メタ発言は面白くないと許されない
「君には最強のメタチートを授けよう!」
いきなり真っ白の空間に飛ばされた少年、困惑していたところ、目の前の意味不明な老人にさらに困惑される事を言われ、事態は混沌を極めていた。
「あのー、ここどこですか?」
少年はこの奇怪な状態で、何かを授けられても喜べるほど能天気ではなかった。
「ここは世界の狭間。君はトラックに撥ねられ死んだ所を、儂が魂を引っ張り上げここへ連れてきたのじゃ!そして儂はこの世界に存在する神の人柱、メタ神じゃ!君は今から異世界へ旅立ち最強のチートであるメタの力を広めるのじゃ」
「いやそんないきなり異世界へ行けって言われても……」
至極当然の話である。
「ほら、君も日本で異世界転生小説読んでたじゃろ?そんなもんじゃよ」
「あ、僕そういう異世界転生のテンプレ場面を端折って説明するのは苦手なんで、最初から説明してもらえます?」
「なんとなくいた適当な少年をトラック轢き殺させて、こっち連れてきてのじゃ。もういいからさっさと話進めるぞ」
少年は唖然とした。さっきは助けてやった風に話していたのに、ぶっちゃけすぎである。
「ちょっと待ってください、まだ僕の名前を出てないのに話が進みすぎて!」
「ほう、さっそくチートを使いこなすとは、中々やるじゃないか。ちなみに君の名前はまだ筆者が決めていないから出ない」
そう、まだ考えていないので出せないのだ。
「あれ?メタチート授かったのは僕なのに、なんで神様も地の文もメタ発言してるんですか?」
「そう!それこそメタチートの真髄。このチートはチート保持者を超えて影響を及ぼす、最強のチート。まずはステータスオープンと呟き、自らのステータスと能力を確認するのじゃ」
異世界転生の醍醐味であるステータス表記。それが出来ると聞き少年は心を躍らせ……
「あ、僕空中にステータスが浮かび上がったり、体力や地力が数値で表されるのに怒りを感じるので、そういうのいいです」
なかった。
「え?せっかく方程式を作ってこの世界にプログラムしたのにいらないの?ステータスに翻訳スキルも入ってるのに?」
「もういいですよ、そういうスキルも。意味不明で頭空っぽしないと読めなくなるんでやめて下さい。言語くらいは自力で覚えるので」
「いや、それだと話進めるまでに時間かかっちゃうし、もう異世界人の言語は日本語に統一しておくよ……」
もうめちゃくちゃである。
「あー、助かります!」
それはいいのか少年。
「それでは異世界へ行ってもらう!君に行ってもらう世界の名前は「ちょっと待ってください」今度はなんじゃね。もう早く行ってほしいんじゃが」
テンポ良く進めたいメタ神に、少年は何度も突っ掛かりメタ神も次第に煩わしく思ってきた。しかしそんなメタ神を一切気にかけない太々しい少年を、同時に期待していた。
「まだこの先の展開を筆者が思いついてないんで、先に進めないんです!」
そう、まだ考えていないので進ませられないのである。
「流石にそのメタ発言はNG、こういう系のメタ発言面白いと思っているのかね?」
すみませんでした。
「しかし、考えていないのならしょうがない。少年、何か聞きたいことはあるかね?」
「なんか主人公って何かしらの信念があると思うんですけど、僕には何かあるんですか」
「あー、この後の展開で出てくると思うから安心しなさい、次」
安心してください、出てきます!
「次の話はどれくらいで更新されるのですか?」
「今感染症の流行で外に出れないから、執筆は早いと思うぞ」
「ダウト。感染症なくとも引きこもりだから、大して変わらないと僕は思うんですが」
「そうじゃな。面白そうなタイトル思いついたから、素人の俺が小説を書いて、読者から爆笑報告の感想をもらいながら自己顕示欲を満たそうとした哀れな小説なんじゃから、何も考えておらん」
「やっぱり、そうなんですか。さっきからメタの割合が増えてきて作者が賢者タイムのような感じになっていますし……」
これ本当に面白いのか?と身内ノリでしか大爆笑しないネタを勘違いして、世に放つような漠然とした恐怖を感じる筆者。
「話が進まないのもあれじゃし、今後の君の目標を説明するぞ」
「あれ、僕の目標はメタチートの力を広める事じゃないんですか?」
「今いいの思いついたから変えるのじゃ。この世界は、数ある世界の中でも弱小の方でな。ここで力を蓄えた後に、この世界より上を目指し、神としての格を上げるのを手伝って欲しいのじゃ。格があがり、神として上位の存在となった暁には、君にとって都合のいい世界を作る事を約束しよう」
それは、非常に魅力的な報酬だった。願えば可愛い幼馴染か出来、宝くじに当選し、永遠に生きられる。
「なるほど、やる気が出てきました。ではこのメタチートを使ってメタ神様の力になれるように頑張ります」
「いい心がけじゃ。一つ忠告をしてこう。誹謗中傷はダメじゃ」
「分かっています!誹謗中傷をする人はその人が人生に満足していない証拠、自らの格を下げる最も愚かな行為と言っても過言では無いのです!そんな格下の連中に遮られる事無く、自らの信念を貫きます!」
少年は自らの信念を掲げ、理想の世界を手に入れるために異世界へ行く事の決意を表明した。
そして、異世界は知らない。これから少年が異世界全てを呑み込むチート使いになる事を……
つづく
つづかない