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声優の猫野さんは俺にだけ塩対応  作者: 渡晴
リア充計画編
4/6

第3話 初見です

 翌日。

 早速だが、俺と猫野はメールアドレスを交換した。

 朝起きて、スマホを見たら、一件のメッセージが着ていた。


 __第2理科室で作戦会議的なのをやるから、8時に来てね__


 この部活朝練あるのかよ......。

 早朝からテンションが下がるな。

 けど、猫野は本気で俺をリア充にさせようとしている。

 その期待に応える責任が俺にはある。

 

 ベットから起き上がった俺は、速攻で顔を洗い、冷蔵庫にある食料を詰め込んだ。

 食べている間に制服姿に着替える。

 何故こんなに急いでいるかというと、今7時40分だからだ。

 どんなに急いでも、学校まで30分はかかる。

 8時には到底間に合いそうにない。

 だが、諦めて行かないという選択肢をしたら、猫野に顔向けができない。

 だから、俺は玄関のドアを思いっきり開け、飛び出して、風をきるような速さで駅へと向かった。(*運動音痴)


  ***


 ガラガラと第2理科室のドアを開けた。

 中には当然猫野がいた。

 

 「遅かったわね。でも今日連絡したのだから仕方ないわね」


 俺は結局10分程度遅れた。

 猫野は読んでいる本を閉じ、俺の方へと向いた。

 

 「とりあえず、今日からの目標は......」


 「......それは如何に」


 俺と視線を合わして、猫野は言う。


 「一ヶ月以内に女友達でも、男友達でも、私に友達と言える生徒を5人以上つくるということよ」


 「5人以上!? 」


 俺は思わず訊き返してしまった。

 だって、俺高校生活で喋ったことある人、両手で数えられる程度しかいないぞ。

 しかし、猫野が言っていることに一つ引っかかる点がある。


 「でも、猫野言い方だと誰でもいいらしいけど、昨日言っていたことと少し違くないか?」


 「どういうことかしら?」


 「クラスで一番カーストが高いグループに入れって言ってなかった? これじゃ、ランクが低いグループと仲良くなっていいことってならないか?」


 「あら、よく覚えているわね。でも、あなたの現状ではグループを選べる状況にすらなっていないわ」


 「......確かにそうだな」


 猫野のド正論だ。

 今の俺はボッチの象徴だ。

 そんな奴がいきなりリア充たちと話しているのは、明らかにおかしいと周りから思われるだろう。


 「とりあえずこの目標は、一ヶ月とするわよ」


 「一ヶ月か。......そんな簡単にうまくいくか?」


 「今私と普通に会話できている時点で、うまくいくと思うけど」


 「それは猫野が裏の姿だからだよ」


 学校生活では、誰にも対等に話せる、敵を作らないような振る舞いをしている。

 

 「じゃあ、表の姿で会話してあげるわ」


 「おお、頼む」


 俺がそう言ったら、猫野にスイッチが入ったかのように、表情が明るくなった。

 その姿を見てしまい、俺は背筋が凍った。

 こんなにも表と裏が違う人がいるとは。

 彼女は声優だから、オンとオフの切り替えが早いのだろうか。


 「柊君大丈夫?」


 猫野は上目遣いで、そう言った。

 やべえ、そんなことをやられちまったら、惚れてしまうじゃないか!


 「ちょっと興奮した顔、気持ち悪かったわよ」


 ふむ、前言撤回だな。

 こんな奴に惚れようとしていた俺が馬鹿だった。

 声優の猫野一夏はどこに行ってしまったのだろうか。

 

 「そいえば、猫野っていつ声優の仕事をしてるんだ? この学校って割と進学校だから、勉強が忙しくて、仕事は中々できないよな」


 「休日が殆どだわ。それと、放課後にスタジオに言って、アフレコをするわよ」


 「そんな貴重な放課後を奪ってしまって、申し訳ないな」


 猫野一夏にとって、俺なんかにかまっている時間より、声優の仕事の方が断然に大切だと思う。


 「それはお互い様でしょ」


 「ん? どういうこと?」


 「はあ、あなた作家でしょうが。部活なんかをしていたら、執筆が捗んないじゃない」


 「ああ、そういうことか。でも俺は執筆時間は毎日決めているから大丈夫だな」


 「何時から何時までしているの?」


 「大体、10時から12時くらいまでしていると思う」


 多少のズレは生じる。

 例えば、睡魔に勝てなくて、寝てしまったり、ゲームの誘惑に負けたり、時には、描きたくないと思うときもある。

 でも、なんだかんだで、この生活は3年間続けている。

 

 「執筆のスピードかなり早いのね」


 「んー、まあまあなのかな?」


 3年間で300万文字程度までいっているから、中々早いほうなのだろうか。

 個人的には学生にしては、かなりすごいと思う。 

 でも、俺が今連載しているのは、完結に向けて動き出した。

 

 「いつか俺の作品を、猫野一夏がアフレコしてくれないかな」


 「そこに関しては、やりたい気持ちはあるわ。まあ、書籍化することを楽しみにしているわよ」


 「そいえば猫野って、神造人間を最新話まで読んでいるのか?」


 神造人間というのは、俺が初めて連載した作品でもあり、ネット小説史上一番人気のサイトで、2年連続ランキング一位を達成した作品だ。

 

 「読んでいるわよ。ネット小説だと一番好きだもの」


 ありがたいことだな。

 それにしても、高嶺の猫野がオタクだということが、あまり実感がわかない。

 なにせ彼女は、リア充だからなっ!

 ......関係ないのか?


 「俺の小説を読んでくれてありがとうな」


 「別にあなたに感謝を言うつもりはないけれど、作品には感謝するわ」


 「おいおい、どんだけ俺のことが嫌いなんだよ」


 「......」


 沈黙が続いた。


 「おい、そこはツッコミ入れてくれ」


 「私はフラグを立てるような馬鹿ではないので」


 ふむ、そうだな。

 これがフラグになりかねないな。

 アニメとかだと、鈍感主人公がツンデレヒロインに対して、好意に気づかない、とか、よくある話だな。

 だが、何度でも言おう。

 ここは3次元だ。

 そのようなおこがましい考えはしないようにした方がいい。


 「話が逸れてしまったわね。一応今日の課題を言うわ」


 ゴクリ。


 「女子と男子両方に話しかけることよ」


 「えっ......?」


 「だから、そのままの意味だわ」


 「いや、無理無理」


 俺は首をブンブンと横に振る。

 そしたら、猫野は顔を取り繕って、華やかな顔になってから、


 「できるわよ。零・先・生!」


 ズキューン。

 効果は抜群のようだ。

 これが猫野表の姿なのだ!

 ......俺は何で一人で興奮しているんだ? 

 猫野の裏の姿を知ってしまったばかりだろうか。

 俺はあたりを見回してみると、彼女(ねこの)の姿はなかった。


 「撤収はやっ!」

 

 この教室に俺一人が取り残された。

 



 

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