追放
「弓弦、貴様を我が雨空家から追放する、二度とこの地に足を踏み入れる事を許さぬ。」
今日、俺は雨空家から追放された。理由はこの雨空家の持つ秘術にある、雨空家の血を引く物は神々が宿る武器、神器を召喚する術を扱う。
その術は心を器とし神を下ろし武器となす術、《神器召喚》それが雨空家特有の秘術である。その神器は一振りで海を切り、二振りで大地を砕き、三振りで空を割ると言われている。
その術を雨空家は千年も前から秘蔵とし、何台も前から受け継がれて来た。しかし、この俺は唯一雨空家の本家でありながら神器を未だに習得できないでいた。
雨空家の血を引く子供達は大体十歳ぐらいで神器を召喚できて、俺はもう十二歳になるが未だに出来ない、そんな俺を父、雨空相水は俺に追放を言い渡した。
「かしこまりました、今まで私目を育てて頂き誠に感謝しております、ありがとうございました。」
俺は肩を震わせながら自室に荷物を取りに戻る、部屋には俺の腹違いの弟、雨空風磨がいた。
「お前、追放されたみたいだな。」
「あぁ…」
そう言うと弟はニヤニヤと笑い俺の腹に豪快に膝蹴りを入れた、俺は膝から崩れ落ち腹を抑えながら弟を睨む。
「何だその目は?、昔からお前の事が気に入らなかったんだ!。神器すら召喚でき無い無能が兄だと?雨空家の恥さらしが、だがこれからは俺がお前に代わり雨空家の跡取りとなる、貴様の許嫁も俺の物となるんだ!!!」
「クッソ…!」
「なんだ?文句でもあるのか?なら神器を召喚してみろよ!このクズが!」そう言って風磨は俺の腹を蹴る。
「うっ!」
「クズはさっさとこの島から出て行け、貴様の居場所はもうこの島には無い」
そう言い放ち風磨は消えていった。辛さと悔しさで弓弦は涙浮かべ肩を震わせながら荷物を早々に片付けて島を出る為港に向かう為に家を出た。家を出てすぐの所に元許嫁の女の子桜が俺を待っていた。
「桜。来てくれたのか…」
俺がそう言うと彼女は無表情で俺にこう言った。
「ええ、両親が一様最後の挨拶ぐらい行ってこいって言われてね。正直、来る気も無かったけど。」
「え…。」彼女の言葉に俺は唖然とした。彼女は俺の幼馴染で神器を使えない俺に数少なく優しくしてくれた人であり許嫁であったからだ。
「正直、誰が許嫁でも誰でも良かったのよね。私の役目は誰が許嫁でも変わらないし、弓弦と仲良くしてたのは領主のは領主の顔もあるから別に深い意味は無いわよ、さようなら」
そう言って桜は俺の前から消えていった。俺は涙が出るのをグッと堪えて港まで走った。辛いこの土地を離れる為に、自分の心が折れる前に早くこの島から出て行きたかった。涙で視界が滲む中、俺は島から出てる船乗り場に到着した。
俺は涙を拭き船に乗り込もうとした時に後ろから呼び止められた。
「若様、お待ちください。」
後ろには俺に武器の使い方と武術を教えてくれていた父の側近である騎士、近衛伊蔵とその姉、蒼華が見送りに来てくれていた。
「以蔵に蒼華2人ともどうして…」
「私のが可愛いい弟分が外に旅立つんだ、見送りにぐらいくるさ。」
「若様、私が貴方を神器召喚まで導けず申し訳ございません…」
2人とも目に涙を浮かべながらそう言った。俺は少なくとも2人には愛されていたのだと、嬉しく思えた。涙ばかり流しても仕方がない、前を向き最強となってこの他に戻って来ると2人に誓った。
「若様、この島で我ら姉弟は何時迄も待っております。
必ず、必ず強くなってバカにした奴らを見返してやってくださいませ。」
そう言ってくれた以蔵と蒼華に強く頷き、俺は島を出たのだった。必ず強くなってまた戻ると、馬鹿にされた奴らへの屈辱と愛してくれた彼らへの恩のために俺は又再び戻ると違ったのだった。