30話
「お前が拗ねる陽夏ちゃんを見て、面白がってたのと同じで、陽夏ちゃんもしょげるお前が面白いんだろ」
それって……それってつまり…………。
「陽夏のいたずらってことか!?」
「まぁそうなるわな」
「まじか!気が付かなかった!今日記念日にしねぇ!?」
「あー、やだやだぁ。シスコンは専門外ですー。のできりまーす」
「おう!ありがとな、武人」
そうか、陽夏のいたずらな。その発想はなかった。確かに、思い返してみれば、俺を無視する陽夏はちょっとにやけていた。いたずらをしようと思うまで、俺に心を許してくれたんだな。そう思うと、なんだか嬉しくなってくる。
普段は夕食の後にお菓子なんてダメだって言われてるけど、今日ぐらいいいよな。そう思って棚からお菓子を取りだした。今度陽夏と食べようと思っていたクッキーだ。陽夏の部屋に行くかと立ち上がると同時に、扉がノックされた。
「ん?どうぞー」
促す声と共に姿を見せたのは、いつしか俺があげた犬の人形で顔を隠した陽夏だった。
「は、陽夏ちゃんが、いじわるしてごめんねって言ってるよ!」
ぴこぴこと犬の手足を動かしながら声を出す陽夏。直接言うのが恥ずかしいんだろうな。先、こされちゃったな。立ち上がっていた場所に膝をつき、陽夏と同じ高さになる。
「陽夏ちゃん、昂明くんもごめんねだって!」
俺の部屋に人形なんてないから、手でキツネを作って、ぱくぱくと口を動かす。ちらりと俺のキツネを見た陽夏は目を輝かせながらも頬っぺは真っ赤だ。
「陽夏ちゃん、また昂明くんと遊んでくれる?」
「……陽夏ちゃんが、いいよって言ってるよ」
「ほんと?じゃあ昂明くんに教えてあげるね」
キツネの手を崩し、手を膝に置いた。
「陽夏、意地悪しちゃってごめんな。兄ちゃん、陽夏と話すのが楽しくてさ。許してくれるか?」
「……いいよ」
「ありがとう、陽夏は優しいな」
「陽夏も、嫌いっていってごめんなさい」
「ああ、いいよ。じゃあ仲直りだ。おいで、陽夏」
腕を広げて見せれば陽夏は人形ごと胸に飛び込んだ。
「お兄ちゃん、ぎゅーーってして」
「おうよ!」
可愛い可愛いお姫様からのご命令だ。精一杯答えてやらなきゃな。
「陽夏、これからもたくさん喧嘩して、たくさん仲直りして、もっともっと、思い出作ろうな」
悲しいこと、苦しいこと、楽しいこと、嬉しいこと、陽夏といれば半分だし、2倍になる。
いままでは理不尽なことばっかだったかもしれないけど、これからはたくさんの幸せを与えてやりたい。たくさん大好きだって伝えて、陽夏の笑顔をたくさん作りたい。
そのためなら、兄ちゃんはなんだとてやれる。
「兄ちゃん、頑張るからな」
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これにて、本編は終了です。最終話までお付き合い下さり、本当にありがとうございました。
(後日、番外編を配信します。お楽しみに)




