじゃないんだろ?」
「そうなんだよなー…どうにかしてそいつらが虐めっ子だったっていうことを証明したいけど、でもまだ可能性が高いってだけでよくわからないんだよな…」
「だな…何かいい手がかりが見つかるといいけど…俺からもいろんな人に訊いてみるよ。」
「さすが大樹…!いろいろありがとな…!」
それから僕はクラスの友達にいろいろ訊き出した。
特に、情報通の悠にはたくさんいろんなことを教えてもらった。
僕が新聞部なのを口実にしていろいろな人から情報を教えてもらっていた。しかし、このことを実際に新聞にするつもりはない。こんな個人情報、普通に考えて載せちゃ駄目だろう。適当すぎる口実だ。
「なぁ悠、この前亡くなった二組の河田麗菜のことについて何か知ってる?ちょっと新聞部で今インタビュー中なんだよね。だから今いろんな人から情報収集してるんだけど…悠なら情報通だから何か知ってるかなって思ってさ。」
「…あぁー…この前亡くなった河田さんのことなら俺たくさん知ってるよ。なんかね、その受けていた虐めの内容ははとてもとても残酷なもので、万引きをさせられたり、自殺の練習をさせられたりしていたらしい。中でもその自殺の練習っていうのは、十秒間首を吊るだとか、両腕両脚ににリストカットをするように要求したり、他にも壮絶なものがたくさんあって、これらを先生や親など誰かに言ったりしたら警察や先生に麗菜が万引きをしたことを言うと脅しをかけていたらしい。他にもあんなことや……をしていて………(以下略)」
「…そうなんだ、あまりにもひどすぎて言葉が出ない…。情報ありがとな、悠。」
「おう。」
とまぁ、ほとんど悠から教えてもらった情報なのだがこの虐めのことについては大体わかった。
しかし、悠の言うとおり虐めの内容はとても壮絶な内容で、思わず目を瞑りたくなるほどのものだった。
この虐めのことを誰か一人にでも言ったり、告げ口をしたりしたら、万引きをしたことを警察や先生に言うと強く口止めされていたようだ。麗菜が僕にもその虐めのことを言ってくれなかったのはショックだが、それほど彼女らの存在が怖かったのだろう。そして麗菜は、気持ちをあまり表に出さないタイプだから、余計に気がつけなかったのだろうなと思う。
だけど、だとしても彼女の異変には早く気がつけるのが男前だろうなと思い、情けない気持ちになった。
そして肝心の虐めの主犯格なのだが、このことは悠に訊いても「まだよく分からない」なのだそうだ。まだ主犯格がどちらなのかは判明していないのだそう。
そこ、一番大切な部分だろと思ったが、情報通の悠でもわからないのなら仕方がない。他の人にも訊いてみることにした。
この虐めっ子のことについて何か知っているのかはよくわからないが情報収集のため、次は後ろの席の大河に尋ねてみた。
「なぁ大河、今この前亡くなった二組の河田麗菜のことについて何か知ってる?今、ちょっと僕の新聞部でインタビュー中なんだよね。だから今いろんな人から情報収集してるんだけどさ…。」
「あー…なんかこの前、亡くなった人がいるって言って学年集会が開かれたやつか。んー…俺そのことについては詳しくは知らないんだけど、なんかその亡くなった人は虐めが原因で自殺しちゃったっていうことを噂で聞いて、これも噂なんだけど、今その亡くなった人を虐めていた人たちは学校に何週間も来ていないっていうことを聞いたよ。」
「…なるほどね、情報ありがと。」
大河によると、現在虐めっ子は何週間も学校に来ていないとのことらしい。これは本当なのだろうか?
だが、さすがに虐めっ子も麗菜が自殺してしまったということを聞けば焦って学校に来なくなるというのもあるかもしれない。もしくは、その麗菜を虐めていたということが先生にバレて停学処分になっているとかそう言う場合も考えられる。
同じクラスの人は、悠以外あまり麗菜のことについて知っている人がいないかもしれないと思い、僕は二組の友達に訊いてみることにした。
昼休み、二組の前の廊下に立ち寄ると、去年一緒のクラスでよく話していた一翔と目が合い、話しかけてきた。
「あれ?伶斗じゃん、ヤッホー。」
「おう」
「なんかお前最近学校休んでた?話すのめっちゃ久々だし最近、姿を見かけなかったしさ。」
「まぁ、ちょっと家の都合でね。いろいろあって休んでたよ。」
「へー、でも伶斗去年、中学の時三年間ずっと皆勤賞だったって自慢げに言ってたの俺覚えてるよ。そんな伶斗が一ヶ月休むなんてちょっと変だなぁって思ったけど…元気なら何よりだよ。」
「まぁ、とにかくいろいろあったんだよ。それよりもさ、今新聞部でこの前亡くなった二組の河田麗菜のことについていろんな人から情報収集してるんだけど、一翔はそのことについて何か知ってる?」
「あー、あの人か。俺も最初めっちゃ驚いたよ。クラスメイトが亡くなるとか縁起悪いよな。そうだな…俺あんまり周りの人たちについて詳しくないからよくわからんけど、まだ河田さんが亡くなる前に時々、河田さんの机に菊の花の入った花瓶が置かれてあったところを見たことがあるよ。
だからそういうのもあって虐めが原因で自殺しちゃったっていう噂は聞いたなぁ…あと、虐めていた人たちは主犯格含め四人だっていうことも聞いたけど、悪魔で噂だからよくわからんな…。」
「四人…??そうか、情報ありがと。」
「これ本当に新聞にするの?なんかあんまり新聞に載せるには相応しくない内容のような気がするけど…」
「んー…まぁ結構大きな出来事だから新聞にしようかなって思ったんだよ。大丈夫大丈夫。」
一瞬、一翔に「新聞に載せるには相応しくない内容のような気がする」と勘づかれたのはビビったがなんとか乗り切り、また新たな情報を入手した。
虐めっ子が主犯格含め四人?一体どういうことだろう?
森下しずく、斉藤明凛、斎藤真梨の他に虐めっ子がいるということだろうか?
まずこの“さいとう”二人もどちらが虐めっ子の一人なのかはっきりしないのだが、主犯格含め虐めっ子が四人ということは、この二人は両方グルということだろうか?
そしてもしその二人がグルで、虐めっ子が四人ならばこの三人以外にも虐めっ子がいるのだろうか?
なんだかはっきりとわからなくてもどかしい気持ちになる。
もっといろいろな人に情報収集をして犯人を特定しなくては…と思いまた、僕は廊下で出会う友達やクラスメイトから情報収集を続けていった。
友達から聞いた麗奈のことについては全部メモを取って記録している。そしてそのメモからどんなことが読み取れるのかを考えている。
(うーん…なんかみんな言ってることが同じなんだよな…。)
(情報通に訊くか?でも僕の周りにいる情報通って言ったら悠ぐらいしかいないんだよなぁ…あぁどうしよう…)
(ん……??待って、なんかここちょっとおかしくない?)
僕はあることに気がついてしまった。