【第2話】彼女の遺書に書いてある謎の暗号
これは……もしかして……
モールス信号というものだろうか?
前に少しだけ見たことがあった。この点と伸ばし棒みたいな記号をいくつか使って、一文字を表すというモールス信号。
モールス信号は音で表すことが多いから、そのイメージが強くて記号だけでは一瞬よくわからなかったが、理解した。
でも、このモールス信号の解読はまだできていない。
だから僕はモールス信号を調べて、この暗号を解読してみることにした。
そして三十分かけて、僕はこのモールス信号を解読することができた。
「ー・・ー・ ーー・ ーー・ー・ ー・ー」は、
「もりした」で、
「ー・ーーー ・・ーー ー・・ー・ ・・ー・・」は、
「えのもと」。そして
「ー・ー・ー ・ー ・・ー・・ ・・ー」は、
「さいとう」だった。
これは、誰かの苗字だ。でも僕にはさっぱり誰だかわからない。もしかして、麗菜のことを虐めていた奴らの名前…?
そんな考えが頭をよぎる。
でも遺書に書くというのなら…虐めていた奴らの名前であること以外考えられなかった。
麗菜を虐めていた奴らを特定できるかもしれないと思った。
というか、これが本当に虐めていた奴らの名前なのだとしたら、もうほぼ特定できているようなものだ。
僕は麗菜を虐めていた奴らを特定するために、次の日、久しぶりに学校へ行くことにした。
*
久々に外へ出ると、冷たい北風が僕の体に当たった。
「…寒いな」
この一ヶ月、一歩も外に出ていなかった。
その間に秋が深まったようで、外がとても寒く感じられた。
もうすぐ十一月も終わりだ。今になってそんなことを思い出した。
僕は長い間、家に引き篭もっていたということを今になって改めて実感した。
だけど、いつまでもこのことを引きずって、落ち込んでいては駄目だ。必ず麗菜を虐めていた奴らを特定して、地獄のどん底まで突き堕としてやる。
まず僕は学校に着くと、学校の教材などが置いてある空き教室に向かった。
なぜなら、その教室に全クラスの名簿が置いてあるからだ。
麗菜は二組だから、二年二組の名簿を探した。
そしてすぐに見つけたので、それをこっそり一枚取り名簿を見た。
まず最初に「えのもと」を探す。
すると『榎本菜月』という名前を見つけた。筆箱を取り出して黄色い蛍光ペンでマークをする。
次は「さいとう」を探す。だが、二年二組の名簿をいくら見ても、「さいとう」という苗字の人はいなかった。
(他のクラスか…?)
そう思い、二年生の名簿を全て漁り、見てみる。
だが僕のクラスに「さいとう」はいない。そしてしばらく探しているうちに「さいとう」を二人見つけた。
『斉藤明凛』と『斎藤真梨』。
二人とも女子だが、どちらが麗菜を虐めていた奴なのかはよくわからなかった。とりあえず二人とも蛍光ペンでマークしておいた。
あと一人は「もりした」だ。
こいつ、『森下しずく』はさっき二組の名簿を見た時に、名前が書いてあるのは見つけたのでもう既にマーク済みだ。
一応これで全員マークできたけれど、「さいとう」が二人いるのが厄介なところだ。どうにかできないものだろうか?
そんなことを考えていると、後ろから声がした。
「あれ…?伶斗じゃん!お前やっと来たんだな!!」
「…おう、まぁ…色々あってさ…でもそろそろ行かないといけないなって思ったんだよ。」
「あー、なんか学年で亡くなった人がいるとか聞いて、学年集会が開かれて色々話されたよ。まさか麗菜ちゃんが亡くなるとは……そりゃ伶斗も落ち込むよなー…。」
「うん…すごい悲しかったよ。」
「でも伶斗、学校来たんだな!俺ずっとお前が学校来るの待ってたよ!…ところで伶斗はなんでこの教室にいたの?」
「んー…ちょっと色々。話すと長くなる。」
「なんだよー、気になるじゃん。」
話しかけてきたのは、中学からの親友の大樹。
こいつにだけは、麗菜が好きだとか付き合ったとかそういう報告をしていた。
麗菜が亡くなってから、次の日の月曜日に学年集会が開かれたらしく、その日に大樹から電話が来た。
「もしもし、伶斗大丈夫?!生きてる?!?!」
「……う、うん(泣)」
「麗菜ちゃんが亡くなったって学年集会開かれて話されてさ、え?!マジで?!って思って伶斗に電話しなきゃって思ったんだ。まさか自分の彼女が死ぬとかあり得ないよな…俺そんなことあったら一生立ち直れないよ……」
「……うん…僕も、もう一生立ち直れないかも…。」
「そんなこと言うなよ、まぁお前の気持ちも痛いほどわかるけどさ……だけど俺が伶斗を慰めるから!俺はずっと伶斗の味方だから!!学校来れそう…?来れないなら無理しないほうがいいと思う。」
「うん……ちょっとしばらくは、学校に行く気になれないかな…だけどいつかは行くつもりだよ。」
「そっか……まぁ悲しいもんな…俺はずっとお前の味方だからな、何かあったら言えよ。」
「うん、何かあったら言うよ。なんかごめん、大樹に心配かけちゃったみたいで…。」
「大丈夫だよ、伶斗の不幸は俺の不幸で伶斗の幸せは俺の幸せだから。」
「…うぅぅう〜〜(泣)あ”り“がどぉーーおおおお(泣)」
「泣くな泣くな、なんか俺まで泣けてきちゃうやん…グスッ」
心強い親友がいて僕は救われた。
遺書に書いてあったモールス信号の名前が気になったのもそうだが、大樹がたくさん慰めてくれたお陰で学校に行く気になれたというのもある。本当に大樹には感謝している。
ところで今は、『“さいとう”が二人いる問題』が重大だ。
これはどうしたら特定できるのだろうか?虐めの主犯格ですらまだ特定できていない。
まずは主犯格を特定することから始めたい。だが虐めっ子はみんなクラスが違う奴らだ。まず、周りの友達に訊いてみたりしたら何か手掛かりが掴めるかもしれないと思った。
だから、これからいろいろな友達に訊いてみて手掛かりを掴もうと思う。
僕は、絶対に麗菜を虐めていた奴らを特定して地獄のどん底まで突き堕としたいと思っているから。