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兄ちゃん奮闘記  作者: 白い犬
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5話

「はーるかっ!じゃん!!見ろよこれ、可愛くね?」


陽夏の意識が戻って3日。俺は学校帰りに購入した犬のぬいぐるみを陽夏に差し出した。三角の耳がたったている赤毛の犬。武人がたぶん柴犬だって言ってたな。陽夏がそれを受け取って優しく撫でている姿を見ていれば、2,500円分軽くなった財布は全く悲しくない。

もっといろいろ買ってやりたいな。俺の学校、バイト禁止だし、ヤクザの息子を雇ってくれるとこもねぇだろうな……。


陽夏が犬を抱きしめる。その姿を見てなんだか嬉しくなった。こういうのも、初めて貰ったんだろうな。俺もロボットとかもらった時、めちゃくちゃ嬉しかったし、やっぱりなんかしてやりたい。

じいちゃんに金を強請るのはしたくない。俺が陽夏にしてやりたい。




次の日、俺は手芸部に乗り込んだ。


「ぬいぐるみを作りたいの?」

「そーそー!昂明ちゃんは、可愛い小さな妹のために、人形をたくさんあげたいのよ!」


俺だけだと、なぜか話が伝わらなかったが、武人が全て補足してしまった。ついてくんなって言ったけど、結果的にはありがたい。


「邪魔にならないようにする。だから、俺に裁縫教えて、ください」

「……部長に聞いてみないとわかんないけど、私はいいと思うよ。なんなら、私が教えるし」

「ほんとか!?」

「私、昔から裁縫は得意だからね。人形くらい教えられるよ」

「ありがと!!」



その後、手芸部部長がやって来て無事に許可を得た。家庭科室の隅っこを借りて、指導者である同じ一年の篠宮に、人形作りを教わることになった。武人は目の前に座って見ているだけ。時々、篠宮(しのみや)に怒られる俺を笑っていた。


毎日放課後に2時間。部活が休みの日も、篠宮とついでに武人は俺の人形作りに協力してくれた。材料費は出すと言ったのに、部長が余っている生地やボタンをくれる。最初は変なものを見るような顔をしていた部員たちが、代わるがわる俺の手元を覗きに来る。


3週間かけて、家でもやっていたおかげか、俺の机には3体の人形が並んだ。どれもおなじ作りのものだが、左から順にどんどん出来が良くなっている。手のひらサイズのものだが、かなり大変だった。指は絆創膏だらけだ。


「お疲れ様、これで3つ完成だね。とりあえず目標は達成だよ」

「おう」


並んだ3つの人形。垂れ耳の犬のつもり。四足歩行にするのは難しくて人型になった。


「なんか、意外だったな」

「あ?なにが?」

「鳳くんって、ずっと喧嘩ばっかしてるイメージ」


よく言われる。だから、最初は他の部員にビビられてたんだもんな。


「昂明は、自分から喧嘩しに行ったことなんかないぜ。いっつも売られる側」

「かわなきゃいいのに」

「それもそうだな」


喧嘩をしたい訳じゃない。ただ、喧嘩を売ってくる奴らはだいたい組の話を持ち込む。俺にとって組は、じいちゃん達は宝物だ。それをバカにされたら、ムカつく。俺は組の力の欠片にもなれていないけど、組の力を見せつけてやりたくなる。



「その人形、妹さんにあげるんでしょ?ラッピングしてあげる」

「いいのか?」

「もちろん。ここまで頑張ったご褒美だよ」


手際よく薄桃色の箱に詰められリボンをかけられる。理想のプレゼントの形になった。


陽夏はもう退院して、家で待ってる。相変わらず俺にしか反応を見せてくれないが、これで陽夏の寂しさや苦しみを少しでも消してやりたい。



「篠宮、ほんとにサンキューな。お前のおかげだ」

「また作りたくなったら言ってよ。今度はもっとレベルの高いやつ、教えてあげるから」

「おう!」


箱を受け取り、手芸部にお礼を言ってから家庭科室を出る。陽夏、喜んでくれっかな。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなお兄ちゃんが欲しかった! [一言] わあ、新しいお話だー! 今回もヤクザものということで楽しみです。そして既に陽夏ちゃんの魅力に囚われつつあります…。 陽夏ちゃんにトラウマを植え付…
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