28話
あのおっさん、今日もいるな……。
受験勉強で陽夏に構ってやれなかった分、合格が決まってからはほとんど陽夏と遊んでいる。天気がいい日は必ずこの公園に来ていた。女の子1人に大人の男が何人も付き添うのは不審がられると思って、俺と組員一人を連れて遊ぶ。その組員の中でも、毎日のように公園のベンチに座り、こちらを見つめるあの男のことは情報共有されているんだろう。
今日の護衛役の組員も警戒したように、ちらりと視線を送った。特になにかしてくる訳でもないから、こちらから声をかけるのも躊躇われる。本当にただぼーっとしてるおっさんかもしれないしな。
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またいる。
後日、また公園に行った。今日は公園内に入るのは俺ひとり。もう1人はどっかから見張っている。おっさんを試すようで悪いが、明らかに陽夏に向ける視線が穏やかなものでは無い。いくら陽夏が可愛いからといって、まだ歳が2桁にもなっていない子に向けるものではない。けしからん奴め。
「陽夏、兄ちゃんちょっとトイレ行ってくるな」
「うん!いってらっしゃい」
陽夏のそばを離れ、トイレに行くふりをする。物陰からおっさんを見張ると、辺りを警戒しながら陽夏に近付いて行く様子が見えた。
「おいおい、待てよおっさん」
「は?」
おっさんの肩を掴み、なるべく愛想良く話しかけた。白いTシャツに小太りのシルエットがよく映える。帽子を目深く被る姿は、悪いが不審者のようにしか見えない。
「あの子に何する気だ?」
「な、何を言っているんだ!私はただ……」
「ただ?」
俺の威圧感に耐えきれないのか、おっさんは額に汗を滲ませる。
「言い淀むようなこと考えてたのかよ?」
「……っ」
ますます顔を蒼くするおっさん。やはり陽夏と俺が離れる機会を今かいまかと待っていたんだろう。話しかけるだけにしろ、他に下心があるにしろ、1人のときを狙っていた時点でアウトだ。
「もう顔見せねぇって言うなら、見逃してやるよ。あんまりしつけーと、流石に、な?」
おっさんは倒れるようにして公園から逃げ出した。これでご近所さんの不安も多少減るだろう。
「ただいま陽夏〜」
「あ!お兄ちゃん見て、山できたよ!」
「よっしゃ、じゃあトンネル掘るか」
まぁ一番は、陽夏の安全と幸せのためだけどよ。
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