17話
男は釣りに、篠宮と兵助は浅瀬で遊ぶ陽夏に付き合っていた。普段はあまり出かけないから、てっきりインドア派かと思っていたけど、あの姿を見ていると、陽夏は意外とアウトドアだったのかもな。いや、子供ってそんなもんか。
「ちょ、昂明!昂明!!引いてる引いてる!」
武人の声に動揺し、体勢を崩してしまう。足元にあった濡れた石に滑り、そのまま川に突っ込んだ。途端に響く武人と原田の心配する声、そして1番でかいのは兵助の笑い声。かかっていた魚はもちろん、武人たちの釣り針に集まっていた魚も逃げた。
「おにいちゃん、大丈夫?」
「おう……」
ちゃぷっと小さな音を立てて陽夏が隣へやって来た。川に腰を浸からせ、空を見上げた状態の俺は、陽夏に水をかけないように立ち上がり、軽くTシャツの水を絞った。
「あのね、凛ちゃんがタオルくれたよ」
「凛……?ああ、篠宮か。篠宮ー、サンキューな」
篠宮は川に入らず、原田の隣で手を軽く振った。
「おにいちゃん、お魚つかまった?」
「んーや、まだだな。兄ちゃん頑張って捕まえるわ」
「うん!」
今日は日差しが強いせいか、濡れても大して寒くはない。むしろ、ちょうどよくなったぐらいだ。
「お嬢、篠宮さんと野菜の準備をしましょう。昂明は川に何度落ちたって死にませんよ」
「おい兵助、声が震えてんだよ。笑ってんじゃねぇよ」
くそっ、兵助のやつ……本当なら一番心配をしなきゃいけない立場だろうが。
陽夏たちはバーベキューセットを準備し、食材の準備に取りかかり始めた。俺たち3人は騒いでしまった場所から少し離れ、再び釣りを始める。
「そーいやこの前の小テストどうだった?」
「やめようよ、ここまで来て学校の話は……」
「あーわりぃ」
一昨日、数学の小テストがあり、俺らの中で原田だけが追試だったのだ。数学は苦手だと言っていて、篠宮の鬼指導が入ったそうな。やっぱ2人って仲良いよな。
「原田さ、篠宮と付き合わねぇの?」
何となく聞いてみた。すると、原田はアニメかなんかのように顔を真っ赤にさせて、聞いたことがない大声で動揺し始めた。
「は、はぁ!?何言ってるんだよ鳳くん!!そんな、そんなこと出来ないよ!」
「おい、原田……その反応はあからさますぎるぜ」
言葉がきつい時もあるが、篠宮は親切でいい奴だ。好きになる気持ちもわかるぞ。俺も友達として、篠宮は好きだ。
「武人、あんまからかうなよ」
「それは今後に期待だな」
「ぅう……。でも、そもそも無理なんだよ」
未だ赤い顔をしたまま、原田は足元に視線を落とした。
「篠宮にはずっと好きな人がいるんだよ」
「へぇ、さすが幼なじみ。相手の恋愛事情も把握済みですか」
「相談されたんだよ!好きな人、僕の従兄弟だから」
「おぉ……」
さすがの武人も同情したようだ。片想い中の人の好きな人は身内で、さらにその相談までされる。そりゃあ諦めたくなるわ。俺は右に、武人は左に、それぞれ原田の肩に手を置いて、慰めの言葉をかけた。
「慰め会は盛大にやろうぜ」
「なんなら家に来いよ。陽夏の作ったクッキー美味いぞ」
「いいからそっとしといて……」
ここまで読んでくださりありがとうございます。




