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【第1話】彼女の死


僕には、付き合い始めてもうすぐ三年経つ世界一かわいい彼女、麗菜(れな)がいた。

ーーそう、「いた」は過去形。


なぜ過去形なのか?

その理由は…

彼女は、一ヶ月前に自ら命を絶ったから。


一ヶ月前の休日、僕が寝ていた時のことだった。

母が、僕の部屋に慌てて入ってきたのだ。


伶斗(れいと)、大変よ!!」

「……ん、急になんだよ母さん」

「…麗菜ちゃんが、亡くなったって…!!」

「…へ?なんの冗談だよ」


「冗談じゃないわよ!冗談だと言いたいけど…」

「え……今、麗菜はどこにいるの…?」

「市立病院だって!今すぐ行くわよ!!」

「…わ、わかった」


僕は頭の中がパニックになる。

麗菜が、死んだ…?

これはもしかして夢なのか…?

そう思い、頬を(つね)る。だけど痛かった。

つまり、現実だ。


寝癖も直さず、適当に私服を選び大急ぎで着替えて、車に乗り母と一緒に市立病院へ向かった。


夢であればと何度も願った。

試しに麗菜にラインをしてみる。


〈麗菜、本当に死んじゃったの?〉


そう送った。

だけどそのメッセージは、未だに既読がついていない。


『麗菜が死んだ』という事実が受け止められなくて、僕は暫く放心状態だった。



             *



病院に着き、放心状態のままエレベーターに乗って病室へ向かう。

そういえば、まだ麗菜の死因を知らなかった。

それをそっと母に質問する。


「…麗菜の、死因って何なの?」

「あー……自殺しちゃったんだって…今日の朝七時くらいに、自分の部屋で首を吊っているところが見つかって…。」

「え……そ、そうなんだ。でもどうしてそんなことを……?」


「うーん……それははっきりしてないけど、遺書が書いてあったらしくて、

『私が死んでいろんな人に迷惑をかけるかもしれません。だけどもうあの酷い虐めには耐えられないと判断しました、だから私は死にます。今までありがとうございました。ごめんなさい。』って書いてあったらしいの……。遺書に書いてあったことからして、多分虐めが原因で自殺しちゃったって考えられるけど……こんな形で死んじゃうなんて本当に可哀想すぎて、涙が止まらないわ…(泣)」


「…え、そそ、そうなんだ。…虐められてたの?初耳だな…」


どうやら、麗菜の死因は虐められていたことが原因らしい。

だけど今まで麗菜と話していて、そんなにつらそうな表情をしていることはなかった。普通に前と変わらないし、違和感がなかった。だけど徐々にこの虐めが原因で、麗菜の心が(むしば)まれ、麗菜を自殺に追い込んでしまったと考えられる。


どうして僕はその違和感に気づけなかったのだろう。

それが悔しくて悔しくて堪らなかった。一体今までどれだけつらい思いをしていたのだろう。

もしも僕が気がつけていたら、今頃麗菜は生きていたかもしれないのに。

これは僕のせいでもある。毎日一緒に帰っていたのに異変に気づけなかっただなんて、麗菜の彼氏失格だ。


「ごめんね、麗菜」


そんなことを考えている内に、麗菜がいるという病室に着いた。カーテンを開けると、ベッドで麗菜が青白い状態で横になっていた。

顔色からしてもう本当に逝ってしまったのだろうなということが感じられた。僕は我慢できずに涙が溢れた。

今までの麗菜との思い出がフラッシュバックされる。


僕と麗菜は、幼少期からの仲で、幼馴染だ。

家が隣で物心ついた頃にはよく麗菜と遊んでいた。

小学校も同じで、クラスも六年間一緒だった。

僕が麗菜への恋心が芽生え始めたのは、確か中一の時だ。

僕は勉強が苦手で、特に英語が壊滅的だった。だけど麗菜は頭がよく、定期テスト前などに麗菜がよく僕の家に来て、勉強を教えてもらっていたのだ。


「だから、”buy”の過去形は”bought“でしょ〜!何回言ったらわかるのよーー」

「いやいや、不規則動詞は覚えられないよ。だって過去形が不規則に変わるんだもん。逆になんで覚えられんの?謎だよ。」

「普通に覚えるでしょ、何回も書いたりして。てか伶斗はただ覚える気がないだけだよ!もっと意欲を持てば英語も得意になるはずだよー」

「覚える気になれたら苦労しないって(T ^ T)」


こんな感じで定期テスト前は、毎日のように家に来てもらって勉強を教えてもらっていた。その時からだろうか。

僕は今まで意識してなかった麗菜のことを妙に意識するようになってしまったのだ。


女子が僕の部屋に…?しかも、顔近いって…!

やば…なんか麗菜からいい匂いするんだけど…。


そんなことをよく考えていた。

僕の初恋は麗菜だった。


そして中二のクリスマスの時、告白してきたのは麗菜の方からだった。


「あっあのさ…私…実は伶斗が好きなんだ。よかったら私と付き合ってほしい…なんちゃって。」

「へ…?!俺もなんだけど…。いいよ、付き合おう…!」

「マジで?!じゃ、じゃあこれからよろしく…!」

「うん!!」


両想いだと知った時の喜びは今でも忘れられない。

それからは、麗菜と毎日一緒に帰るようになった。

ファーストキスも、その先のことだって経験した。

それらが麗菜と経験できたことも僕は嬉しかった。

お互い幸せの絶頂って自信を持って言えるほど、毎日が充実していた……はずだった。


一ヶ月前、突如麗菜が自殺をしてしまった。

僕は麗菜を世界一愛していて、麗菜といることで自分を保っていられたのに…。

しかも自殺の原因が、虐められていたとか納得できなかった。

麗菜を虐めていたのは一体誰だ…?

高校に入ってからは、麗菜とはクラスが別だった。

だから麗菜のクラスにどんな人がいるのかはよく知らない。

だけどきっと、麗菜と同じクラスの性格の腐っている奴らが麗菜のことを虐めていたのだろう。

一体誰なのか、とても気になってはいるけど、僕は麗菜が亡くなってから全てのことににおいて無気力になってしまい、学校に行く気力もなかった。

だからもう一ヶ月は学校に行けていない。

行かなくてはいけないとわかってはいるけれど、指一本動かしたくない。もう何もしたくないと塞ぎ込んでいた。

麗菜が亡くなってからは毎日泣いていた。


僕は未だに『麗菜が死んだ』という事実を受け止められない。

僕も、麗菜が亡くなってから自殺を考えたりもした。だけどそれは、天国の麗菜からしても嬉しくないだろうなと思ったし、親やいろんな人に迷惑をかけるかもしれないと思ったからやめた。


(もしも僕が麗菜の異変に気付けていたら…)


そんなことをまた考えて、部屋に引き籠もって、麗菜が書いた遺書を眺めていた。綺麗に並んだ文字の束を。


「……あれ?」


僕は麗菜が書いた遺書を見ていて、あることに気がついた。

遺書の左下らへんに小さく、

「ー・・ー・ ーー・ ーー・ー・ ー・ー」

と書いてあり、また更に右下らへんに、

「ー・ーーー ・・ーー ー・・ー・ ・・ー・・」

と書いてあり、今度は左上に

「ー・ー・ー ・ー ・・ー・・ ・・ー」

と書いてあることに気がついた。


この変な暗号みたいなものは何なのだろう?

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