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06 クリストファー様が目覚めましたのよ

「ケガレノ、ケンキュウヲ、シタイ」

「ケガレ? クリストファー王太子殿下がご自身で穢れの研究を始めると言うことですか?」


 ブラッド様の居場所の確保が必要なので、わたくしが宰相のフレディ様に向けて面会の依頼を出した。するとすぐに彼は応接室へとやってきた。


 とりあえずブラッド様が王宮内にいても問題のない状況に持ち込もうと画策している。

 実際なによりまずいのが、ブラッド様の現在の身分は脱走犯。このまま放置することはとてもできない。


 使えるから、わたくしは放置するつもりはありませんけど。


 それを言ったら「使えなかったら放置するつもりだったのか」と怒られた。

 なぜ私が責められなければいけないのかしら。放置したとしても、ブラッド様は元居た牢獄に戻るだけではありませんの。



「わざわざ私にそれを告げたということは、何かご用意するものがあるということでしょうか」

「アア」


 クリストファー様は、一言宰相に向かってそうつぶやいてから、口とまぶたを静かに閉じた。


「クリストファー様はルイシオーネ王国の未来について考えているのですわ。穢れとはいったいなんなのか、それさえわかれば発生を抑えることができるのではないかとおっしゃっておりますの。とりあえず穢れの浄化は聖女に任せておいて、クリストファー様は穢れそのものをなくすつもりですのよ。それで、穢れの第一人者であるブラッド様に協力を仰いで、これから調査を進めたいそうですわ」

「ソウイウコトダ」


「クリストファー様は穢れに怯えくらす民のことを嘆いておりますのよ」

「ウム」


「――なるほど、なるほど」


 わたくしが説明を始めると宰相は身体を私の方へ向けて座りなおした。


 普段の行動を考えると、宰相もクリストファー様が自分でそんなことを考え付くとは思っていないようだ。わたくしと話をした方が早いと思ったらしい。


 そのおかげで、クリストファー様が「アア」とか「ウン」しか言わなくても怪しまれないから丁度よかった。

 片言で話しても、どうせ、わたくしに言わされていると思っているだろうし。


「ですが、今回のように前触れもなく勝手に牢から連れ出すということは感心できません。オリビア様とて、許されないことです」

「そのことについては、本当に申し訳ありませんわ。ブラッド様のお話を早く聞きたかったものですから、つい」


「今後気をつけていただければ、今回のことは不問にいたしますが、本当にお願いします」

「ええ、そのようにいたしますわ」


「それで?」

「まずは、ブラッド様にお部屋を用意していただけないかしら。身なりを整えていただかないといけませんもの」


 宰相が部屋の隅で座っているブラッド様にちらっと目をやった。


「そのようですな。すぐにご用意いたしましょう。他には何かございますか」


「クリストファー様のことなのだけど、勉強しすぎてちょっと頭が疲れてしまったみたいですの。口を利くのも億劫なようですから、穢れの研究中は少し呆けていても、気にしないでくださる? せっかく民のための研究に目覚めたのですから、途中で放り出すようなことがあっては、クリストファー様自身も残念に思いますでしょうし」


「ケンキュウトハ、トテモ、ツカレル、モノダ」


「はあ。まあクリストファー王太子殿下のやる気を削ぐようなことは致しませんから、ご安心ください。王宮の者にも重々伝えておきます」


「それと、今日から一週間、ブラッド様からご指導と講義を聞くために、クリストファー様も公爵家に来ていただいてもいいかしら。もちろんその間は王妃教育もお休みしたいのですけれど」


「公爵家に伺うことは問題ありませんし、本日から一週間ならクリストファー王太子殿下も何も予定がございませんから構いませんよ。オリビア様の王妃教育のこともそのように取り計らいます」


 即答されるということは、クリストファー様には本当に重要な予定が入っていないということだ。

 わたくしが王妃となることが前提だとしても、これほど自由奔放でいいのだろうか。


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